はるかのエッセイ【はーちゃん】
あなたは初めての一人称は何であったか覚えているだろうか?一人称は大抵、二歳ごろから〇〇君、〇〇ちゃんなどと周りからの相性をそのまま使い始め、年中~年長児になると、多くの子供たちが「わたし」や「ぼく」を使い始めるそうだ。
自分の愛称をそのまま一人称として使用する行為は、周りに自我を強めている行為だそうだ。自分を認めてもらおうと、子供たちも必死なようだ。
「わたし」「ぼく」に変化するのは、環境の変化や周りの子からの影響であるという研究結果が出ているそうだ。
わたしの初めての一人称は、はるかの〝は〟の字を伸ばしただけはーちゃんだった。周りの大人たちが皆そう呼んだためである。
年中、年長にあがり、そろそろはーちゃんも〝わたし〟になって良いのでは、という時期になっても、はーちゃんは変わらずはーちゃんのままであった。
ある日、少女が、季節外れの転園をしてきた。新しい友人に皆がそわそわしていた。
わたしもその一人である。
少し興味を持ったわたしは、もぞもぞと近付いて、自己紹介をしてみた。
「はーちゃんだよ、なんて名前?」
立派な自己紹介である。
すると、名前も知らない少女は
「まだ〝ちゃん〟なんだ。恥ずかしくないの?」と。
突然のディスに一瞬体が硬直した。
「別に恥ずかしくないよ。」
流石はーちゃんである。プライドだけはこの時から高いようだ。
このとき初めて一人称を意識した。
「ちゃんはだめ・・ちゃんはだめ・・。」
あれから十五年ほど経つ今、
現在はー
は、彼女の言いつけを真面目に守っている。