今さらながら刺身を語ろう 5
《マグロの話》
数年前 大間産のマグロが3億円超えでセリ落とされた、なんてことが話題になったが、言わせていただけるならもったいなさの極みだと思う。話題を作るためとか、ご祝儀相場だ みたいな理由はあるんだろうが、1キロあたり120万円にもなることを考えれば、狂気の沙汰とは言えまいか。私がこれらの狂騒曲に血道を上げる人たちを見て、値段以外にも不思議を感じる項目を以下に述べてみる。
1.マグロを意味なく神格化してませんか?
マグロは珍しい魚ではない。当然マグロ全てが高級魚であるわけでもない。回転ずしなんかで回っているヤツは、他の赤身魚(カジキやカツオなんか)と比較して、品質や食味のレベルでは何ら変わるものではないと思える。『マグロは貴重で贅沢で高いものだ』というのは全くの見当はずれだ。
2.マグロの脂ってそんなに有難いですか?
肉にしても魚にしても 日本人はいつからこんなに脂が好きになったんだろう? カマの下部(五島ではウグイスと呼ぶ。『腹かみ』)はどんな魚でも脂が多い部位であり、少しなら確かに美味しい。しかしそれが100㎏を超えるような肥満体のマグロとなると(中には3m以上400㎏超のバケモノが存在するらしい)、もはやその部位は脂のせいで白っぽい。きっとそんなギトギトした身を美味しいと思うのも、A5の霜降り牛肉を『とろけるように柔らかくて美味しい』と評価する 最近の美食傾向に通ずるものがあるのかもしれない。
3.世間の評判ほどマグロ、美味いですか?
水っぽいマグロのジャブジャブした刺身なんかを出されると『せめて生じゃなく焼いてくれ!』と思う。まぁそれは極端なヤツなんだろうけど、正直言えば 私はこれまで ほとんどのマグロを美味いと思ったことがない。赤身、中トロ、大トロ ともに食べた時の感想は『大騒ぎするほど美味いか?』である。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
当たり前だが五島列島は大間ではないので大間産のマグロはいない(笑)が、しかしヨコワと呼ばれる 50 ㎝ 程度のクロマグロの幼魚は日常的に見た。マグロの生態を考えると、五島列島のヨコワと大間産のマグロは同じ種だと思っている。なぜなら私はクロマグロの 太平洋時計回り説(勝手にネーミングしましたww) :【日本のはるか南(フィリピン近郊)の海で生まれたマグロが、成長と共に北上、日本近海を通過して太平洋の緯度が高い海域を東進、アメリカ大陸近くに達した後は西海岸沖を南下して 赤道近くにいたり、そこから西に進んで元の位置に戻る】という回遊コースを進むという学説を支持しているからだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ネギトロ、山かけ、ヅケ丼。そんなわけだから絶対食わない・食えないわけではないから、出てきたのなら黙って食べるが、ゴメンナサイとしか言いようがないものの、自分で注文できるシチュエーションならば絶対頼まない。
マグロが大好きな多くの方々の中には、お気を悪くされた向きもおありかなぁと思う。謹んでお詫び申し上げる。