
「悔し涙」
店長が泣いていた
私を裏へ呼び寄せて
思いをぶつけてきた
涙と感情を溢れさせて
驚きに浮つきながら
羨ましかった
人前で泣けるなんて
可愛い人だな
励まそうと腕にふれた瞬間
ドキッ
あまりの柔らかさに
驚いて退いてしまった
女性であることを
意識してしまった
まるで自分が
男になったかのように
店長は言った
「完全に舐められて悔しくて」と
あぁそうだ
ここは職場だった
悔しさなんて
そんな感情もともとなかったから
穏やかに眺める
そんな真似事をしたこともあったなと
戦いをしなければ
悔しくもない
今しているのは
戦いの真似事だから
問題にもならないことと
思っていれば
問題などは
生まれない
次の日には
何事もなかったかのように
問題はなくなった
初めからそんなものはなかったのだけれど