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【感想】劇場映画『ショウタイムセブン』

周辺情報

オリジナルは2013年の韓国映画『テロ、ライブ』

現在はAmazonプライムビデオやU-NEXT、Netflixなどの配信サービスで鑑賞可能

本作『ショウタイムセブン』はその日本リメイク版
ちなみに2021年にはインド製のNetflixオリジナル映画としてリメイク済み
邦題は『ダマカ:テロ独占生中継』

日本版と異なり、こちらのインド版は韓国オリジナル版に忠実な作りになっていました。

さて、これまでも少なくない韓国映画が日本でリメイクされてきた。
自分がパッと思い浮かぶのはこの辺り↓

『22年目の告白 私が殺人犯です』

『見えない目撃者』

『最後まで行く』

『22年目の告白 私が殺人犯です』と『見えない目撃者』は原作に忠実ながらも要所でブラッシュアップが効いていて、『最後まで行く』は後半の大胆なアレンジが面白い。
いずれも良作でした。

良かった点

本作『ショウタイムセブン』も中盤までは韓国オリジナル版と基本同じ展開なのだけど、終盤が大胆に改変されている。
インド版を観たときは「ここまで同じ作りならリメイクする意味あったのか?」と思ったのだけど、日本版からは「単なる焼き直しにはしない」という志・気概を感じた。

韓国オリジナル版は権力者もクソで会社上層部もクソで…という救いようのない結末。
力技ともいえる爆破アクションで映画を畳んでいく。
映画としては見せ場ではあるものの、やや唐突で強引な感も否めない。
良くも悪くも韓国エンタメらしいというか。

一方で、中盤に出てくる主人公の収賄疑惑は「追及する側だったはずの主人公が追及される側に回る」というサスペンスのギミックとしては機能するものの最終的には有耶無耶に。
日本版はここを広げる形でメディア論へと展開していく。
宣伝でも言われている「ラスト6分、衝撃の結末」で視聴者(観客)に矛が向く作劇。
あらゆるニュース・報道がリアリティーショー的に消費されるSNS時代を批評している。
あの世論調査のシーンとかまさに。
韓国オリジナル版とは違う力技。

映像的な迫力は減衰したものの、韓国オリジナル版の2013年から10年以上が経った今リメイクする意義を感じられたのは良かった。

悪かった点

ただ一方で手放しで絶賛できるわけでもない面もあり…

まず爆破テロの対象が橋から火力発電所に改変されたことで、橋の崩落リスクから生じるタイムリミットのサスペンス性は失われている。
韓国オリジナル版は「犯人が起爆スイッチを押さなくても既に損壊した橋が崩落・水没する可能性があり、だからこそ人質の救助を急がなくてはいけない」という制約がある。
しかも橋の上に取り残された取材リポーターは主人公の元妻。
日本版にはそういった要素は無い。
リポーターは元妻ではないし、火力発電所から十分遠く離れた場所でリポートしている。
個人的にこれは結構致命的だったかなぁ…
だから世論調査のシーンも「結構余裕あるじゃん」と思えてしまうんですよね…
全体を通して緊迫感は薄い。

あと、主人公のイヤホンに仕掛けられた爆弾の存在が最初から観客だけでなく劇中の登場人物にも開示されているのは勿体ないなと。
主人公と観客の間での秘密の共有が無いので葛藤のドラマが生まれづらい。

例えば昨年12月に配信されたNetflix映画『セキュリティ・チェック』
周囲は主人公が脅されていることを知らないので葛藤ドラマが生まれていた。

そういう状況下でも犯人を煽っていく折本(阿部寛)の狂気性の描写を優先したのかな。

あと、これは意図した演出なのだけど、劇中ニュース番組の映像は映画畑のスタッフではなく実際に報道番組を手がけているスタッフが撮っている。

リアリティを追求するための演出だと思うのだけど、映画館のスクリーンとの相性は悪かったように思う。
(そりゃテレビ番組を再現した映像をスクリーンで流してるので当然っちゃ当然)
むしろテレビ画面で観た方がハマるのかも。
そういう意味では配信向きの作品だったのかなぁ。

その影響もあってか岸辺露伴シリーズを手がけてきた渡辺一貴監督の映像・ルックがあまり発揮されていないのも残念だった。

最新作に期待だな。

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