母の遺した縁と音楽への道 〜教育者の母が紡いだ人生の糸〜

人生の節目に立ち、過去を振り返ると、私たちの歩みを形作った数々の出来事や人々との出会いが浮かび上がってきます。今回、私の人生の大きな転機となった母の死を通じて、改めて母が私に与えてくれた影響と、その広がりについて考えさせられました。母の遺した縁が、いかに私の人生を豊かにし、音楽への道を導いてくれたのか。その不思議な巡り合わせと、今なお続く縁の力について、皆さんと共有したいと思います。

教育に捧げた母の人生

今年の10月25日に母が亡くなり、49日を前に親族や僧侶を迎える準備をしています。この機会に、母について思うことを少しお話ししたいと思います。

母は地元の中学校で家庭科の教員として、23歳から60歳まで、実に30年以上にわたって教壇に立ちました。その間、数多くの生徒たちを見守り、教育に携わってきました。母の教え子たちとの出会いは、今でも続いています。つい昨日も、ライブの会場で出会ったお母さんが、中学1年生の時に母にお世話になったと驚かれていました。このように、母は教育に人生を捧げ、地域に深く根ざした存在だったのです。

母は穏やかな性格で、私が学問や好きなこと、特に音楽の道を歩むことを常に支持してくれました。現役時代は仕事に忙しく、たくさん話す機会はありませんでしたが、退職後は帰省するたびに少しずつ会話を重ね、地元でのライブやイベントには必ず父と一緒に来てくれました。母は陰ながら私を見守り続けてくれた人だったのだと、今になって強く感じています。

思いがけない縁の広がり

母の死後、思いがけない形で母が築いた縁の広がりを実感する機会がありました。先日西舞鶴の丹鉄ライブで出会った親子連れの方々との会話がその一例です。小学6年生の男の子のお母さんが、私と同じ中学校の出身だったのです。さらに驚いたことに、そのお母さんは母が中学1年生の時の担任だったそうです。

このような偶然の出会いは、地域で教員をしている人にとってはよくあることかもしれません。しかし、母の死後にこうした縁が明らかになることで、母が築いてきた人々とのつながりの深さと広がりを改めて感じずにはいられませんでした。

音楽への道を開いてくれた母

私の音楽の道のりは、小学校2年生から高校3年生まで12年間続けた電子オルガンから始まり、大学でピアノに転向しました。この音楽の道を歩み始めるきっかけを作ってくれたのも、実は母でした。

小学生の時、音楽の授業でオルガンを使った試験がありました。家に鍵盤楽器がなかったため、教科書の後ろに掲載されている鍵盤の写真を見ながら、机の上で指を動かして練習していました。その姿を見た母が、「音楽をやってみたいの？」と声をかけてくれたのです。

そして、母の教え子が新しくピアノと電子オルガンの教室を開くという話を聞き、そこに通ってみないかと提案してくれました。この母のさりげない一言と、彼女が持つネットワークが、私の音楽人生の出発点となったのです。

母が紡いだ縁の糸

振り返ってみると、私の人生は母が紡いだ縁の糸で結ばれているようです。12年間お世話になった電子オルガンの先生との出会いも、母のつながりがあったからこそ実現しました。その先生から学んだ丁寧な演奏の習慣は、今でも私の音楽活動の基礎となっています。

さらに、私のCDジャケットデザインを手がけてくださっている京マグ・松本さんとの出会いも、母の友人関係がきっかけでした。これまでに30枚近くのアルバムや本の表紙を制作していただいていますが、この協力関係も母なくしては生まれなかったご縁だったのです。

母の49日の法要が終わった後、参列してくださった方々の中にも、母との縁で結ばれた人々がいました。松本さんのお母さんや、遠い親戚でありながら母との会話を楽しみに来てくださる方など、母が築いた人間関係の豊かさを改めて実感しました。

そして、この法要をきっかけに、なんと新たな音楽コラボレーションの可能性も生まれそうです！これもまた、母が残してくれた縁がつながった結果なのです。

母から受け継いだもの

母の死は、私の心に大きな穴を開けました。しかし、同時に母が残してくれたものの大きさにも気づかされました。教員という職業を選んだことも、間接的には母の影響があったのかもしれません。一人一人としっかり向き合う姿勢や、ライブなどで人の話をしっかり聞く態度も、母の誠実さを受け継いだものだと感じています。

母は「これをしなさい」「あれをしなさい」と細かく指示する親ではありませんでした。しかし、その生き方を通じて、私に大切な道筋を示してくれたのだと思います。母から受け継いだ精神性は、今の私の基盤となっています。

おわりに

今回、母の死をきっかけに、改めて母が私の人生に与えた影響の大きさを実感しました。教育者として地域に根ざし、多くの人々とのつながりを築いた母の生き方は、私の人生の指針となっています。

皆さんも、ご両親や身近な人々から、気づかないうちに多くの影響を受けているのではないでしょうか。日々の生活に追われ、忘れがちになる大切な人々とのつながりを、時には立ち止まって振り返ってみることも大切だと感じています。

母が遺してくれた縁は、今も私の人生を豊かにし、新たな可能性を開いてくれています。これからも、母が紡いでくれた縁の糸を大切にしながら、自分らしい道を歩んでいきたいと思います。そして、母のように、誠実に人と向き合い、次の世代につながる縁を紡いでいけたらと願っています。

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