「火事との遭遇」
黒煙が
火事場誘い
野次馬へ
観てるだけ
無力な己
見せられた
煙突から出るような
黒い煙がもくもくと
青い空を占領して
黒い風船を漂わせていた
不吉な煙の出どころへ
駆け寄れば
二階の家屋から
勢いよく立ち昇る
まだ警察も消防も
来ていない出火し始めにも関わらず
何度も爆発音を立てながら
どんどん火力を上げていく
携帯電話で声高に訴える近隣住民
一階の薬局の薬剤師が
ガスを止めてと住民に叫ぶ
傍観者は何もせず立ちつくす
何も知識も技術もないと
何も出来ないのだな
そのつもりはないのに
野次馬へ成り下がる
風に背を押されて
黒煙とともに流されながら
遠くから聞こえはじめたサイレン
自転車で駆け抜ける警官
まだ炎は消えなくとも
じきに鎮火していくだろう
不安と安堵に心を占拠されながら
意味を問う
何故私はこれを見たのか?
警鐘か
それとも我が身燃やすほどに
無くなるものがあるのか?