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さようなら恋人よ

わかってた。
電話で言われたとき、やっぱりか、と心のどこかで思っていた。

今日はバレンタイン。あなたに次会う時に渡すチーズケーキのレシピを調べていた。
チーズケーキ、もう二度と作れないかもしれない。あなた以外には。

あなたは愛されていて、勉強にも健康にもストイックで、頭が少しかたいところもあるけど、それも笑っちゃうんだよ。言い方はきついし、コーチみたいに私の指導をしてくるけど、それは私のためにもなることだった。
だから追いつきたかった。でもペースが違ったんだね。
あなたが、努力してるねっていうラインを私は越えられなかったんだ。

私はあなたのために色んなことをしてみたよ。
まつ毛もいつもよりくるんっと上げるし、デートの前日には、髪の毛もちゃんとトリートメントをしていたよ。服はあなたが好きそうな女の子らしいものを選んだよ。私はその時間がすごく嬉しくて楽しかった。かわいいって言ってくれるかなって。
あなたはどうだったのかな。
メガネをコンタクトにしてくれたり、髪の毛をセットしてくれたり、部屋を掃除していてくれたり、服をちゃんと選んでくれたり、私と同じようにそういう時間を過ごして、わくわくしてくれていたかな。

旅行も一緒に行った。
あなたがほとんど調べてくれて、案内してくれたよね。私は疲れた〜眠い〜とか、文句ばかり言っていたような気がします。ダメな彼女だね。

動物園や牧場に行ったとき、あなたの生きものに対する目や、触れる手が優しくて、嬉しかった。クリスマスプレゼントも、一生懸命アルバイトをしてプレゼントを贈ってくれた。
それとね、私はあなたの声が好き。低くて体に優しく響くような、すごく安心する声。もう一度、あなたの腕の中で聞けたらと、何度も思いました。

もう叶わないのかな。別れる前は行くところがあまり思いつかなかったけど、今になって、どんどん溢れてくる。
あなたに会って、色んな本屋さんに行きたい。そしたら喫茶店に行って、あなたはコーヒーを飲むの。私は甘いカフェオーレ。ねえ、砂糖入れすぎでしょって言われたい。そしたら映画を見に行ってちょっとびっくりするシーンがあったら手を握りたい。映画を見たら感想を話しに居酒屋へ。あなたは梅酒のロックに、私は緑茶ハイね。でも今なら多分、2人とも生ビールだろうな。
お酒臭いままあなたのお家に帰って、イチャイチャしたりして。それで一緒にお風呂に浸かるの。あなたの好きなTHE BLUE HEARTSをかけながら一緒に歌うの。横に並んで歯磨きをして、布団の中でハグをしながらぬくぬくと寝るの。もうきっと叶わない。
こういうことは何度もあったはずなのに、その頃には当たり前になってしまっていた。私が今こんなにも欲しいものが、さっきまで当たり前のようにあったんだ。だからここでこの恋心は葬る。

次会う時にはキスやセックスなんかいらないから、あなたと一緒にお出かけをしたい。ただただ笑いあって、色んなところに行きたい。でも私から誘うのはワガママだろうな。

あーーー好きだったな!

私があなたへの恋心を葬ったら、はやく私を誘ってね。
恋は禁物のお遊びを、もう一度しようよ。

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