【感想】フジ火曜ACTION!ドラマ『City Lives』
2022年10月期の改編でフジテレビ深夜に新たに設けられたドラマ枠『火曜ACTION!』
若手クリエイターのチャレンジ枠的な位置付けのようで、30分×2〜3話ぐらいの小規模な作品を世に放っている。
そんな火曜ACTION!枠で3週間に渡って放送された短編ドラマ『City Lives』
原作・脚本・監督としてクレジット、すなわち本作の根幹を担っているクリエイターは針谷大吾と小林洋介のコンビ。
正直まだ有名作家とまでは言えない知名度かと思うが、SF好き界隈に絞れば知ってる人は少なくないかもしれない。
2021年に発表されたわずか2分ほどの短編映画『viewers:1』
これがSNSを中心に話題となり、いくつかのコンテストで受賞を達成。
(GEMSTONE受賞後に追加撮影や再編集を施した最終版は4分半ほどの尺になっている)
当時のインタビューでは長編企画については「ご縁があれば」なスタンス。
そんなクリエイターを見事にフックアップしたフジテレビ。
これぞテレビ局のやるべき仕事を為しているという感じ。
素晴らしい。
第1話はSFモキュメンタリー。
密着取材を通して〈街〉の設定が説明されていく。
これからの勝負で使うカードを揃えていくフェーズ。
何やら今後に繋がる謎らしき要素も提示される。
ワクワクせずにはいられないw
一方で本題はほとんど始まらないので人によっては我慢の時間かも。
実際自分も正直なところ「提示された設定はワクワクするけど、作品全体としてはどこを面白がればいいんだろう?」といまいちピンと来てない部分もあった。
ちなみに街が生きているという設定それ自体は本作が史上初というわけではない。
近年のSF作品ではサイバーパンクな世界観の上で市民を管理するディストピアとして街が描かれることも多い気がする。
個人的には第1話を観ながら小説『横浜駅SF』を思い浮かべていた。
最近では昨年11月に出版されたAマッソ加納の短編集『これはちゃうか』の中の『ファシマーラの女』に「駅が生えてくる町」という設定が登場していた。
(といっても、そのSF的設定はストーリーの中心要素ではなかったけど)
閑話休題。
第2話はそこから一気にギアチェンジしてドラマが動き出す。
ただし第1話を引っ張っていたSFモキュメンタリー色は完全に後退。
第1話は密着カメラ視点で原則統一されていたが、第2話ではカメラを構えるスタッフをさらにその外側から映した構図が多くなり「ドキュメンタリーを撮影しているという設定のフィクション」とすぐ分かるように。
物語はとある淡い思い出をめぐる人間ドラマの様相を呈していく。
この辺りは好み・評価が分かれるかも。
「もっとSFで押し切ってほしかった」と感じた人もいたかもしれない。
そして第3話(最終話)
物語はほぼラブストーリーに。
では舞台が〈街〉である必然性も薄れたのか?というとそんなことはない。
第2話でその香りが漂い始めて第3話で明確になったが、本作は記憶をめぐる物語である。
通常、街は我々の記憶の中にある。
住んでいた街や学校や職場があって通っていた街を訪れたら当時の記憶が蘇るという経験は誰しもあるのではないだろうか?
それを本作では〈街〉が住民の記憶を読み取ってその中にある街の風景を再現するという逆転の設定になっている。
それにより2人は“あの頃”に引き戻され、ドラマが動いていく。
第1話では不気味な存在だったあのキャラクターが2人の記憶に由来していたとは!
個人的にはコロナ禍でステイホームを余儀なくされて家の感覚が強くなるのと相対的に街の感覚が人々の中から希薄になった時代への批評性のようなものも感じてしまった。
ちょうど先週末に映画『ピンク・クラウド』を鑑賞したこともあり。
演出面の話も。
SF出身のクリエイターが手がけただけあってVFX表現は素晴らしかった。
第2話ラストの街が干渉するシーンの怪獣映画のような迫力。
最終話クライマックス、2つの塔(?)による求愛行動シーンの倒錯的な美しさ…
特にここ!
スクショ保存してみたけど暗いか… w
このカメラが横移動しながら遠くにいる巨大な生物を撮っているという構図・アングル・カメラワークが実に特撮怪獣映画っぽくて最高でした。
惚れ惚れ。
ツイートにも書いたが、最終話は「離れ離れになっていた2人が再会する」というモチーフを映像表現に落とし込んだ、画面両端に人や物を配置しての左右対称シンメトリー構図も美しい。
ほぼ2人芝居だったキャストの演技も良かったなー
片山友希はちょうど朝ドラ出演が決定。
文字通りブレイク中といった感じ。