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デジタルネイティブとオンライン教室の相性

「デジタルネイティブ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。オンライン教室をやっていると、よく耳にする言葉です。調べてみたところ、どうやらこの言葉は80年代からあるらしく1)、僕の世代がちょうどデジタルネイティブの最初あたりらしい…(といっても、中学生までは連絡手段は家電だけでしたし、祖父の家の電話は黒電話でしたけれど)。

そして、96年以降に誕生した世代が「ネオ・デジタルネイティブ」と呼ばれるそうです。アリ窓の生徒はみんな2000年以降、しかもグループクラスの生徒はみんな2010年以降の世代。もう、超ネオ・デジタルネイティブじゃないか!!

僕たちが、オンライン教室「アリストテレスの窓(アリ窓)」を立ち上げてから2年以上が経ちました。この2年、本当にいろんな子供とオンラインで会ってきました。そして、今、これからの世代の彼らとオンラインの相性の良さをとても感じています。今回は、僕が感じたその相性の理由について書きます。

1)将来のオンラインコミュニケーションへの備え

 僕がこの教室を始めた時、Zoomというツールが有名になり始めた頃でした。僕も何度か会議で使った程度、どんな機能があるのかを調べるところからだったのを覚えています。今でこそ学校でオンライン授業を経験している生徒が大半ですが、当時はまだやったことがないという子も少なくありませんでした。

 ところがその適応の速さたるや。授業中にどんどん吸収して慣れていくんです。あれには驚きました。数回後には「こんな機能あるよ」と教えてくれる程。「すげー!ありがとう!!」というと、嬉しそうにして、また次の回にいろんな機能を教えてくれた子もいました。

 当然ですが、子供は新しいツールを誰よりも使いこなすことができる存在です。アリ窓の生徒は、小学生のうちから、オンラインでコミュニケーションをとり、みんなで議論をしたり、意見を言ったりを繰り返していきます。今の大人が、大人になって初めて経験することを、彼らは小学生で経験しています。オンラインでどうやって人に思いを伝えるか。どう人の心を動かすか。それらは、これからの時代必ず必要なスキルとなってくるでしょう。そういう時代にオンラインで話す場は、子供と非常に相性がいいと感じています。

2)デジタルはおもしろい!

 たまに、オンラインの企業研修を手伝うことがあるのですが、皆さんオンラインでの対話に苦労されているのを伺います。そして結局、多くは「やっぱりリアルがいいよね。」で議論を終えてしまい、オンラインの可能性や使い方の探求がないように感じます(そんな時間もないのでしょうが)。その点、子供たちは誰よりもツールを楽しむことができます。その使い方の上手さはどんな立派な会社の人でも、敵わないでしょう。

 彼らが大人になる頃には、オンラインでの対話やオンラインでの人間関係、完全オンライン勤務などが当たり前の時代です。僕たちが感じている不都合も、楽しむ力を持っている子供たちにしたら、些細なことです。楽しめるうちに、慣れていくことが大事だと思っています。

 僕たちは、子供のうちは思いっきり楽しむ経験をしておくべきだと考えています。幼稚園や保育園で感じていた楽しい!というワクワクが、どうしても失われてしまう日本の小学生ですが、それでは勿体無いです。人間が元々持っている「楽しむ」スキルは、イノベーションの鍵であり、幸せに生きるスキルでもあると思います。

*「楽しむ」を育てると、イノベーションを産む
子供たちは、オンラインツールについて「こんな機能増えてる!!」「これやってみようよ」「これ使えない?」どんどんと取り入れていきます。その原動力は「おもしろい」という感情です。「おもしろい」という感情ほど革新性のあるものはありません。おもしろいから、調べてみる。おもしろいから、いじってみる。おもしろいから、壊してみる。おもしろいから、観察してみる。おもしろいから、やってみる。そうしていろんな行動やチャレンジが生まれるから、「予想外」で「ギャップ」があって「変化」があるものを生み出す。それがニーズや市場、世論の変化とマッチするものだったら?まさにイノベーションです。考えただけでワクワクするじゃないですか!!デジタル社会という未来がわかっているなら、それを利用する技術も今から身につけてもいいと思います。

楽しむは力になる!

3)利害関係から離れた場を持つこと

 オンラインの場は、ある種のバーチャル空間です。実際に目の前にいないのに、話すことができるわけです。これが、子供の心にもいい影響があると考えています。

 アリ窓では、子供たちはそれぞれの地域からオンライン空間に入ります。そこでの出来事は、彼らの生活空間には影響を与えません。「こうなったら学校に行きにくくなるかな」とか「こんなこと言ったら恥ずかしいかな」などと思う必要がありません。学校は、なかなか逃げることができませんが、オンラインであれば即座に逃げることができます。僕たちは、オンラインのその特性が心理的安全性に大変寄与していることを感じています。

 「オンラインなら手を上げられる」とか「実はいじめにあっているんだ」とか、普通ではなかなか話せないことや、打ち明けられないこともオープンにできます。これはサードプレイス(第三の場)と言いますが、普段の自分の利害関係を超えた場に属することが人生を充実させると言われています。

 子供にとって、オンラインでサードプレイスを持つことは何ら違和感のあることではありません。ふと生き抜く場としてオンラインを利用したらいいと思います。

4)オンラインのデメリットは?

当然、そんなオンラインにもデメリットはあります。「人肌を感じられない」「空気が伝わらない」「身体性が少ない」など、幾つも上げることができます。オンラインコミュニケーションで苦労された方であれば一つ二つすぐに思い浮かぶではないでしょうか。

 僕たちは、それらを総じた時、オンラインの最大のデメリットを「体験」が少ないこと捉えています。上記のような体験は子供の生育にとって欠かせない要素です。オンラインでは、人と同じ空間にいたときに感じる一体感や、ちょっとした雑談でのやりとり、身体コミュニケーションなど、人間としての不可欠なコミュニケーションが取れません。

 もし、この世界がオンラインだけになってしまったら、きっと世の中はつまらないものになってしまうでしょう。しかし、心配には及びません。日本には学校組織がしっかりしています。必要な身体コミュニケーションは学校で学ぶことができます。週に1度、数時間くらいどうということはありません。 

 *アリ窓のサマーキャンプ
とはいえ、やっぱり会いたいですから(笑)、アリ窓では夏にキャンプをやります。そこで初めて会うという「体験」をした時、心にいろんな変化が現れます。それはもう本当におもしろいのですが、またの機会に。

5)最後に

 超ネオ・デジタルネイティブの子供たち。ゲームやスマホなど、どう付き合わせるか、課題も多いです。しかし、うまく付き合っていけばきっと子供たちの将来に大きく貢献する経験となることでしょう。どうやって管理するかを考えるのもいいですが、ポジティブに「楽しむ」力を持つ子供に教わりながら、大人も一緒に楽しみ、向き合っていけたら最高なのではないでしょうか。


<参考資料>
1)電通報, 世代論から紐解く「オーディエンス・インサイト」~ネオ・デジタルネイティブの誕生~, https://dentsu-ho.com/articles/371, 2010/9/1

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