ADHD編のはじまり〜「発達障害」と診断された人のための「発達障害」の説明書9〜
一緒につくるマガジン
【「発達障害」と診断された人のための「発達障害」の説明書】と題して、マガジンの連載をしている。
このマガジンは、『一緒に作るマガジン』という設定。
「受け身ではない、主体的な学びの機会を作りたい」
という思いからの『一緒に作るマガジン』。
マガジンの作成に読者が参加してもらうことで、きっと、受け身ではない、主体的な学びの機会が作れる。
もし何か質問が出たら、次回はその質問について取りあげた記事を書きたいし、もし自分の記事を取り上げても良いという方がいれば、次回はそれについて一緒に考えたい。
そんな風に、発達障害のことについて読者と一緒に考え、理解を深めていきたい。
ここでの皆さんとのやりとりこそ、リアルな「発達障害」の説明書になり得ると考えている。
「発達障害」の説明書、よかったら、一緒に作りましょう。
ADHDって?〜診断基準を改めておさらい〜
今回から、【「発達障害」と診断された人のための「発達障害」の説明書〜ADHD編〜】に入る。
まずは、ADHDの診断基準など、基本的な情報についておさらいしていきたいと思う。
ADHDという言葉がすでに浸透してきているが、日本語では「注意欠如多動症」という訳があてられている。
ADHDとは、不注意、多動、衝動性を主な症状として、それらの症状が生活や学業に支障をきたしている時に診断されるものである。
診断基準としては、以下のようになっている。
長いので、さらっと眺めてもらえればと思う。
診断基準
A .(1)および/または(2)によって特徴づけられる,不注意および/または多動症‒衝動性の持続的な様式で,機能または発達の妨げとなっているもの:
(1)不注意:以下の症状のうち 6 つ(またはそれ以上)が少なくとも 6 カ月持続したことがあり,その程度は発達の水準に不相応で,社会的および学業的/職業的活動に直接,悪影響を及ぼすほどである.
(a)学業,仕事,または他の活動中に,しばしば綿密に注意することができない,または不注意な間違いをする.
(b)課題または遊びの活動中に,しばしば注意を持続することが困難である.
(c)直接話しかけられたときに,しばしば聞いていないように見える.
(d)しばしば指示に従えず,学業,用事,職場での義務をやり遂げることができない.
(e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である.
(f)精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける,嫌う,またはいやいや行う.
(g)課題や活動に必要なものをしばしばなくしてしまう.
(h)しばしば外的な刺激によってすぐ気が散ってしまう.
( i )しばしば日々の活動で忘れっぽい.
(2)多動症および衝動性:以下の症状のうち 6 つ(またはそれ以上)が少なくとも 6 カ月持続したことがあり,その程度は発達の水準に不相応で社会的および学業的/職業的活動に直接,悪影響を及ぼすほどである..
(a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする,またはいすの上でもじもじする.
(b)席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる.
(c)不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする.
(d)静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない.
(e)しばしばじっとしていないまたは“まるでエンジンで動かされているように”行動する.
(f)しばしばしゃべりすぎる.
(g)しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう.
(h)しばしば自分の順番を待つことが困難である.
( i )しばしば他人を妨害し,邪魔する.
B .不注意または多動性‒衝動性の症状のうちいくつかが 12 歳になる前から存在していた.
C .不注意または多動性‒衝動性の症状のうちいくつかが 2 つ以上の状況(例:家庭,学校,職場;友人や親戚といるとき;その活動中)において存在する.
D .これらの症状が,社会的,学業的,または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある.
E .その症状は,統合失調症,または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく,他の精神疾患(例:気分障害,不安症,解離症,パーソナリティ障害,物質中毒または離脱)ではうまく説明されない.
ひとつひとつの項目を説明することはしないが、(1)に不注意の項目、(2)に多動・衝動性の項目が並んでいる。
つまり、『不注意』と『多動・衝動性』で別の診断基準があるということである。
ADHDと診断された人の中にも、
・『不注意』の基準は満たすけれど、『多動・衝動性』の基準は満たさない人
・『多動・衝動性』の基準は満たすけれど、『不注意』の基準は満たさない人
・『不注意』『多動・衝動性』のどちらの基準も満たす人
という3つのタイプの人がいるということである。
ADHDとだけ診断されて、自分がどのタイプかを医者から説明されていないという人も多い。
不注意優勢型か、多動・衝動性優勢型かで、生活上の工夫は変わってくる。
自分がどのタイプかを意識しておくことは、自己理解と生活の質の向上に関わってくるかもしれない。
ADHDの治療とは?
そして、ASDの記事でも取り上げたが、注目して欲しいのはDの項目。
D .これらの症状が,社会的,学業的,または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある.
不注意や多動・衝動性の症状があっても、社会的、学業的、職業的にうまくいっていれば、厳密にはADHDの診断はつかないということである。
だからやっぱり、ADHDであっても、治療で目指すことは、ADHD特性をなくそうとすることではなく、ADHD特性があっても、その人が、自分らしく、生き生きと生活できるようになること。
薬を使えばすべて解決というわけではない。
私が今考えているのは、前回の記事にも書いたが、発達障害に囚われすぎない、発達特性以外のその人の特徴も一緒に見つけていけるような、そんなカウンセリングを提供したいということである。
次回予告
ADHDの診断基準についてレビューした。
やや抽象的な話で、イメージが湧きづらい部分もあったかもしれない。
次回は、『不注意』と『多動・衝動性』というADHDの特徴について、もう少し詳しく、具体的なところをみていこうと思う。
『不注意』『多動・衝動性』は、それぞれどんな困りにつながりやすいのか。
生活場面で困らないために、どんな工夫ができるのか。
そのあたりの具体的なことについて次回取り上げていきたいと思う。
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