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いま必要なのは信長か?秀吉か?家康か?

▼▼今の日本はどんな状況か?


出典:「早わかり グラフでみる長期労働統計 給与」労働政策研究・研修機構
出典:「早わかり グラフでみる長期労働統計 物価」労働政策研究・研修機構
出典:「国民経済計算年次推計」内閣府

▼55年から73年までの「高度経済成長期」

・平均、設備投資上昇率20%、給与上昇率10%が支えた。
・人口増加、給与上昇、製造業が大半で、内需を刺激する財政政策と金融政策が有効に機能した。
・特に物価上昇率(上図黒面)を上回る給与上昇率(上図ピンク面)で、内需景気が頻発した。

▼74年から91年までの「安定成長期」

・第1次オイルショックで73年12%、74年24%、物価が上昇(上図黒面)したため、給与上昇率・消費支出上率・開業率ともピークアウトし、内需の成長に陰りが出てきた。
・給与抑制・設備投資抑制・借入抑制の「減量経営」が始まり、日本企業の成長を妨げる経営スタイルが徐々に強まっていきます。
・しかし、未だ生産年齢人口は増加中で、給与も増えていたので、積極財政と金融緩和でバブル景気を生みだせました。もっとも、一般的なイメージと異なり物価上昇率はバブル景気でも3%程度で、景気循環的には通常の範囲内でした(土地と株が異常に上昇したため「バブル」と呼ばれたのです。)

▼92年?から現在まで「失われた~年」

・一般的にはバブル景気が終了する92年から「失われた~年」が始まったと思われています。
しかし、93年から97年までは「カンフル景気」で、給与はわずかながらも上昇し、日本の国際競争力も4位までに止まっていたのです。細川・羽田・村山・第1次橋本政権下の「カンフル景気」は、適切な政策対応(金利引下げと積極財政)によるもので、上記図でも物価上昇率を上回る給与上昇率で、企業設備も消費支出が増加しているのがわかります。

・実際「失われた~年」が始まったのは、97年からと考えます。
この年から給与が上昇しなくなり、消費支出も無くなったことが上記図で明白です。国際競争力も4位から17位へ急落しました。
97年、アジア通貨危機による輸出減少や金融機関の破たんによる金融システムへの不安が高まり、第2次橋本政権下で緊縮財政が始まったのです。


▼▼90年代中盤以降、「財政・金融政策による内需喚起策」が効かなくなり、「金融緩和による円安」しか景気を良くできなくなった

90年代中盤以降、景気感応度(景気変動幅)と内需循環が弱くなったため、積極財政と金融緩和による内需喚起策の効果が弱くなりました。
小泉政権下の「いざなみ景気」も第2次安倍政権下の「アベノミクス景気」も金融緩和による円安政策でした。

▼戦後の景気拡大期間まとめ

景気拡大期間は以下の通りですが、90年代中盤以降の景気が実態を伴っていないことは、上記図でも、皆さんの実体験でも、明白でしょう。
特に小泉政権下と第2次安倍政権下の「金融緩和による円安」景気は、エクセレントカンパニーである輸入企業の収益からのトリクルダウンを狙ったものですが、実現したでしょうか?
しかし、景気感応度と内需循環が弱体化している現状では、「金融緩和による円安」でしか景気を喚起できないのです。

第1循環:?
・朝鮮戦争特需パート1
第2循環:51年10月から「27か月」
・朝鮮戦争特需パート2
第3循環:54年11月から「31か月」
・三種の神器(TV・冷蔵庫・洗濯機)製造による設備投資
第4循環:58年6月から「42か月」
・三種の神器製造による設備投資&所得倍増計画
第5循環:62年10月から「24か月」
・東京オリンピック
第6循環:65年10月から「57か月」
・「40年不況」調整後「いざなぎ景気」
第7循環:71年12月から「23か月」
・「日本列島改造論」
第8循環:75年3月から「22か月」
・第1次石油危機後の省エネ景気
第9循環:77年10月から「28か月」
・第1次石油危機後の設備投資増加&「機関車論」による公共投資増加
第10循環:83年2月から「28か月」
・プラザ合意前の円安で大幅貿易黒字「ハイテク景気」
第11循環:86年11月から「51か月」
・円高対策として内需拡大で土地と株の急騰「バブル景気」
第12循環:93年10月から「43か月」
・バブル崩壊後の整局面後の積極的な財政政策と金利引下げ
第13循環:99年1月から「22か月」
・国際的ITバブル&小渕政権の大型経済対策(24兆円の公共投資・定率減税・貸し渋り対策)
第14循環:02年1月から「73か月」
・金融緩和による円安「いざなみ景気」小泉政権
第15循環:09年3月から「36か月」
・エコポイント
第16循環:12年11月から「71か月」
・金融緩和による円安「アベノミクス景気」
出典:「日本経済2007」内閣府

