【感想】HBOドラマ『THE LAST OF US』シーズン1第1話
2013年にPS3で発売された『The Last of Us』
先日『鳥類弁護士の事件簿』の感想でも書いたが、自分は2005年にゲームを休止してしまっており本作もプレイしていない。
ただ、どこで知ったのか今となっては記憶が曖昧なのだが「とんでもなく高評価されてるゲーム」があるというのはぼんやり噂で聞いていた。
(ただし2013〜2014年当時リアルタイムで知ってたのかは自信なし)
今回改めて調べたら200以上の受賞歴!
すげぇな。
そんな名作ゲームがHBOで実写ドラマ化。
HBOも気合十分でスタッフの顔ぶれもエグいのなんの。
まずはテレビシリーズで最も重要なパーツである脚本。
『チェルノブイリ』は第71回エミー賞のリミテッドシリーズ部門で作品賞・監督賞・脚本賞を含む10冠を達成したこれまた名作ドラマ。
『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』『MIU404』などの作品で知られる脚本家の野木亜紀子は2021年元日にNHKで放送された『あたらしいテレビ』内で2020年に心を動かされた映像コンテンツの1位に本作を挙げている。
(検索すると個人のツイートなどはヒットするのだけど公式アーカイブ無し)
国内ドラマファンのみなさんも観ましょう。
続けて演出(監督)
アリ・アッバシは『ボーダー 二つの世界』でカンヌ国際映画祭2018ある視点部門グランプリを獲得しているし、ヤスミラ・ジュバニッチは『サラエボの花』でベルリン国際映画祭2006金熊賞。
いわゆるエンタメ大作のような派手なタイプではないものの「実力派」と呼びたくなる強力な顔ぶれ。
ちなみにカンテミール・バラーゴフは記事に名前は載っているけど実際には2021年頃にプロジェクトから離脱している。
逆にここに載ってないピーター・ホアーは『IT'S A SIN』全話を演出した人。
もう一人掲載されなかったリサ・ジョンソンも確かにバシッと訴求しやすい代表作は無いものの(それでも『バリー』や『シリコン・バレー』を演出してる)ベルリンやカンヌにノミネート歴あり。
さて、そんなわけで完全に「役者は揃った」な座組みで期待していた本作。
初回は全くそれを裏切らなかった。
自分はゲームは未プレイだが、調べた感じだと第1話のストーリーはゲームの序盤にほぼ忠実っぽい。
オリジナルが「まるで映画のよう」と評されたわけだから下手に改変する必要も無かったということか。
もちろんゲームというアートフォームの醍醐味は「キャラクターを自ら操作して物語を進める」能動性なわけで、その魅力はドラマという勝手にストーリーが進行する受動的時間芸術では消失している。
しかし、それを補って余りある映像作品への見事な適応っぷり。
冒頭はテレビの討論番組。
僕が勘違いしていなければこのシーンは原作には無いドラマ版オリジナル要素。
数少ない原作からのアレンジなわけだが、これが実に見事。
あそこで学者2人が話す内容はコロナ禍というパンデミックを経験した現代の視聴者にはリアルすぎるほどの現実感。
一気に物語に引き込まれる。
ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』へのオマージュでもあるのかな?
そういえばNetflixで配信が始まったばかりの是枝裕和監督の最新作『舞妓さんちのまかないさん』でもゾンビの話が出てきましたねw
すみません、脱線が過ぎました。
オープニング以降は原作にほぼ忠実に、ゾンビ作品ではお馴染みの「徐々に事態の全貌が明らかになっていく」パニック描写へ。
車中視点でほぼワンカット(途中カットが割られたのは1回)で魅せる!
低空飛行する航空機とか角を曲がったら大量のゾンビがいる描写とか佐藤信介監督の『アイアムアヒーロー』を思い出した。
いや、むしろあの映像の方がこっちの原作ゲームに影響を受けてたのか?
でも三谷が墜落する飛行機に巻き込まれて死ぬ第2巻は2009年出版だしな。
ツカミはOK。
その後は第1話ということもあって今後に向けての丁寧な前フリ積み重ねといった感じ。
まぁいくら超大作ドラマでも全体構成を考えればこればかりは仕方ない。
第1話で力を出し尽くされても困ってしまうので。
それでも美術を筆頭にゲームの世界観を完全再現した映像は圧巻。
終末世界を舞台に文化の存在意義を描いた『ステーション・イレブン』から一転また振り子のように正反対のサバイバル活劇。
「ゲーム原作の実写作品」というポップカルチャー融合の最先端という作品外の文脈も、純粋に「面白そうなドラマが始まった」という作品の中身の観点でも来週以降も楽しみ。