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国内 オンライン美容診療×医薬品の市場プレイヤー動向について


■美容診療の市場動向

美容診療市場は、コロナ禍において、マスク着用のタイミングやオンライン診療の選択肢の広がりなどの影響もあり、国内市場は年々成長しています。
現在では、国内の美容診療市場は22年にはコロナ以前の4080億円に回復しており、1)オンライン診療の台頭、2)サブスクリプションサービスを提供する医療施設の増加、3)ドクターズコスメの取り扱いを強化する医療施設の増加、4)「しわ・たるみ取り」「ケミカルピーリング」「脱毛」「わきが・多汗症」等の施術が増加、5)内科・歯科等の他の診療科からの非外科施術での参入の増加などが市場拡大の背景として挙げられます。

また、今回取り上げるテーマでもあるオンライン診療は、ユーザーにとって薬の処方を簡単にし、サブスクリプションサービスの月額定額などの仕組みなどの多様な支払い手段を提供することで、医療脱毛、ニキビ治療、美肌、しわ・たるみなどの非外科的治療を受ける人の経済負担のハードルを下げています。加えて、参入する医療施設の増加、女性の美容医療への心理的障壁の低下、男性需要の拡大が背景となり、引き続き市場拡大していくと言われております。

この流れはグローバルでも同様で、近隣国の中国や韓国を中心に世界の美容整形・施術市場規模は2021年に634億米ドルまで成長しており、2022年から2030年にかけてCAGRは9.6%と急成長領域となっています。

このように今後も拡大基調で推移する見通しの中で、対面のみならず、美容皮膚科領域のオンライン施術も同様に市場が拡大しております。
今回は、美容皮膚科領域のオンライン診療プラットフォームにフォーカスし、国内外の市場プレイヤーの動向を中心に紹介していきます。

■国内プレイヤー

日本:LATRICO(東京美肌堂)

HP

LATRICOは、2020年9月に初診からオンライン診療が可能になり、オンライン診療の規制が緩和されたタイミングで、CEOの濱口氏がミダスキャピタルとの事業ディスカッションをするなかで、オンライン診療(美容皮膚)の市場チャンスがあるとの背景から設立された企業です。

濱口氏の事業立ち上げ背景に関するコメント:
肌に何らかの課題を抱えていても、サプリメントや美白化粧品などを使っている人は多い。疾患治療前(未病)にも使える医療医薬品が多数あるのに、わざわざクリニックに出向かなければならない面倒さから活用されていないこと、遠隔診断など条件付きなら働ける医師のリソースを活用できる可能性を感じ、本格的に事業開始

thebridge

LATRICOは東京総合美容医療クリニックと提携しており、医師がオンラインで診断し、クリニックや薬局に出向かなくても適切な薬をサブスク形式(1/3/6ヶ月ごと)で受け取ることができる仕組みを提供。

株式会社LATRICO 会社紹介資料.pdf
株式会社LATRICO 会社紹介資料.pdf

現在はオンライン皮膚科として、市場でのポジショニングを取っていますが、1つのテーマであるスキンケアの軸でトップラインを伸ばしていこうとしているのがこちらの会社紹介スライドから読み取れます。
現状は、3万人以上のユーザーがサービスを利用しており、国内のオンライン医療のスキンケア特化プレイヤーの中では最大規模のプレイヤーだと思われます(23年7月時点)。

日本:Neautech(ANS.)

https://fashiontechnews.zozo.com/philosophy/ans

株式会社Neautech(ニューテック)は、Neautech 取締役の竹村氏の監修により設立。リリース当時は、別法人で定額制の美容クリニックを設立し、クリニックプロデュースフィーをもらう形でクリニック運営を行なう形で事業をスタートしているようです(南青山院など全国に5店舗)。美容クリニック自体は、2021年頃から始めていたようで、最初の1年で5千人以上が来院したと記事に記載されています。
2022年4月に美肌処方薬のサブスクリプション配送サービスのHADA LOUNGE ONLINEをローンチし、2023年1月にANS.をブランド名としてオンライン皮膚科サービスをローンチしています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000100322.html

