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日記

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孤独、性欲、

孤独というものがついてまわる人生だった。
その恐ろしい感情は、いつでも私の行動の動機となった。孤独でいないために誰かとのつながりを求めたし、孤独でいないために誰も手放さずに生きてきた。孤独という感情に、縛られる人生だった。
しかし、私は孤独を愛していないわけではない。孤独であることはとてもきれいで、とびきり大切なもののような気もした。誰かと一緒にいるときでも、孤独は私を襲ったし、私は孤独を愛してい

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向こうとこちらと、その真ん中に

少し肌寒い風が、夏が終わったことを教えてくれる。いつかの日も、こんなに月がきれいだったように思われる。
窓際の一輪挿し。きらめく真っ青な彼岸花が胸をうつ。今日私が見上げる月も、きっと遠いところで君も見上げているのだろうと思う。私に霞む扉を見せてくれた君。
よく焼いた、というより完全に焦げているトーストが好きだった君は、この月を見てどんな言葉と戯れてばらばらの音にいのちを与えるのだろう。私は、君のこ

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停滞する

素敵なことだと思う。知らないということ。
私はみんなのこれまでを知らないし、今後知ることもないだろうと思う。
私はかわいくない人間で、おそらく生きていることで喜んでくれる人もいるのだろうがそれは少数で、生きていないほうがよかったと思う人も少数、どうでもいい人が大多数なのだと思う。
恐ろしく臆病で何もできない。決断、人付き合い、大きな声で話すことさえ。
私は、生きていることが絶対に正しいことだとは言

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おとな

誕生日おめでとう。
この言葉からはじめよう。
君は20歳になるんだ、成人してしまうんだね。
だけど、君はずっと大人だった。成人してしまうよりもずっと。成長を恐れないし、変化にも果敢に順応しようとする、そんなとても強い人だった。
成人してしまう、と私が言ってしまうのは未だに私が子どもだから。子どものままでいたいと思うくらいには子どもだから。
君とくだらない話をして私たちで飽和した真夜中の空が白むのを

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君のこんぺいとう

自分が今こんなに悲しく沈んでいるのは、おそらく好きな人と結ばれなかったからじゃない。あれほど私を愛してくれて、信じてくれた君を失望させてしまったことが悲しいのだと思う。自分が、自分を守るためにしたことは結局のところ裏目にしか出ず、果敢に立ち向かう彼は選ばれた。私には嘘などつけなかった。いつでも誠実ではいられないこと、その点において私は彼に劣っていた。
寂しさは恐ろしいものである。いついかなる状況で

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