【24年11月19日】谷川俊太郎さん
谷川俊太郎さんの作品で思い出すものはなんだろう。
二十億光年の孤独?
生きる?
朝のリレー?
このあたりは多くの人が挙げるところだと思うが、私は幼少時に出会ったいくつかの絵本をまずは挙げたい。まだ文字を読めないころに、親が読み聞かせてくれた本もある。
谷川さんは、和田誠、長新太、瀬川康男などの今となっては大家の絵描きたちとよく仕事をしていた。どの絵本も、言葉、絵ともに心に深く刻み込まれている。谷川さんによる朗読ライブのカセットテープも家にあった。
「いーもくって、ぷ!」にゲラゲラ笑ったものだ(おならうた)。
自分の子とは「ガンダラムジムジ」とか「アリッタキユカユ」とか(カロンセのうた)、そんなフレーズを親子二代で大いに楽しませてもらった。
さて、そんな数ある子ども向けの作品の中でも異色なのが『よるのびょういん』だと思う。
私は当時たぶん3、4歳。どこか怖くて、なぜかこっそりと開くモノクロの写真絵本だった。
中学生に上がる頃に手放して、まもなくそのことを後悔するようになった。
谷川さんの文であること、長野重一さんの写真であることは、大人になってから知った。
私は長野重一さんと仕事を一緒にしていたことがあり、あるとき長野さんに、本を手放したことを後悔していると話した。すると、後日長野さんは私にその本をプレゼントしてくれた。
そのとき聞いたのが、以下の話。
『よるのびょういん』は、主人公の少年が盲腸炎で救急搬送され緊急手術を受けるストーリーだが、盲腸炎の原因(都市伝説)について触れるくだりがある。
この都市伝説、「ぶどうの種を飲む」なのか「すいかの種を飲む」なのか、制作時に谷川さんと長野さんで意見が分かれたそうだ。
どちらが谷川さんの意見だったか忘れてしまったが、ふたりとも、遠い空の上の人になってしまった。たくさんの作品を残して。