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海辺の映画館の佇まいに趣深さを感じる一方で、オリヴィア・コールマンの振り切った演技に圧倒される『エンパイア・オブ・ライト』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:13/26
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Empire of Light
  製作年:2022年
  製作国:イギリス・アメリカ合作
   配給:ディズニー
 上映時間:115分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

厳しい不況と社会不安に揺れる1980年代初頭のイギリス。海辺の町マーゲイトで地元の人々に愛されている映画館・エンパイア劇場で働くヒラリー(オリヴィア・コールマン)は、辛い過去のせいで心に闇を抱えていた。

そんな彼女の前に、夢を諦めて映画館で働くことを決めた青年スティーヴン(マイケル・ウォード)が現れる。過酷な現実に道を阻まれてきた彼らは、職場の仲間たちの優しさに守られながら、少しずつ心を通わせていく。

前向きに生きるスティーヴンとの交流を通して、生きる希望を見い出していくヒラリーだったが……。

【感想】

映画館を舞台に繰り広げられる人間模様に大注目の映画でした。とにかく、オリヴィア・コールマンの演技に圧倒されましたね。

<この映画にハマる理由①:海辺が見える映画館>

僕がこの映画を観に来た理由は、「舞台が映画館」というだけでした(笑)だから、予告を観る限り、映画館で働く人々の人間模様が淡々と描かれるだけかなと思ったので、ジャンルとしては個人的な好みとは違うかもしれないことを覚悟していました。

ところが、これが意外にもハマってしまったんですよ。理由は3つあるんですが、まずは建物としての映画館がよかったってのが挙げられます。海辺の通り沿いに一際存在感を放って建ってるんですが、これがとても素敵で!従業員しか入れませんが、映画館の屋上からは広い水平線が一望できるんです。海と映画館とか最高の組み合わせかって!この画だけで、ご飯何杯でもいけちゃいますね。

<この映画にハマる理由②:スティーヴンを取り巻く環境>

次に、スティーヴンについてです。彼はごく普通の黒人の青年で、もちろん彼自身に悪いところなんてひとつもありません。でも、時代が悪いんですよ。1980年代初頭のイギリス。現代よりも黒人に対する差別が多いんでしょうね。。。「白人から仕事を奪うな!」、「クロは国に帰れ!」と、日々心ない言葉を浴びせられます。もちろん、同じ映画館で働く従業員たちは分け隔てなく接するんですが、街ゆく人々の中には暴動を起こす者まで。。。そんな状況が日常と化しているスティーヴンの生きづらさと、彼の身に起る悲劇に心が痛みます。ただ、そんなことがあってもヒラリーに励まされ、夢に向かって再び歩き出すその姿には勇気づけられました。

<この映画にハマる理由③:オリヴィア・コールマンの演技力>

最後に、これが一番大きいんですが、ヒラリーを演じたオリヴィア・コールマンの演技がすごくて。舞台となる映画館の佇まいに穏やかな気分に浸れる一方で、彼女の演技に圧倒されます。

なぜなら、ヒラリーのキャラクターがなかなか複雑だからなんですよね。一見、仕事をキチッとこなす真面目な人に見えるんですが、実は辛い過去を抱えています。それに起因してか、総支配人のエリス(コリン・ファース)と何やら怪しい関係。かと思えば、スティーヴンスとも友情を超えた関係に、、、?!アラフィフとはいえ、ストレートに肉体的エロティックを描写する作風に、ある意味人間らしさを感じますけど、いろいろ衝撃ではありました。言い方はよくないかもしれませんが、「その歳でそこまでやるか」って。特に印象的だったのは、中盤で彼女の溜め込んだ鬱憤が爆発しちゃうシーン。心臓に悪いぐらいハラハラしました。正直、いつそれを言っちゃうんだろうって期待はあったんですが、まさかあんな場でって(笑)

<そんなわけで>

群像劇かと思いきや、メインはヒラリーとスティーヴンの心と体を交えた人間愛を描いた映画ですかね。もはや友人や恋人といった関係を超越したかけがえのない存在とも言えるかも。タイトルの『エンパイア・オブ・ライト』も、映画好きならその真の意味にエモさを感じると思うので、“映画館”が好きな人には特に観てほしいと思いました!


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