銀貨

厭世が煙にとけない

銀貨

厭世が煙にとけない

マガジン

  • 日記

  • さくさくしていたころの話

  • まるまるまる

    どこまでも膨らんでいくわたし

最近の記事

ようやく

人の多い街が嫌いだ。 と思いながら、今日もバスに揺られる。 手にはスマートフォンと、両耳にイヤホン。 今、彼らの世界は5cm×10cmのディスプレイと、聞こえてくる音声のみなのだろう。 いつもと同じように流れていく景色を眺める。 きょうだいらしい会話が聞こえてくる。 彼らの指さす先に目を向けると、昨日までは気づかなかった道路沿いの民家に植えてあるりんごの樹が目に入る。 今この車内で、ここにある世界を生きていたのは私だけだと思っていた。 彼らも確かにこの世界を共有してい

    • 孤独、性欲、

      孤独というものがついてまわる人生だった。 その恐ろしい感情は、いつでも私の行動の動機となった。孤独でいないために誰かとのつながりを求めたし、孤独でいないために誰も手放さずに生きてきた。孤独という感情に、縛られる人生だった。 しかし、私は孤独を愛していないわけではない。孤独であることはとてもきれいで、とびきり大切なもののような気もした。誰かと一緒にいるときでも、孤独は私を襲ったし、私は孤独を愛していた。孤独に対する愛は、私の中でピンボールの自我のようなものだった。私自身の感情に

      • 向こうとこちらと、その真ん中に

        少し肌寒い風が、夏が終わったことを教えてくれる。いつかの日も、こんなに月がきれいだったように思われる。 窓際の一輪挿し。きらめく真っ青な彼岸花が胸をうつ。今日私が見上げる月も、きっと遠いところで君も見上げているのだろうと思う。私に霞む扉を見せてくれた君。 よく焼いた、というより完全に焦げているトーストが好きだった君は、この月を見てどんな言葉と戯れてばらばらの音にいのちを与えるのだろう。私は、君のことばを愛していた。 今日の月には、欠けているところがないらしい。ときおり降り出す

        • 停滞する

          素敵なことだと思う。知らないということ。 私はみんなのこれまでを知らないし、今後知ることもないだろうと思う。 私はかわいくない人間で、おそらく生きていることで喜んでくれる人もいるのだろうがそれは少数で、生きていないほうがよかったと思う人も少数、どうでもいい人が大多数なのだと思う。 恐ろしく臆病で何もできない。決断、人付き合い、大きな声で話すことさえ。 私は、生きていることが絶対に正しいことだとは言えないと思う。今、私の周りにはそう思わない人が多い。苦しさの原因がそれでないとは

        マガジン

        • 日記
          5本
        • さくさくしていたころの話
          1本
        • まるまるまる
          16本

        記事

          おとな

          誕生日おめでとう。 この言葉からはじめよう。 君は20歳になるんだ、成人してしまうんだね。 だけど、君はずっと大人だった。成人してしまうよりもずっと。成長を恐れないし、変化にも果敢に順応しようとする、そんなとても強い人だった。 成人してしまう、と私が言ってしまうのは未だに私が子どもだから。子どものままでいたいと思うくらいには子どもだから。 君とくだらない話をして私たちで飽和した真夜中の空が白むのを確認しあった日、君とくだらなくない話をして言葉の糸が空回った真夜中の冷たくなって

          1

          「Uって上手に書けないんだよね」 そんなことを言う彼女を後目に、僕はペンを走らせる。 きっといつまでもそうしていくのだろうと思っていた。偶然のように出会ったのは2年前のことだ。 死ぬことばかりを考えていた僕に声をかけてきたのは彼女で、いつまでそんな「日常」で揺蕩っていられるだろうと、想像もしなかった。そんな揺らぎなど存在しなかった。それほどに確固たるものでその日常は繋ぎ止められていた。

