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世界最古の楽譜が語る音楽の永遠性

音楽は時を超える。それは私たちの魂に響き、世代を超えて受け継がれていく。しかし、その音楽をどのように後世に伝えるか。常に私の心に引っかかる問いです。デジタル時代の今、音楽の保存方法は多様化していますが、果たしてそれらは本当に永続的なのでしょうか。今回は、世界最古の楽譜から見えてくる音楽の永遠性について考えてみたいと思います。


楽譜:最強の音楽メディア

先日、「100年後に残る音のメディアはあるのか」というテーマでお話しした際、楽譜こそが最強の音声メディアではないかという結論に至りました。この話題に関して、リスナーの方から興味深いコメントをいただきました。

「100年後でも人間が解読可能な音楽メディアは楽譜。現存する最古の楽譜は紀元前2世紀頃のものだそうで、この事実は1000年後であっても、音楽メディアとしての楽譜の地位は普遍であろうと考えます。」

このコメントは、私にとって新たな探求の扉を開いてくれました。紀元前2世紀の楽譜。これは私にとって全く未知の領域でした。ネウマ譜のような中世の楽譜については知識がありましたが、それよりもはるかに古い楽譜の存在に、私は強い興味を覚えました。

セイキロスの墓碑:音楽の時を超える力

調査を進めると、この世界最古の楽譜は「セイキロスの墓碑」と呼ばれるものだということがわかりました。古代ギリシャの円柱状の墓石に刻まれたこの楽譜は、現在コペンハーゲンのデンマーク国立博物館に所蔵されています。一見すると普通のギリシャ文字の碑文に見えますが、よく観察すると文字の上に特殊な記号が付されています。これらの記号が音の高さと長さを示しており、まさに楽譜としての機能を果たしているのです。

蘇る2000年前の旋律

興味深いことに、この楽譜は解読され、実際に演奏可能な形で再現されています。YouTubeで聴くことができる再現音源を聴いてみると、その旋律は不思議と心に響きます。単旋律ながら、沖縄民謡を思わせるような独特の雰囲気を持っています。歌詞の内容も印象的です。「生あるうちは輝いてあれ、決して悲しむなかれ、人生は束の間にして、クロノスは終焉を求めるがゆえに」この2000年以上前の言葉が、現代を生きる私たちの心にも深く響くのは驚くべきことです。音楽の持つ普遍的な力を、まさに体現しているといえるでしょう。


デジタル時代における音楽の保存

この発見は、現代の音楽保存方法について深く考えさせられるきっかけとなりました。デジタルメディアは便利ですが、電気がなければ機能しません。サーバーが停止すれば、そこに保存された音楽も消えてしまいます。一方、石に刻まれた楽譜は、何千年もの時を超えて私たちに届きました。この事実は、音楽の保存方法について、私たちに重要な示唆を与えてくれています。私自身、作曲した曲をPDFで保存していますが、これもデジタルフォーマットである以上、いつかは読み取れなくなる可能性があります。そのため、重要な作品は紙や他の耐久性のある媒体に転写して保存することの必要性を強く感じています。

原初的メディアの重要性

ASMRのような現代的な音の表現も、録音技術がなければ伝承できません。しかし、アコースティック楽器の音や、人間の声による歌唱は、電気がなくても表現できます。原初的なメディアと現代的なメディア、両方を大切にすることで、音楽文化を確実に次世代に継承できるのではないでしょうか。私たちは便利なデジタル技術を活用しつつ、同時に長期的に伝承可能な方法も模索し続ける必要があります。音楽は人類の貴重な文化遺産です。それを一世代で失わせてはなりません。セイキロスの墓碑が教えてくれたように、音楽には時代を超える力があります。私たち音楽家や音楽愛好家は、この素晴らしい遺産を確実に未来へ繋げていく責任があるのです。最後に、この話題について考えるきっかけを与えてくれたリスナーの方に感謝します。音楽の未来について、皆さんも一緒に考えてみませんか?音楽は私たちの心を豊かにし、時には人生を変える力を持っています。その力を信じ、大切に守り、そして次の世代へと繋いでいきましょう。

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