推すならヘヴィ・メタルを推せ!あと猫も!
いやーなんかもう、しんどいですねぇ…
何がって、ツイッター↑(現X)にいることがですよ。
もうね、鬼の首の取り合いじゃないですか…
一度おすすめタブを開いてしまうと、もう正常じゃいられない。オマエはどちらの側に立つんだ?正義を選べ。そして我々をコケにする敵を殲滅せよ!両者からそう言われているような気がする。地獄だよね…
そう、中居さんの話だ。
そもそも、僕は正義を気取る気も決める気も毛頭ないのだけど、今回の話で一番戦慄をおぼえたのが "推し" という文化(と呼べるのかも謎だけど) がたどり着いた狂気だったんだ。
この "推し" という言葉、僕の感覚では AKB が爆発し始めたころに、同じ CD を何枚も買わせることに対する免罪符として使われ始めたような気がする。それが秋葉原の文化全体に伝播していったような。
とにかく、僕は一貫してこの "推し" という謎の文化と馴染めなかった。CDって僕にとって、わりと神聖なものだったんだよ。一枚増えるごとに、人生がほんの少し豊かになるような気がしていてさ。
だから、同じCDを買う意味がぜんぜんわからなかった。そもそも、良いもの欲しいものを買うって形が健全だし、手に入れた時の喜びもひと塩だと僕は信じているから。買わせたいと思わせる "コンテンツ" を作るのが先だと信じているから。
だから、ぜんぜん必要ないけど、推しのために同じものをいくつも買う、"お布施" みたいな考え方が理解できなかった。アーティストもそれで満足なのだろうか?ってね。もちろん、TALISMAN の "Humanimal" は緑、オレンジ、青の3ゴリラをコンプしてこそ価値があるのだけど、それはまた別の話だ。
とにかく、良いものを作ってくれるから欲しい。だから購入して応援する…ではなくて、応援しているからなんでも買うみたいな本末転倒な形がとても不健全に思えたんだよね。
で、今回、その不健全、不健康がついに爆発したような気がする。端的に言えば、すべてを捧げているから、"推し" に盲目になってしまうんだよね。
何があったのかはわからないけど、実際に被害者がいて、中居さんが加害者なのは事実じゃないですか。被害者なんだから、何かその方が中居さんに酷いことをされたのも間違いないわけじゃないですか。そこを完全にスルーして、"推し" を絶対的な正義とする、もっといえば被害者に鞭を打つようなことをする、"推し" が奪われた許せない…それはやっぱり違うと思うよ。
で、そうなっちゃうのは、やっぱり "推し" ひとりだけが生きる支えになってしまっているからだと思う。
あの人はこんな素晴らしいことをしている。自分にはこんなに優しくしてくれた。救われた人がたくさんいる。どれも事実だと思う。僕もめちゃイケでナイナイとクソ旅をする中居さんが好きだったよ。でもね、だからといって一人の人間を傷つけていいわけじゃない。それが免罪符になるわけじゃない。人間は誰しも様々な顔を持っているし、だいたいがグレーだよ。真っ白な聖人君主も真っ黒なド畜生も、実際はほとんどいないと僕は思うな。
もちろん、好きなもの、好きな人がいるって本当にステキなことだよね。生きる上での支えにもなるし、つらい現実からの逃避場所にもなる。でも、あまりにも好きに一極集中してしまう、自分の人生を投げ打ってまで突き詰めてしまうと、その "推し" がフッと消えてしまった時、残るのは何なんだろう…
最近、メタル世界、ギターワールドで愛され、崇拝されていたジョン・サイクスが亡くなった。かくいうこの僕も、サイクシーを愛していたひとりだ。もちろん、悲しいし、寂しいし、残念だし、心にポッカリと大きな穴が開いてしまったような気持ちだよ。
でもね、だからといって、もう何も手につかない、彼なしでは生きていけないってわけではないんだ。
それはね、僕の "推し" がヘヴィ・メタルの世界すべてだから。他にも愛するアーティストが星の数ほどいて、彼らが、彼らの音楽が僕を支えてくれるから。悲嘆にくれる間もないほど、次々と新たな作品、新たな才能が登場して、大きな喜びや楽しみを与えてくれるから。もちろん、サイクシーが残してくれた音楽も永遠だしね。あと猫も。
なんかね、そうやって一本の木じゃなくて、大きな森ごと応援して楽しむほうが、もっといえば自分も "推して" もらえるような何かを育てていくほうが、自然で自由で生きるのが楽になるような気がするよ、僕はね。他の山も開拓したりしながらね。好きなんてなんぼあってもいいですからね。あと猫も。
最後に、サイクシーの相棒、トニー・フランクリンの言葉を置いておこう。
「ジョン・サイクスが亡くなってから、君は大丈夫かと多くの人から親切に尋ねられた。私は本当に元気にしているから安心して欲しい。ジョンと私はとても前向きな関係だったので、私たちの間に後悔ややり残したことはないんだよ。もちろん、彼のことが恋しいけれど、素晴らしい思い出がたくさんあるから、それをいつも胸に抱いていくよ…」