
一足早い春の訪れ~梅の香りから~
朝晩の冷え込みはあるものの、真冬のような凍てつくような寒さはかなりなくなってきている。
四季で言うと、まだ冬ではあるけれど、二十四節気で分類すると、今は最後の第24の大寒をちょうど過ぎたばかり。今年の大寒は1月20日。
大寒を過ぎると、今度は二十四節気がぐるっと回って、立春。今年の立春は2月3日。
二十四節気で季節の移ろいを捉えてみる方が、季節の細かいニュアンスを捉えられるような気がしてくる。この世界は、本当はもっと豊穣に満ちた世界なのだ。
僕は、梅の香る季節が好きだ。あの甘く淡い香りが好き。梅の香りを表すものとして、「馥郁たる香り」と表現するが、音の響きが何とも上品で良い。梅の香りのイメージにぴったりだ。
早いところでは1月下旬から咲き始めるが、毎年だいたい立春すぎたあたりから、梅のシーズンになる。梅の香りがしてくると、いよいよ春なんだな、と感じる。
今では、花見と言えば桜であるが、昔は梅を鑑賞することが文化的なステータスだったらしい。それは、奈良時代に遡る。当時、日本は遣唐使を介した中国との交易が盛んであり、中国の物品も多く伝わり、その中の1つに梅があった。香立つその花は珍重され、桜よりも人気があったとのこと。
だからと言って、桜に人々が興味がなかったというわけではなく、当時、桜は鑑賞するというより、神様が宿る神聖な木であり、祭る対象となっていたものらしい。
桜の花見が定着したのは、菅原道真が遣唐使を廃止した894年かららしい。ただ、日本の花見の最初は、『日本後記』によると、812年、神泉苑にて嵯峨天皇が「花宴の節(せち)」を催したと記されている。
それ以上の花見の歴史については、下記を参照。
会社で、「僕は梅の季節がとても好きだ。とても良い香りがたまらない。」と言ったら、「え~、梅ってそんなに良い香りするっけ?全然意識していない。」と言われてしまった。
今では、すっかり桜の陰に隠れてしまって人気が薄い梅なので、ちょっとここで梅の魅力のアピールをしてみた。
立春を2つ進めると、啓蟄。「けいちつ」と読む。「啓」は「開く」、「蟄」は「虫などが土中に隠れ閉じこもる」意味で、「啓蟄」で「冬籠りの虫が這い出る」(広辞苑)という意を示す。この言葉の意味は、僕が小学生の頃、父と雑木林のある公園に連れて行ってもらって、教えてもらった。音の響きから、生物が動き始める様が見て取れて、とても面白い。もう少ししたら、生物のパレードの季節だ。
このように二十四節気で細かく季節を区切ってみたほうが、世界の解像度が上がる気がしてきた。本当に、物の見方次第で、万華鏡のようにめくるめく、世界は変わっていく。本当に、この世界は面白い。