ANS.は、ローンチ後に診察料・送料無料キャンペーンを行なったこともあり、3ヶ月で新規診察数8,000名を突破しています。また、マスク着用の緩和の発表があった2月10日から3月9日現在にかけて、1月と比較して利用者が約5倍に急増し駆け込み需要があったとのことで、マスクを外す機会が増え、マスク生活によって引き起こされた肌トラブルを改善したいというニーズに対応することで順調にユーザー数拡大をしているようです。
現在は、LATRICO(東京美肌堂)と同様に、スキンケアに特化しており、自社運営しているクリニックとOMO戦略による優位性を築くことで他社との差別化を図り、スケールを目指しているようです。

サービスの流れとしては、LINE公式アカウントを追加し、アカウント登録、問診票への記入、顔写真の撮影や本人確認書類の提出、医師の診察、決済・配送手続きを行う流れになっています。各過程のLINE上でのやりとりは、表示されるリンクから別ブラウザに遷移してANS.独自開発のシステム上で行われる仕組みになっているそうで、国/政府が定めたオンライン診療を行うシステムの要件である3省2ガイドラインに準拠するための措置を行なっているそうです。ビデオチャットによる診察は2023年4月現在、ユーザーからの要望があった場合に医師の判断のもと個別で対応しており、ビデオチャットの場合は両者の都合の合う時間を細かく調整する必要があるため予約制で、現時点では9割以上のユーザーがより手軽な文字チャットを選択しているそうです。薬に関しては、独自の仕入れネットワークでコストを抑えており、自由診療領域における圧倒的な安さで勝負してきているように思います。

更に、ANS.ではオンライン診療のほか、「HADA相談室」​という完全チャットでいつでも気軽に専門家に質問できるサービスも提供しています。これにより、肌悩みに関してわからないことはすぐに聞けるので、患者さんが治療を続けるモチベーションにも繋がっているそうです。

日本:エムズ(CLINIC FOR)

https://job-medley.com/facility/230372/

クリニックフォアグループによる「CLINIC FOR」は、LINE上でオンライン診療を行い、低用量ピル、AGA、禁煙、花粉症、漢方、などクリニック事業体として幅広い診療に対応しています。また、自由診療の美容皮膚科に加えて、保険適用の皮膚科にも対応しており、スマホ、パソコン、電話で、事前に予約した日時に医師の診察が受けられる仕組みになっています。加えて、CLINIC FORでは医療機関専売スキンケア製品などを販売する企業らと提携しており、必要に応じてオンライン診療で肌のカウンセリングを実施している。

■海外プレイヤー

海外でも日本と同様に、オンライン美肌治療サービスが出てきています。その中でも代表的なサービスをいくつか紹介していきます。

イギリス:GetHarley

wwd.com

GetHarleyは、2019年に設立された企業で、Index Ventures、Headlineなどから合計$67Mを調達しているスタートアップ企業です。創業当初から美容皮膚に特化し、事業運営を行なっており、1000人以上の美容医師、形成外科医、皮膚科医がオンラインを通して、小じわ、色素沈着、にきびなどの美肌に関する診療を行なっています。

アメリカ:Thirty Madison

HP

Thirty Madisonは、2017年に設立された企業で、HealthQuest Capital、Maveronなどから合計$209Mを調達しているスタートアップ企業です。
創業当時は、AGA、偏頭痛、胃酸逆流に始まる慢性疾患の治療薬とオンライン診療サービスの展開から始め、今では他ジャンルで同様のアプローチをとっている企業を買収し、提供できる製品や診療の幅を広げています。

2022年には、美肌、避妊、ホームテスト、メンタルヘルスなどをオンライン診療にて提供していたNurxを買収しています(買収額は非公開)。Nurxは、2015年に設立されている企業で、買収前はKleiner Perkins、Union Square Ventures、Y Combinatorらから合計$115Mを調達していました。
また、2023年6月には、避妊、スキンケア、月経ケアを取り扱うPill Clubから10万件の患者データと知的財産を含む資産を3,230万ドルで買収しました。

他にも、アメリカだと、Musely、Curology、Apostrophe、Maple、Hers、hims、Roなどのプレイヤーがスキンケアにも取り組んでいたりします。他の国だと、カナダではFelix Health、スイスだとOnlineDoctor、オーストラリアだとMoshなどのプレイヤーが存在しており、各地域で主要プレイヤーが出始めています。

■最後に

私が所属しているi-nest capitalでも、今回取り上げたテーマでもある美容系ジャンルへの出資を行なっております。直近だと、ヘアケアDtoCのPfines社自由診療向け基幹システムのB4A社への出資を行なっておりますので、上記テーマでディスカッションさせて頂ける方はTwitterやFacebook等でご連絡下さい。


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