「ナチュラルボーンチキン」を読んで|読書感想文
40代のラブストーリー的な小説。
もし現実にいたら、好きになりそうな男性が「ナチュラルボーンチキン」に登場した。久しぶりに私のなかの女性ホルモンが疼いてしまった。
この小説は紙の本はなくアマゾンオーディブルのみで聴くことができます。紙の本もぜひ出版してもらいたいほど気に入った作品。
あらすじ
45歳バツイチの浜野文乃は出版社の労務課勤務で働いている。毎日決まった時間にするべきことをこなすルーティーン生活を送っている。お昼休みに食べるお弁当も晩御飯もすべてルーティーンで決まっている。
友達も家族とも交流のない自分の毎日の生活が味気ないことも分かっている。それでも淡々と毎日を過ごし、老いていくことを望んでいた文乃。
ある日、上司から編集部の平木直理が捻挫を理由にいつまでも在宅勤務ばかりで出社しないから、様子を見にいくよう命じられる。
それがきっかけで自由奔放な直理とランチを共にするようになる。文乃のルーティーン生活が少しずつ変わっていく。
この小説がおすすめな人
●40代、50代の人
●昔バンドをやっていた人またはライブハウス通い好き
●これから自分のすすむ人生がなんとなく見えている気がする人
●現実的にありそうな大人の恋愛小説を読みたい人
評価
感想
まず登場人物の名前に注目してもらいたい。
・平木直理=ひらきなおり
小説のなかでも突っ込まれるが、ひらきなおりだよ?
そしてもう一人、あるバンドのボーカル
・かさまし まさか
登場人物の名前で笑わせるだけでなく、この小説は言葉遊びがふんだんに使われている。著者の金原ひとみさんが心から楽しんで作品を作っている感がひしひし伝わってくる。
主人公について
45歳の主人公文乃さん。変化のない日々を過ごして、このまま老いていくんだろうなと考えている。私も同じように考えることがあり共感しかありません。文乃さんの言葉を引用します。
そんな文乃さんの日々を大きく変えてしまうある出来事があり、彼女はさまざまな事について頭をめぐらすように変化していきます。頭の中でふと感じたことに立ち止まり、彼女は言語化して、深く理解していこうとする作業がとにかく愛おしい。文乃さんとお友達になりたい!
40代の恋愛事情
主人公の文乃さんはある男性とLINE交換をしてメッセージのやりとりをするようになる。
異性とのLINEのやりとりにどう返信していいか、いちいち悩む文乃さん。でもこれって10代だろうが、20代だろうが同じことで悩むよね?
その男性が仕事で出張先からLINEが届く。
「カニ好きですか?」
それに対して文乃さんは
とタイプするも消してしまう。
なぜなら、カニ女だと思われたくなかったからだ。
それで文乃さんは
大好きから好きにかえてみる。でもこれだと冷たい感じがして、またうちなおす。
次に句読点をいれてみる。ここでまた彼女は悩む。
気になる異性に返信するタイミングや内容に対して、異常に考えすぎてしまうことありますよね?カニ女と思われたくない文乃さんの最終的な返事が気になる方はぜひ本作を聴いてみてください。
主人公が恋におちた相手の言葉
文乃さんが好意を持った相手の言葉がすごく良い。着飾らない言葉なのに、心が揺れ動いてしまいました。
文乃さんが彼に電話をかけることに、とても勇気が必要だと打ち明けると
40代のふたりの会話はいつも敬語です。でも、ちっともよそよさしさがないのです。
文乃さんが私なんて45歳で、ただ年老いていくだけだと言えば、彼はこう言いました。
ほんとその通り。嘆くことも無理することもなく、自分に出来ることをして老いていく。
いやあ、本当に聴いて良かった。40代以降の恋愛も素敵だなあと思いました。
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