▼景気感応度(景気変動幅)の弱体化原因

・耐久財に比し、消費の過半を占めるサービス(高齢化で保険医療など家計関連サービス)の寄与が高まり、全体として消費の景気に対する感応度が低下=景気変動が縮小。
・安価な輸入品の増加や技術進歩、規制緩和等供給ショックの影響で供給不足による物価上昇が起き難い。
・低インフレ下では名目値の硬直性のため、物価が変動しにくい。
・所得が上がらないままの消費は、限界消費性向に頼るもので限界がある。
・経常利益と設備投資の相関性が、95年以降マイナス。つまり企業利益が出ても設備投資が増えないのです。
・高齢化で比重が高まるサービス業は製造業に比し労働生産性が低く、高齢者雇用が多い産業の労働生産性も低い。
出典:「景気循環の特徴とその変化」日本経済2004内閣府
出典:「高齢化・人口減少の経済への影響」平成20年度年次経済財政報告

▼内需循環弱の体化原因

・雇用者報酬のウエイトが90年代半ばにピーク(97年団塊世代賃金最高値)。
・公共投資は96年に45兆円でピークアウト。現状はその4割減のまま。
・生産年齢人口も95年ピークアウトし、00年以降は急減。
・国内需要は非正規(パートや派遣・請負)と機械化で賄われ、生産年齢人口や世帯が減少。マクロの所得、貯蓄、投資も、経済成長ほどには伸びなくなった。
・増え続けている対外金融資産や配当金収入などの「第一次所得収支」は、GDPには含まれず、利益は海外で再循環される。
出典:「公共事業関係費の方向性」財政健全化計画等に関する建議(平成27年6月1日 財政制度等審議会)
出典:「人口減少時代における対外経済構造の変化と課題」日本経済2019-2020内閣府
出典:「景気循環の特徴とその変化「3.労働市場と企業部門における構造変化」(企業部門門における変化)」日本経済2004内閣府


▼▼企業の衰退期ともいえる現在の日本の指導者として、信長・秀吉・家康の誰がふさわしいか?

景気感応度(景気変動幅)と内需循環が弱くなり、需要喚起策の効果が小さく短くなっている現在の日本は、企業の成長サイクルでいえば衰退期です。
企業の成長サイクルに三英傑の流れを組み合わせると、導入期から成熟期までがピッタリ一致することは、前回の記事で紹介しました。
では、衰退期には誰がふさわしいのか?つまり現在の日本の指導者は誰が適任なのか?ここで考えてみたいと思います。

▼トライ&エラーの得意な織田信長か?短期成果力&スペシャリスト活用力のある豊臣秀吉か?状況分析力に優れた徳川家康か?

・各人の能力評価は前回の記事をご覧ください。

▼衰退期に求められる経営者像

・新たな事業ポジションを獲得しなければならない。
➨トライ&エラーの得意な信長
・顧客創造を財務戦略に組み込むことで、目標の数値化と評価指標の設定。
➨データ分析力に優れた秀吉
・基幹技術を基準とした無理のない経営資源配分
➨安定感の家康
・ミッション優先で上司部下概念なく上位下達無しに少数エリートを扱える➨スペシャリスト官僚制度を運営できた秀吉

衰退期になると、市場縮小に合わせた選択と集中で事業を絞り込む必要があります。一方で、その縮小した人員で新たな事業の萌芽を見つけなければなりません。さらに、赤字・資本欠損・債務超過の解消など、短期に成果を出し続けなれば、債権者や銀行からの信用を失い、企業は直ぐに倒産してしまいます。
従って、短期に成果を出すのに優れ、アイデアマンで、数値にも強い豊臣秀吉が衰退期の指導者には最適と考えます。良くも悪くも優れた財務官僚をコントロールするには人たらしで頭の良い秀吉がうってつけです。関白就任時、頭の固い公家衆を秀吉は上手くコントロールしました。

信長も家康も長期的ビジョンの形成に優れており、家康はその実現力も備えています。しかし衰退期には時間がありません。少数精鋭で新しい生活の種を短期で見つけ事業化しなければならないのです。日々細かな数値に目を通し即判断することが求められます。現金も少なくなり信用も堕ちているので、信長のように何度もエラーしていてはお金がもちません。

▼記事一覧


▽日本経済


日本経済の転換期とは
日経平均株価最高値の構造
産業構造
日本の未来
GDP4位転落
減量経営で内需が消滅
高度経済成長はマクロ的偶然の産物
潜在成長率からみる日本の未来
日本経済の足を引っ張っているのは?
日本経済は3段階で消滅した

▽地方経済


人口維持目標値と人口急減信号
横浜市VS名古屋市
埼玉県VS千葉県VS神奈川県
仙台市VS広島市
札幌市VS福岡市
豊田市VS?
地方衰退の構造
2045年愛知と熊本が最強に
富める市区町村の条件
東京一極集中=GDP45%
九州が最強国家?

▽企業経営


ゼネコンVS大工
バスVSトラック
道の駅成功の法則
経営戦略のまとめ
ビジネスモデルまとめ
経営に必要な数値まとめ
組織のまとめ
イノベーションまとめ
生産性のまとめ
マーケティングのまとめ
儲かる職業と儲からない職業。理由は明白
儲かる業種ランキング
日本産業図鑑
あるべき企業経営とは❷
あるべき企業経営とは❶
進化に対応できない日本企業

▽その他


いま必要なのは信長・秀吉・家康の誰か?
信長・秀吉・家康は当然の流れ
世界経済を動かす法則
豊かな国なる法則

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