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【感想】TBS金曜ドラマ『石子と羽男』第4話
石子と羽男(8/5):第4話。前回打った「羽男の姉は検事」という布石を活かす刑事裁判。そこに被告人の姉妹の物語が重なり、目が見えない姉の努力がドライブレコーダーの証拠映像を掴み取る多層構造。演出は第2話以来の塚原あゆ子監督。2箇所で出てきた階段の撮り方が美しい。 https://t.co/CETCl8ZDnK
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) August 5, 2022
今回の事案は救護義務違反。
第1話の『コーヒーが冷めないうちに』に続き今度は『ビリギャル』を彷彿とさせるアバンタイトル。
どちらもTBS製作の映画というのは変に深読みしすぎかw
本作では初の刑事裁判。
第3話で本筋のストーリーとはほとんど無関係の羽男の家族エピソードを入れてまで事前に説明していた「姉の優乃(MEGUMI)は検事」という設定を早速活用。
そこに被告人の姉妹エピソードが重なってくる。
妹の一奈(生見愛瑠)を懸命に助けようとする姉の絵実(趣里)に対して法廷で容赦なく羽男をボコる姉の優乃。
絵実の「交通事故で視力を失った」という設定も正直最初は過剰ではないかと思ったのだが、必死の行動の末にドライブレコーダーの映像が妹の減刑に繋がる(しかし肝心の絵実にはそれは見えない)というストーリーとリンクしていて唸らされた。
あの証拠映像がギリギリで法廷に届くという展開どこかで見たような…と思ったら『HERO』の劇場版1作目。
そういえばタモリが演じてた衆議院議員の名前って「ハネオカ」じゃなかったか!?と思ったけど調べたら花岡だった。惜しいw
しかし今から15年ほど前に再放送で『刑事コロンボ』の『ビデオテープの証言』を見たときは「きっと当時は監視カメラの映像が事件解決の決め手になるってアイデアは斬新だったんだろうなぁ」と思ったのだが、令和になっても鉄板ネタですねw
あと羽男が石子を「相棒」と呼ぶシーンは「リーガルハイ』シーズン2第9話で古美門(堺雅人)が黛(新垣結衣)を「私のパートナー弁護士」と呼んだシーンの系譜に連なる名場面。
(『リーガルハイ』の方は古美門が珍しく感情を露わにして「司法と民意」というテーマに挑むシリーズ屈指の神回なのでさすがに比べると不利ですが)
8/3(水)からAmazonプライム見放題に来ると思ってたら韓国版の方だったorz
ちなみに、憎き敵だと思われた優乃に対する印象は最後の最後で鮮やかにひっくり返る結末が用意されている。
(そしてもちろん第5話以降もレギュラー出演するようだ)
もはや毎度のことながら脚本の構成が見事。
さて、演出面の話も。
第4話は再び塚原あゆ子監督にバトンタッチ。
個人的に最も「おぉ!」となったのは感想ツイートにも書いた階段の撮り方。
2箇所というのは中盤にあった螺旋階段を上から撮ったショットと後半のマンションの外階段を朝日と共に捉えたショット。
映像作品で階段が出てきたら上ってるか下ってるかが重要。
上り調子と下り調子の映像的表現。
例えば『半沢直樹』で大和田(香川照之)が階段を上ってきて半沢(堺雅人)が階段を下ってすれ違うシーンとか。
大和田は余裕で半沢はピンチ。
大根仁監督の『SCOOP!』でも印象的な階段シーンありましたね。
落ちぶれた芸能専門パパラッチの都城静(福山雅治)と文芸誌編集長の多賀(塚本晋也)が会社ビル内ですれ違うシーン。
出世コースにいる多賀は階段を上っていて時代に取り残されつつある静は下の階へ向かっている。
今回は優乃は上って羽男は下り方向を向いて座っている。
優乃は東京地検の若手エース筆頭で今回の裁判も楽勝ムードの上り調子なのに対して羽男は自信喪失して人生踏んだり蹴ったり下り坂なのを映像的に対比表現。
(まぁ階段に座ると自然と下り方向になるので少々フェアではない見立てというのはゲロっておきますw)
螺旋階段を上から撮るショットも何か飲み込まれそうな不気味さ。
そこにちょうど
長いものには巻かれとこう。
の台詞。
石川慶監督の『蜜蜂と遠雷』も螺旋階段を下から撮る見せ方をしていた。
あれも何とも言えない不気味さで印象に残っている。
🐝⋆︎*゚∗#蜜蜂と遠雷
— 映画『蜜蜂と遠雷』公式 (@eiga_mitsubachi) October 5, 2019
Production Notes🎵
撮影は螺旋階段を意外な方法で見上げたり、ステージを360度回転で捉えたり…
監督が語るその狙いは「音楽ものなので、その場の演奏者の感情に寄り添い、臨機応変により有機的なうねりを生み出したかった」
亜夜の心情にリンクする映像にもご注目! pic.twitter.com/tyAeoF6Ejk
(ややこしいが、上記ツイートは「螺旋階段を下から撮るためにセットされたカメラを上から撮った写真」なので実際の映画とはアングルが真逆)
そしてその『蜜蜂と遠雷』で美術監督を務めたのが本作にも美術デザインとしてクレジットされている我妻弘之。
#石子と羽男 の美術デザインの我妻弘之さんって石川慶監督の『蜜蜂と遠雷』『Arc アーク』『ある男』や内田英治監督の『ミッドナイトスワン』『異動辞令は音楽隊!』を担当されてる方なのか。スタイリストの金順華さんも『最愛』はじめ近年のTBSドラマの常連。画面のルックがとても強いの納得。
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) July 31, 2022
すみません、さすがに論理展開が支離滅裂でした。
でも本作は美術を外しては語れない。
遂に公式サイトでも事務所セットの解説記事が出た。
初回から空間演出に言及してきたが、それもこのセットがあってのこと。
石子と羽男(7/15):第1話。新井順子P×塚原あゆ子監督のTBS新ドラマ。カフェで充電してたら訴えられた!という予告が二重三重のミスリードだったのはお見事。冒頭の宣言通り事務所の室内を使った舞台演劇的な空間演出も冴え渡る。構図はローアングルが多かったような? https://t.co/42P2Wmf2gM
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) July 15, 2022
石子と羽男(7/22):第2話。身近な相談と社会的イシューを結び付けて描くという本作の型が見えてきた。それはさておき次々切り替わるアングル、事務所の2階やキッチンを使った空間演出、塾構内での横移動カメラワーク…塚原あゆ子監督ってあんな変態的な演出する人だっけ?w https://t.co/W2dmucp6Rj
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) July 22, 2022
前述の記事中にはこうも書かれている。
それが美術デザイナーや照明スタッフ、カメラマンなど、普段は映画を担当しているスタッフが集結した理由の一つでもある。
例えば第4話でも朝日のカットを筆頭に素晴らしいショットを連発していた撮影の加藤航平は『孤狼の血 LEVEL2』を担当したカメラマン。
(日本アカデミー賞撮影賞ノミネート)
さらに美術ではなく衣装もスタイリスト(有村・中村)としてクレジットされている金順華によるカラフルな彩りが冴え渡る。
2人とも色んな服を着ているし、どれも画面に映える。
ちなみに金順華は『最愛』『ボス恋』など近年のTBS人気ドラマの常連。
ついつい新井順子プロデューサー&塚原あゆ子監督という括りで本作の演出は語られがち(私自身もそう語りがち)なのですが、脇を固めるスタッフもかなり興味深いぞという話でございました。