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謎の占いマシーン

私は時々、三木聡監督の作品が無性に観たくなる。
最近観たのが「インスタント沼」。
不運続きのヒロインが自分の出生の秘密を探るため、
父親の営む怪しげな骨董店へ行き、そこで繰り広げられる奇想天外なハートウォーミング・コメディー。

さまざまなヘンテコな出来事や人物に遭遇するが、
その中に「ツタンカーメンの占いマシーン」という
胡散臭い機械が登場する。
その名の通りツタンカーメンの黄金マスクをかたどった外観で、お金を入れて生年月日と性別を入力すると将来の結婚相手の写真が出てくる。

私は子供の頃、これとよく似た機械で実際に結婚相手を占った事がある。
温泉施設のゲームセンターに置いてあった。
黄金マスクの形ではなかったが、
小さなモニターに女性の写真が映し出された。
そしてスピーカーから女性の性格や私との相性を説明する音声が流れてきた。

当時、私は小学1年生。
モニターに映ったのは20代くらいの大人の女性。
「へ〜、この女の人と結婚するのか」と何の疑いもなく受け入れていた。
今思うと恐ろしいくらい素直だ。
しかし、あれから長い年月が経つが、未だにこの女性とは出会っていない。

三木聡監督の視点でものを見ると平凡な日常がとても楽しくなる。
退屈な時間もワクワクしたりドキドキしたり。
最悪な事態も楽しい出来のように思えてくる。

「たまにはありえないものとか見なさいよ」
映画のなかでヒロインの母親が娘に話す。
シュールでナンセンスで芸術的なバカバカしさ。
廃棄場に転がっていた占いマシーンのように、次はどんなガラクタが面白い素材に生まれ変わるだろう。

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