          君のこんぺいとう

          自分が今こんなに悲しく沈んでいるのは、おそらく好きな人と結ばれなかったからじゃない。あれほど私を愛してくれて、信じてくれた君を失望させてしまったことが悲しいのだと思う。自分が、自分を守るためにしたことは結局のところ裏目にしか出ず、果敢に立ち向かう彼は選ばれた。私には嘘などつけなかった。いつでも誠実ではいられないこと、その点において私は彼に劣っていた。 寂しさは恐ろしいものである。いついかなる状況であっても追いかけてくる、恐ろしい動機である。寂しさに対する恐怖はいつからか私に染

          君のこんぺいとう

          私は人間をもっと理性的な生き物だと思っていた。どの小説を読んでも、愛とかセックスとか行き着くところは結局そこだ。それがどうしようもなく悲しくて、私は絶望する。もしそれが人間の感情の真髄なのだというのなら、私は世界と人間に見切りをつけて私を辞める。

          私は人間をもっと理性的な生き物だと思っていた。どの小説を読んでも、愛とかセックスとか行き着くところは結局そこだ。それがどうしようもなく悲しくて、私は絶望する。もしそれが人間の感情の真髄なのだというのなら、私は世界と人間に見切りをつけて私を辞める。

          生きていることと、生きていくことは異なる。誰と交わっても埋まらない寂しさと孤独感が冷静な思考の邪魔をする。

          生きていることと、生きていくことは異なる。誰と交わっても埋まらない寂しさと孤独感が冷静な思考の邪魔をする。

          楽しければいいのではないか、それが全てなのではないか、楽しさを感じることができなくなってしまったのならそれはもう生の時間の流れを止めてしまうべきなのではないか

          楽しければいいのではないか、それが全てなのではないか、楽しさを感じることができなくなってしまったのならそれはもう生の時間の流れを止めてしまうべきなのではないか

          「案外あっけなかったね」 「正直こわかった」

          「案外あっけなかったね」 「正直こわかった」

          「他人と比較するのは上手だから、今度は自分を過去と比較してみよう」

          「他人と比較するのは上手だから、今度は自分を過去と比較してみよう」

          自信はない、少しずつの確信しかない

          自信はない、少しずつの確信しかない

          まるまるわたし

          2020年8月15日(土) 22:42 成長することはまるくなることと同義かもしれない。まるくなることは諦念を受け入れることと同義かもしれない。 昔はもっていたとげとげ。いろいろなものが引っかかる。引っかかったものが時間に流されて引っ張られる。そしてとげとげもろとも流れていく。 そうして、アイデンティティが時間にとかされていく。 あるいは、時間に流され転がされてまるくなるのかもしれない。諦念、やわらかく受けいれる。 突っかかることをやめた。いちいち引っかかるのをやめた。それが

          まるまるわたし

          幸せリフレーミング、 伴う痛みは誰のもの

          2020年8月10日(月) 09:27 ゆっくりと膨らんでいたわたし、今にもはち切れてしまいそう。少し傷ついたくらいじゃ割れて萎んでしまわないように、1枚ずつ確実に膜を張ってきた。 今ついにわたしは運命の岐路。そのレバーを握るのはわたしじゃない。 暖味で良し、ぬるま湯にぷかり、と過ごしてき た。愛を確かめるために明確な関係性なんて必要ないのに。わたしたちは再決定されようとしている。距離と倣慢によって、これまでの関係を続けられない状況に立たされてしまった。 わたしの弱さまで愛し

          幸せリフレーミング、 伴う痛みは誰のもの

          都会は星が見えにくいらしい。流れ星も例外では無いはず。なのにどうしてこんなに流れ星にあふれているのだろう。眼下にはおびただしい数の流れ星が走っている。自分自身の生を輝きへと昇華して精一杯にきらきらする。美しいと感じる。私は未だに輝きを放てるほどに生を全うできていない。

          都会は星が見えにくいらしい。流れ星も例外では無いはず。なのにどうしてこんなに流れ星にあふれているのだろう。眼下にはおびただしい数の流れ星が走っている。自分自身の生を輝きへと昇華して精一杯にきらきらする。美しいと感じる。私は未だに輝きを放てるほどに生を全うできていない。