【感想】劇場映画『ボーンズ アンド オール』『別れる決心』
2022年のベネチア国際映画祭とカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した作品2本が同日公開となった日本の2023年2月17日。
さらに『アントマン&ワスプ:クアントマニア 』でMCUフェーズ5も開幕(自分はフェーズ4で落胆した側なのでDisney+に来てから観ようかなと劇場鑑賞は見送り予定)
まさに伝説“級”の日である。
というわけで早速翌18日に2本鑑賞。
余談だが『君の名前で僕を呼んで』や『僕らのままで/WE ARE WHO WE ARE』を観て「すごく良かった」と言っていた妻を『ボーンズ アンド オール』に誘ったまではよかったのだが、その際に『別れる決心』が同日公開というのが頭からすっぽり抜け落ちていて、あとから「別れる決心にも誘うかどうするか…でも夫婦で観に行くの気まずいタイトルだよな…」となる事故に見舞われてしまった。
閑話休題。
さすが既に世界中で絶賛されている作品だけあって文句なしの傑作でした。
ストーリーやテーマの考察も読み解きがいのある両作だとは思うが、個人的には映画の醍醐味である「編集の快楽」が詰まっていてそこが本当に最高。
映画(正確には映像作品全般)の編集技法
本来的には繋がりの無い映像を繋ぎ合わせて物語を紡ぐ。
カットを割ることでリズムを生み出して物語をドライブさせていく。
これは現実世界を生きる人間の目線では絶対に体験できない(我々が見る景色は生まれてから死ぬまで基本ワンカットである。いや、寝るときカット割れてるかw)
僕は映画を観る際に編集のテンポやリズムが自分の好みと合致すると非常に嬉しくなる。
ちなみにカットを細かくスピーディーに割ってくれる方が好み。
千鳥・大悟が言うところの「みんなが思ってる倍」割ってほしいくらいw
もちろんワンカット長回し否定派ではありません。
過去に長回し撮影によるショットを絶賛したことも当然あります。
あくまで「どちらがより好きか?」という話。
念のため。
で、その観点でいくと『ボーンズ アンド オール』はカット割りが細かくてもう最高w
1つのシーンもコロコロとアングルが切り替わる。
例えば会話シーンでも2人を同時に映すことはなく話者の顔を映すカットを次々切り返す。
とにかくカットが細かい。
固定カメラ長回しで行くのかと思ったらジャンプカット、みたいなシーンまで。
ヌーヴェルヴァーグ作品の影響を公言しているとはいえ大胆。
果たしてそこまでしてテンポを上げる需要が自分みたいな嗜好の人間に向けて以外あるのか若干疑問も無くはないw
僕は映画館でニッコニコでしたけどね。
カニバリズム設定で人が人を喰う映画であるにも関わらずw
R18指定ゆえに宣伝はほとんどされず上映館も少ないのは少し寂しい。
一方で満席続出っぽい(?)のが『別れる決心』
韓国ドラマ大人気の日本とはいえパク・チャヌク監督や出演者にそんな強い集客力を持ってる人いるんだっけ?と思ったらBTSのメンバーが絶賛したというのが火付け役らしい。
こちらも『ボーンズ アンド オール』とは違ったテイストながら編集のマジックが炸裂した傑作。
カット割りはさほど細かくないが、映像を繋ぐ方面での編集のマジック。
電話で会話してるはずの2人が次のカットでは同じ部屋で会話をしていたり、事件が起きた瞬間の現場に刑事がまるでタイムスリップしたかのように入り込んだり。
しかもカメラのアングル=誰の視点からの映像なのか?を次から次へと変える。
冒頭の遺体の視点に始まり、果ては魚屋で売られてる魚の目線までw
実は事件の真相はそんなに複雑じゃないと思うのだけど、この編集に面食らって複雑な印象を感じてしまう人もいるかも。
あと、撮影めちゃくちゃ良い。
アングルも構図も。
特に取り調べ室でのシーン。
画面奥の鏡にも2人が映っている構図で、手前と奥ではなく左右でピントを合わせていくシークエンスはマジで惚れ惚れ。
照れゼロなズーム撮影はホン・サンスみたいで思わず笑ってしまったw
個人的に好みなのは『ボーンズ アンド オール』だけど、撮影や脚本を含めた映画全体の完成度は『別れる決心』に軍配かなと。
大前提として両方とも大傑作ですので悪しからず。
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