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【感想】劇場映画『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
アレクサンダー・ペインとポール・ジアマッティが『サイドウェイ』以来の再タッグ。
日本人キャストによるリメイク版はこちら。
『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は2023年に世界中で絶賛の嵐。
ダヴァイン・ジョイ・ランドルフは本作の演技で賞レースの助演女優賞を総なめ。
例によって事前情報はほとんど入れずに見始めたら…いきなりユニバーサル映画のロゴが古いデザイン!
『シン・ゴジラ』も東宝のロゴが古いデザインになっていたのを思い出す。
「てかオッペンハイマーに続き本作も東宝東和じゃなくてビターズエンドが日本配給を担ってるのか」なんて思ってたら…
その直後さらに度肝を抜かれた。
なんとFocus Featuresとミラマックスのロゴも古い感じに。
しかし実は…
However, neither company existed at the time. Distributor Focus Features was founded in 2002, while the film production company Miramax got started in 1979.
両社とも1970年当時はまだ存在してないw
つまり70年代風ロゴは完全新規作成(!)
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![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144961165/picture_pc_884f548b325f1ec788ce383a329c4416.png?width=1200)
めちゃくちゃそれっぽいw
まぁいずれ(いや、もう既に今も?)生成AIでこの辺は誰でも作れるようになっちゃうのかな。
それはそれでちょっと寂しい。
さらに何やらフィルムのノイズらしきものが画面に。
フィルム撮影なのか!?と思いきやデジタル撮影にポスプロ工程でフィルム風の効果を足したらしい。
撮影ではARRI Alexa Miniでデジタル撮影されたものに、ポスト・プロダクションでハレーションや汚れ、フィルムグレイン(粒子によるノイズ)などのセルロイド・フィルムの特徴が追加されている。
FXドラマ『アトランタ』のファイナルシーズンでも似たような手法あったな。
(日本ではDisney+とNetflixで配信中)
あっちはエフェクト足してるだけじゃなくてフィルムに出力してたのか。
ちなみにこの“フィルム風味”はエンドロールが流れた後の最後の最後まで徹底されている。
真っ暗になった画面にノイズが乗ったまま、でも場内はまだしばらく明るくならない。
あれって映写機を回した最後のあの感じを再現してるってことよな?
徹底した70's再現。
庵野秀明の特撮愛に通じるフェティシズムw
さて、そんなわけでてっきりフィルム撮影だと思い込んで見始めたのだが、編集(カット割り)のテンポがかなり速い。
物語は静かなトーンの小さな規模のお話なので長回しでゆったり・じっくり見せていくのかなと勝手に想像していたのだが、会話の途中でもどんどんカットバックしていく。
音楽も合わさってとにかくリズミカル。
この編集のリズムがとにかく気持ちいい。
ちょうど金子修介監督の書籍のこのくだりを読んでいたこともあり、70年代のルックながら編集テンポは今っぽいのかも?という不思議な気分に。
徹底してフィルムを無駄にしない、というのが日本映画の根本思想にある。助監督がカチンコをいかに早くカメラアングルから抜けるかを競うといった、映画を良くするためにはまったく無駄な習慣があるのだ。
ちなみに同じページに掲載されている岡本喜八監督のエピソードは凄まじいw
岡本喜八監督は、撮影前に「この映画のカット数はxxxxカット」と、1の位まで正確に予告するといわれている。
僕は編集テンポの速い映画が好みなので序盤からホクホクでした。
ついでに「これだけ贅沢にカットを割っているということはフィルム撮影じゃないのかもしれないな」と思い直したり。
(で、鑑賞後にネットを検索して真相を確認)
編集テンポは速いけどトランジション(カットとカットの繋ぎ方)はいかにもクラシカルで70年代映画っぽいのが面白い。
今映っている映像が透けるようにして次のカットが後ろから徐々に鮮明になっていくあれ。
最近あまり見なくなったよなぁ。
やっぱり何も考えずにやると古臭くてダサくなっちゃうからだろうか?
サム・ライミが『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』でやってましたね。
(まぁサム・ライミは今現役バリバリの作家ではないけれど)
この時は「好みではない」って言っちゃってるなw
今回は「70年代テイストでやりますよ」と明言されているも同然だから気にならないどころかむしろ良かったw
ストーリー(脚本)も見事。
主要登場人物の3人は「家族の喪失」を背負っている。
そしてハナム(ポール・ジアマッティ)が歴史の教師という設定が「過去」というモチーフをそこに加える。
「亡くなってしまった家族」はいずれ「過去」になるかもしれないけど、その「過去」は今の自分の中に蓄積されている。
故人は自分の中で間違いなく生きているのだ。
ちょうど先日祖父の一周忌を迎えたこともありそんなことを考えてしまった。
(小学生だった僕を平成ガメラの映画に連れて行ってくれた祖父)
また、これは必ずしも故人に限らない。
もしかしたらハナムとアンガス・タリー(ドミニク・セッサ)はこの先もう二度と会うことはないかもしれないけれど、でもアンガスの人生にハナム先生は生き続けるだろう。
元トモにも通じる話なのかなと。
ハナムとアンガスの関係も教師と生徒を超えた友情だったと思うんだよな。
だからラストの"See Ya"がめちゃくちゃ効いてくるわけです。
良い曲だ。泣いちゃうよ。
脚本も演出も本当に素晴らしかった。
まぁ強いて言うなら、願わくばクリスマスに観たかったなw