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横文字コンプレックス

 日本人は日本語をカッコ悪くダサいものと捉えている。だから『和風』や『和柄』などというモノなどはオシャレなものとして扱うものの、あくまでそれらの勢力範囲は狭く、ファッションの領域を超えない。

 戦後日本はアメリカの占領下に置かれた。これまで尊ばれていた日本の伝統的な価値観は、根こそぎ否定されてしまう程の 文化における事件だったと思う。感化されやすく横並びで安心する国民性も相まって、以後2, 30年の間に日本はあたかもアメリカの一つの州であるかのように、欧米風の生活様式は優れていて 日本風は劣っているということが固定してしまった。今はようやく日本という国が再評価されつつあるように感じるが、私が子供の頃は『舶来物』というのは手の出ない高級品という意味だったように思う。

 若者文化には如実にそれが表れる。アメリカで流行っているものを取り入れることは 無条件にカッコ良くイケてるものなのだから(この部分は今も変わらない)、アメリカ文化のモノマネをして、ラップに合わせて平たい顔でドレッドやコーンローをキメ、HIPHOPを踊るのである。日本舞踊や連獅子を駅前やストリートで踊る人は見たことがない(津軽三味線をストリートでやったりしたら大人気になるような気はするが)。

 ファッションに関すること、美に関すること、エンターテイメントに関することなどのネーミングにもこの価値観は反映される。アパレルのブランド名、音楽を奏でるバンドやグループ名、新発売される車の名称、新しくできたベンチャー企業名・・・。これらは全て横文字であり、日本語を使用することは(シャレを狙ったもの以外)ほぼないのが現実である。

 さて我らが美容界はどうだろう? 少し思い浮かべればわかることながら、新しい美容室の店名や美容業界の企業のほぼ100%は やはり横文字である。かくいう私とて美容界の末席を汚しており、その隆盛を願う立場から言わせてもらうなら、ゴチャゴチャ言ったところで 日本語はダサくって外国語がカッコ良いって人が圧倒的に多いんだから、商売するなら名前の選択を迷うわけがないと思っている。

 ハハハ。いや 自虐 自虐。我が身を振り返るに、単純な横文字信仰を持っている人を表面では批判しながら、本当はこのコンプレックスを 自分自身が根強く持っていることに気付いて苦笑いすることがある。

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