マイナーだけど重要!小殿筋について考える
今回は股関節外転筋の1つである「小殿筋」について書いていきます。
股関節外転筋といえば、中殿筋が有名ですが、小殿筋はマイナーだけど股関節のインナーマッスルとして大事な筋肉になります。
そんな小殿筋の機能解剖やトレーニング方法について学んでいきましょう。
機能解剖
まずは解剖学的な話しから。。
小殿筋(Gluteus minimus)
小殿筋は股関節の深部にある筋肉であり、中殿筋と同じような走行をしています。
外転筋総面積の約20%を占めています(ちなみに中殿筋は約60%を占めます)。
【起始】腸骨外側面
【停止】大転子の前面
【支配神経】上殿神経(L4〜S1)
【作用】股外転、屈曲、内旋
*伸展位では前部線維→股関節内旋
後部線維→股関節外旋
股関節屈曲することで内旋作用が増加し、外転作用が減少します。
【連結】中殿筋、梨状筋、関節包上方(深層線維の一部)
中殿筋との走行の違いとして、大転子に対し平行に走行しているため、大腿骨頭を臼蓋に圧縮する作用があります。
これにより歩行などにおける股関節の安定性に寄与しています。
また、小殿筋は外旋6筋や腸腰筋と並び股関節のインナーマッスルともいわれています。
理由として、小殿筋の深層線維の一部が関節包上方に付着しているからです。
小殿筋が収縮することによって、股関節外転時に大転子が牽引されて関節包との衝突が防止されています。
この働きって・・・・別の部位でもあるんじゃないか??
そう思われた方はさすがです!
小殿筋はまさに肩関節における棘上筋と同じような役割を果たします。
歩行や片脚立位において、中殿筋よりも小殿筋の活動が高い 1)や股関節外転20°あるいは片脚立位で外転した際には、小殿筋が中殿筋よりも活動する との報告もあります。
そのため中殿筋だけではなく、小殿筋もアプローチの対象としてみていく必要があります。
アプローチ方法
小殿筋へのアプローチはどのように行なっていけばいいのでしょうか?
小殿筋は股関節伸展位および低負荷運動において高い収縮率があり 、さらに角度でいうと股関節伸展10°+外転20°が望ましい 2)との報告があります。
負荷量については、最大筋力に対して20%の負荷量 3)で行います。
股関節伸展位で行う理由として、小殿筋の走行から股関節軸より後方に位置するため、股関節屈曲位よりも伸展位で外転筋として作用しやすくなるからです。
一方、高齢者など股関節伸展位がとれない方もいるかもしれません。
そういった方は以下の動画のように、股関節屈曲+内旋の動きをすることで小殿筋の収縮を促通することができます。
上記に追加で、筋肉を大転子へ向け軽く引っ張ると患者様自身の動きの誘導にも役立つのでおすすめです。
まとめ
今回は小殿筋について書いていきました。
小殿筋はマイナーではありますが、股関節にとって大事な筋肉になります。
・インナーマッスルとしての作用がある。
・筋肉の走行から股関節の安定に寄与する。
・股伸展10°+外転20°or股屈曲+内旋、低負荷(最大筋力に対して20%の負荷)で促通することができる。
今回の内容を参考に、中殿筋だけでなく小殿筋も視野に入れながら評価・アプローチをしていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
引用文献
1)島田裕之 他(2008) 長時間歩行時の下肢筋の筋活動状態:[18F]fluorodeoxyglucose を用いたPositron Emission Tomografhyによる検討.理学療法学 35(6):271-278
2)平尾利行 他(2009)股関節深層筋トレーニングに関する検討-超音波画像診断装置を用いて-.Hip Joint(35)62-65
3)室伏裕介(2017)小殿筋の動作時筋活動評価と小殿筋の選択的筋力強化方法の検討