誰よりも"日本らしさ"を反映したZIGGYのロックが世界最強!!
世界中の作品から、21世紀最高のメタル/ハードロック・アルバムを決めてくれと言われて即答できる人は少ないだろう。まだ四半世紀が過ぎただけだけど、それでも今世紀はあまりにカラフルで挑戦的な素晴らしいメタル・アルバムが多すぎるのだ。
だけどね、僕は21世紀最高の歌と歌心とメロディが聴けるメタル/ハードロック・アルバムなら即答できる。ZIGGY の "2017" だ。
「これだけ歌を大事にする、歌心のあるバンドをやれて幸せだ!みんなもそれを感じて、誇りに思ってほしい!」
これはその ZIGGY の看板を40年もの間、背負い続けてきたロックン・ローラー、森重樹一が先日ライブで放った言葉だ。
本当にそう思うし、30年聴き続けた自分も誇りに思うよ。そしてたしかに、歌を、歌心を、メロディを大切にするバンドはどんどん少なくなっている。
「日本人として、日本らしさをどうやってロックに反映できるのかをいつも考えているんですけどね」
これも森重さんがMCで言っていたこと。これをね、死ぬほど考え続けている日本人アーティストがどれだけいるだろうか?
興味深いのは、かつての森重さんは、彼ほど外国人になりたがっていた人は他にいないというくらい、西洋のロックに憧れていたんだよね。歌詞には英語をたくさん使い、日本語でも英語のような韻の踏み方をする。MCやアクションにも外国が出るし、金髪にもこだわっていた。初期の楽曲では、HANOI ROCKS みたいなスリージーな外国のロックからフレーズを引っ張ってきたりもしていたよね。
で実際、ZIGGYガチ勢の僕の目から見ても、90年代後半から00年代の森重さんはそこにこだわりすぎて少し迷走しているように見えた。テクニカルになってみたり、メタリックになってみたり、ブルージーになってみたり、ジャズっぽいことをやってみたり (それはそれで良いのだけど)。バンドブームが終わって、なんとか生き残る術を探しているようにも見えた。
それでね、きっと気づいたんだと思うんだ。やっぱり、森重樹一といえば、ZIGGY といえば、歌心だってね。
森重さんはライブでジュリーの話をしていたんだけど、まさにね、森重さんの原点であるジュリーやヒデキから脈々と受け継がれる歌謡曲の歌心。それってやっぱり世界にはないものだし、例えばブラジルのボサノバとかインドのボリウッドとかポルトガルのファドとそう変わらないものでしょ?
だからその伝統をハードロックに昇華して、あの美しいコード進行、螺旋のようなクリシェ、キャッチーなリズムの遊びを森重流に磨き上げて行くことに決めたんだと思うんだよ。ホント、神のクリシェだよね。ビートルズにも匹敵する。
面白かったのは、森重さんが「昔はまわり (対バン) に "メタルの人" がたくさんいて、音にも隙間がなくて、とにかく音を詰め込んでいて…」なんて話していたこと。
だって、まわりから見れば森重さんも絶対 "メタルの人" なんだけど、そして森重さん自身もそんなことは重々承知のはずなのに、あえて "メタルの人" って言う。これって僕も時々やるんだけど、つまり、自分はメタルだけじゃない、他にもいろんな音楽を聴くんだよっていうサインで、レッテルを貼らないでくれっていう願いで、あとはちょっとしたマウントなんだよね。
そして何より、ZIGGY はまずリフありきじゃなく、まず歌ありきなんだという意思表明。あの年で、俺は他とは違うってイキれるの、スゴくカッコよくないですか?
とにかく、今の森重さんはとても自然体だ。髪の毛も金髪にはこだわっていないし、歌詞も日本語がとてもいきいきとしているし、言葉選びが淀みのない清流のような流れで、優しい。君のままでいいから、好きにやろうぜ、なんとかなるよといつも前向きに寄り添ってくれる。
ステージでは楽しそうに酒を飲み、曲が終わるたびにこちらも笑顔になってしまう。時々はプロンプターを見たりもするけど、LINDBERG の渡瀬マキさんはずっと見ているから時々なら大丈夫なんだそうだ。そして何より、その音楽は日本が誇る歌謡曲が素晴らしくロックに進化した今のサウンドを刻んでいる。
事実、2017年の "2017" から ZIGGY の音はまったくブレていない。アルバム毎の色はあるけど、すべてが最高のメロディを運ぶ傑作揃い。そして、どんな楽曲でもいつも根底には森重樹一の歌がある。メンバー全員が、まず森重さんの歌を活かそうと全力を尽くしている。
今のメンバーの実力、バランスも素晴らしいよ。特に、元ビークルのカトウタロウさんね。ちょっと捻くれたキャッチーな編曲、ギターヒーロー然としたハイ・テクニック。ビークルもまず歌ありきのバンドだったけど、英語にこだわっていたのが ZIGGY とは真逆で面白いよね。そんで当たり前だけど、コーラスも上手い。CHARGEEEEEE...さんの異様に上達したトミー・リーみたいな爆音ドラムとキャラも最高!
森重さんは何度も、「懐メロバンドにはなりたくない」「新曲をやらないバンドにはなりたくない」「新曲をやらないバンドはダメですよ」って言ってたけど、それだけの説得力が"2017"からずーっとあるんだよね。新曲の方が躍動している。音楽的にもカラフルで知的でよく練られている。もちろん、歌唱力も。圧倒的な声量と艶、そして2時間ぶっ通しでもぜんぜん枯れない持続力。国宝ですわ。
40周年のツアーで新曲をたくさんブチかますなんてなかなか出来ることじゃない。それだけ自信とプライドがあるんだよね。新作の "For Prayers" に。今の ZIGGY の姿に。
このアルバムに久々にゲスト参加した横関さんが、「森重がまだ続けてくれていて、また隣で弾けてうれしい」 と言ったらしいんだけど、たまらないストーリーだよね。30年経って、ふたりともまだ最前線にいる。うれしいよ。横関曲の3曲と"BELIFE" の素晴らしさよ。
最後に森重さんの歌を最も堪能できる ZIGGY のオススメ・アルバムをいくつか挙げておこう。"For Prayers", "So Bat, It's Real", "2017", "Zoo & Ruby"。くれぐれも、ZYYG と間違えないように。いや、ZYYG は ZYYG で良いんだけどね。いきなりのスライド・ギターで度肝を抜く "Go-Wild" とか最高よ。君が欲しくてたまらない!!
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