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自分が発達障害であることを忘れる〜「発達障害」と診断された人のための「発達障害」の説明書8〜

一緒につくるマガジン

【「発達障害」と診断された人のための発達障害の説明書】と題して、マガジンの連載をしている。

このマガジンは、『一緒に作るマガジン』という設定。

「受け身ではない、主体的な学びの機会を作りたい」
という思いからの『一緒に作るマガジン』。

マガジンの作成に読者が参加してもらうことで、きっと、受け身ではない、主体的な学びの機会が作れる。

もし何か質問が出たら、次回はその質問について取りあげた記事を書きたいし、もし自分の記事を取り上げても良いという方がいれば、次回はそれについて一緒に考えたい。

そんな風に、発達障害のことについて読者と一緒に考え、理解を深めていきたい。

ここでの皆さんとのやりとりこそ、リアルな「発達障害」の説明書になり得ると考えている。

「発達障害」の説明書、よかったら、一緒に作りましょう。

発達障害の治療UPDATE

今回からADHD編に入る予定であったが、前回の記事にコメントをいただいて、少し考えさせられることがあったので、発達障害の治療についていま考えていることを改めてまとめてみたいと思う。

これまで何度も書いているが、発達障害の治療とは以下のような流れで展開していくことが多い。

基本的にはこのような流れで進んでいくものだろうという思いは変わっていないが、この流れではうまくいかない人もいるかもしれないと思った。

本マガジンで発達障害について書き進める中で感じたこと、
それは、現在発達障害の人に対して行われている治療は、発達障害(発達特性)に焦点が当たりすぎているのではないかということ。

発達障害に対する治療なのだから、発達障害(発達特性)に焦点が当たるのが当たり前だと言う人もいるだろう。

なぜ、発達障害(発達特性)に焦点が当たりすぎてはいけないのか。

それは、皆が発達障害に囚われすぎてしまっているからである(自戒をこめて)。

発達障害の囚われからの解放

前回の記事で、発達特性は、その人の特徴のほんの一部を示しているに過ぎないと述べた。

一人の人間の中には、様々な特徴がある。

たとえば、気配りが上手だったり、人当たりが柔らかかったり、容姿に恵まれていたり、お金持ちだったり、高学歴だったり。

あるいは短所と表現するとしたら、今挙げたような特徴とは逆方向の特徴もあるかもしれない。

そのさまざまな特徴の中のひとつに、発達特性がある。

発達特性は短所にも長所にもなり得るが、いずれにしても一人の人間が持つ特徴として、発達特性という特徴はほんの一部にしか過ぎないということである。

なのになぜか、社会や治療者からは、その人が発達障害そのものであるかのように、まるでその人のすべての特徴は発達特性であるかのようにみなされることがある。

そして、カウンセリングでも発達特性を話題にする。

当事者は当事者で、日常生活で発達特性に思い悩み、発達特性のことばかりを考える人がいる。

それは、当事者も含めた社会全体が、発達障害に囚われている状態と言える。

何度も言うように、発達特性は、一人の人間を構成する特徴の、ほんの一部を表しているにすぎない。

発達障害の診断を受けていたとしても、その人が持つ特徴のほとんどは、発達特性とは直接的には関係のない特徴なのである。

発達特性だけでなく、その他の特徴もすべて含めて自分である。

つまり、全人的な自分、トータルな自分で、自分らしく生きられることこそが大切なのだと思う。

だからやっぱり、発達特性だけに焦点が当たった状態(発達特性に囚われた状態)は、自分らしい状態とは言えない。

そんな発達障害への囚われから抜け出すためのアプローチ、自分らしくいられるためのアプローチがいま必要だと感じている。

自分が発達障害であることを忘れる

そのために、私は発達障害であることを忘れるアプローチを提案したい。

ただ忘れろと言われて忘れられるものではないし、きっと完全に忘れることなんてできない。

私が提案したいのは、自分が発達障害であることを忘れる時間を増やしたいということ。

つまり、発達障害(発達特性)に囚われている人に対して、発達特性以外の特徴について考える時間を増やし、相対的に発達障害に囚われる時間を少なくしていきたいということである。

そうして、発達特性だけに囚われないトータルな自分で、自分らしく生きられるようになることを目指した治療を提供したい。

発達特性以外に焦点を当てるやりとり。

具体的には、以下のようなやりとりを想定している。

相談者(以下Cl)「私、ASDだから空気が読めないんです。だから仕事で上司や同僚にうんざりされてしまうんです」

カウンセラー(以下Co)<そうなんですね。ASDだから空気が読めないと感じていらっしゃる。Aさんはいつでもどこでも、常に空気が読めないのでしょうか。ご自身の空気の読めなさというのをあまり感じない場面というのはありますか?>

Cl「そうですね…、友達といるときはあまり感じないかも」

Co<友達といるときは「空気が読めない」ことをあまり感じないんですね。それはなぜなのでしょう>

Cl「うーん、友達に恵まれてるからかなあ」

Co<友達に恵まれている。それはAさんの強みというか、Aさんという人間の、良い特徴ですね>

Cl「小さいころから友達には恵まれてきたんです」

Co<そうですか。友達に恵まれてきた。Aさんがそう思うようになったきっかけというか、何かエピソードとかはありますか?>

Cl「たしか小学生の時に……」

と、このような形で、発達特性について話題にするのではなく、たとえばAさんの『友達に恵まれる』という特徴に焦点を当てた話を聞いていくということ。

Aさんが自分の良い特徴について話している間、Aさんは発達特性の囚われからは解放されている。つまり発達障害について忘れている状態であると言える。

発達障害に囚われた時間を少なくして、自分が自分らしく、元気に生きられるようになる。

そんな治療が、
発達障害ブームの今だからこそ、
皆が発達障害に囚われている今だからこそ、
必要だと感じた。

それが、いまの自分にとっての最先端の気付きである。

いろんな人とやりとりをしながら、
自分で噛み砕いて考えながら、
これからも常に、自分の中の最先端の気付きを更新していきたいと思う。

次回予告

次回こそは、ADHDについて書いてみようと思う。

お時間のある方は是非、よろしくお願いいたします。


▼【「発達障害」と診断された人のための発達障害の説明書】


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