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【読書感想文】《マチズモの人類史》〜 今だから 読みたい〜

私的いつものパターン【何かの書評で見かける⇒図書館で予約⇒やっと順番が回ってきた】でした。

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まずは、とりあえず読み通した自分を褒めたい。
それも貸出期限内に。
頑張った、私!

お高くて分厚い。
大阪市立の図書館には蔵書されてなく、大阪府立図書館からやってきた。

確かに娯楽作品ではないけど、世界の人口の半分の方が読んだ方がいいと思われる内容なので、大阪市立の図書館にも蔵書されてもいいんじゃないか?と思う。

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サブタイトルからも分かるように、現在でも世界中をがんじがらめにしている家父長制・男性支配下の世界の有り様を、旧石器時代まで遡り21世紀の現在までを考察する本書。

哺乳類生物として女性が妊娠・出産・育児を負担することにつけ込んで、

ちゃっかり支配する立場になった男性。

旧石器時代からの、

その延長線のままでいいはずが無いではないか!

と、21世紀を生きる男性であり夫であり父である著者が語る。

まず、女性が【人間としての権利】を要求し始めるまでが、長く腹立たしい。

フランス革命の人権宣言は画期的であったにも関わらず、その【人権】の【人】には女性は含まれてなかったとか、もう改めて本に八つ当たりしたくなるくらいムカついた。
(弁償するにはお高い書籍なので、何もしなかったけどね)

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旧態依然の家父長制・男性支配の【制度】が社会の進化に従って破綻しようとしている今、それに気づかなかった、あるいはそれを肯定してきた立場の人々(男女は問わない)に、対立ではなく互いの立場に立って新しい人権の価値観を構築していこうではないかと呼びかけて締めくくられている。

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日本で、性的犯罪が多い事から設けられている《女性専用車両》の存在。
女性の方が成績が良い受験者が多いからと、一律に減点していた日本の医大も言及されている。
世界中で女性の就労人口が増えているにもかかわらず、ケア的業務に偏って増加していたり、意思決定の場における女性の比率の低さは相変わらずだったり。
世界全体での女性の就学率・識字率の低さ。
家父長制に(ほぼ無意識に)基づく勤務体系の中で頭角を現すために、【名誉男性】であることを求められる女性たち。

また《男性支配に迎合する事》で、自分の存在を高めているという幻想を持つ女性も。
(『夫は育ててあげましょう』としたり顔でアドバイスするとか、『異性からの称賛が自分の評価と考える』とか、etc.)

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男性の支配性(と著者が言う)に当てはまらない存在を排除してきた歴史は、女性・こども・人種・性的マイノリティへの差別の歴史であり、社会構造の変化に従って今多数の男性をも排除している。

その排除されるようになった側の男性が、その原因を女性にあるとして女性を嫌悪するミソジニーに、人種のせいだとレイシズムに走る。
そして排除された男性同士で傷を舐め合うホモソーシャルとなり、排除される側ではないと主張してホモフォビアとなって、いずれにしろ

他者への攻撃を正当化している

のだ。

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その状態は、人類全てにとって不幸な事ではないかと著者は問う。

(主に)フェミニストの活動は、女性を解放するのみならず、抑圧される存在全てのへの解放でないのか?

下駄を履かせてもらってる事に気づきもしない、はもう通用しない。
『男は〇〇だから仕方ない』と受容されると思うのは間違いなのだ。

女性は、こどもは、白人以外の人種は、性的マイノリティは、既に十二分に抑圧されてきて、その解放のために闘い続けてきた。

今こそ、支配する側・家父長制に守られてきた側が変わる努力をしなくてはならない時なのだ。

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日本国内で女性にとって絶望的なニュースに触れる事が多い昨今、男性にこそ読んでもらいたい、いや読むべき内容だ。
(潜在的に現状を認めてきた女性や抑圧されてきた存在の方にも、どうぞ)

ぜひ!ぜひ!ぜひ!

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では、また。

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