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「死んだあの人」
突然告白された
「あなたを息子のお嫁さんにと思ってたの」
何も言えなかった
何度か買い物に来てたあの頃を思い出した
肌は白くて透き通るような笑顔
丁寧な口調と物腰
作曲家で繊細そうなあの人は
三十一歳でその生涯を閉じた
お客様は口を濁して
死因は言わなかった
それとなくは伝わった
心を病んでいたそうだ
しばらくウチの店には来なかった
心の傷が癒えるには
三年の月日が必要だった
我が子に先立たれるなど想像を超える
私は思う
もし私と結婚していたらと
あの人は生きていただろうか
苦しみに寄り添ってあげられただろうか
あの頃の私には
少し重かったかもしれない
けれど今なら
良い友達になれたかもしれないと