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人類史上最高のビジネス!リスクを冒してエア・ジョーダン誕生に奔走した男たちの姿に目頭が熱くなる『AIR/エア』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:3/56
  ストーリー:★★★★★★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:Air
  製作年:2023年
  製作国:アメリカ
   配給:ワーナー・ブラザース映画
 上映時間:112分
 ジャンル:伝記映画、ヒューマンドラマ
元ネタなど:バスケットシューズ「エア・ジョーダン」の誕生秘話

【あらすじ】

1984年、人気がなく業績不振のナイキのバスケットボール・シューズ。ソニー(マット・デイモン)は、CEOのフィル(ベン・アフレック)からバスケットボール部門の立て直しを命じられる。

競合ブランドたちが圧倒的シェアを占める中で苦戦するソニーが目をつけたのは、後に世界的スターとなる選手マイケル・ジョーダン。当時はまだド新人でNBAの試合に出たこともなく、しかも他社ブランドのファンだった。そんな不利な状況にも関わらず、ソニーは驚くべき情熱と独創性で"ある秘策"を持ちかける。

負け犬だった男たちが、すべてを賭けて仕掛ける一発逆転の取引とは…!?

【感想】

これはもうビジネス好き、バスケ好き、スニーカー好きにはぜひ観てもらいたい映画です!あのエア・ジョーダン誕生の裏側に、こんなにも情熱とビジネスとの間で葛藤する男たちの姿があったなんて!!普段、社会に出て働いている人であれば、現場の人間、管理職、CEO、どの立場の人間からも共感できそうな話で面白いです。

<意外だったナイキの置かれた状況>

今となってはエア・ジョーダンは誰もが知るバスケットシューズのブランドで、それをナイキが作ってるというのも広く認知されていますよね。ところが、1984年という時代はそうじゃなかったんですよ。当時のナイキはランニングシューズでは有名だったんですけど、バスケットシューズに関しては赤字の連続。市場シェアもアディダスが54%、コンバースが29%、ナイキが17%という状況でした。そんな中で、誰をナイキの専属プレーヤーにするかで社内は大揉めの状態だったんです。

<ソニーの圧倒的な情熱>

その中で、僕はやっぱりソニーが今回の件において、すべての原動力になっていたなと感じましたね。当時まだ無名だったマイケル・ジョーダンのポテンシャルを見抜いたんですから。彼の試合のビデオを観てみると、当時有名だった選手を囮に使ってまでも、マイケル・ジョーダンにシュートを打たせていることが、彼のポテンシャルを物語っていたんです。

もともと、会社としてはナイキの専属プレーヤーとして、予算25万ドルを3人の選手に配分する方針だったんですよ。でも、そんな中途半端な投資じゃ意味ないから、その25万ドルを全部マイケル・ジョーダンに突っ込めと彼は言いました。当然、上司やCEOのフィル・ナイトは猛反対ですよ。この先どうなるかもわからない選手に、予算をすべて投下するなんてリスクが大きすぎますからね。経営という観点からすれば正論ですよね。

だけど、ソニーはもうマイケル・ジョーダンに絶対の確信を持っていたので、勝手に彼の両親に会いに行っちゃいます。本来ならば、選手との交渉は代理人を通すのが通例だそうなんですが、全然取り次いでくれないから直接行っちゃえと。当時の黒人の家庭は大体母親が仕切ってるから、まずは彼女に会って話を聞けば、何か変わるかもって思ったんでしょう。そこで、ソニーは自身のマイケルに対する素直な想いと、競合他社(アディダスとコンバース)が仕掛けてくるであろうやり方を話すことで、母親の興味を引き、プレゼンのチャンスを獲得します。もちろん、すっ飛ばされた代理人は大激怒です。普通だったらそういう商慣習を無視した行動は、後々大問題になるので控える人が多いと思うんですけど、そこを独断でやっちゃうソニーの行動力はすごいですよね。まあ、それほどマイケル・ジョーダンが欲しかったっていうのもありますし、ソニーはバスケットボール部門を立て直すために雇われていたので、仕事の進め方も日本のそれとは違うのかもしれませんが(笑)

そういうソニーの見切り発車な行動に、上司もみんなヒヤヒヤしていましたが、プレゼンの機会を得たことで、ようやくまわりも「これはもうやるしかない」と重い腰を上げます。さらに、ソニーはテニスラケットのCMを目にして、マイケル・ジョーダンの名を冠したオリジナルシューズを作ることを閃きます。選手がシューズの顔となるのではなく、選手がシューズそのものになるんだと。こうした提案が功を奏し、結果として今日に至るまでエア・ジョーダンは不動の人気を得ていきます。

<フィル・ナイトの勝負師な決断力>

もうひとり、僕が素晴らしいなと思ったのは、最終的にマイケル・ジョーダンとの契約にGOを出したCEOのフィル・ナイトです。もともと攻めの経営を行ってきたナイキですが、会社も大きくなるとなかなかチャレンジングなことはできません。なので、経営者としてはリスクを分散するためにも、限られた予算を複数の案件に分配するのがオーソドックスなやり方だとは思います。だから、最初に25万ドルで3人のプレーヤーを引っ張って来いって話だったと思うんですが。とはいえ、結局はそれをすべてをマイケル・ジョーダン1人で行くことを認めたのは勝負師だなと思います。役員会をどう説得したのかは気になりますけど(笑)さらにですね、その契約に際し、エア・ジョーダンの売上の一部をマイケル・ジョーダンに分配するという型破りな条件も受け入れたんですよ。こんな前例のない契約ありますかって。むしろ、それを発案して断固として譲らなかったマイケル・ジョーダンの母親もすごいですけどね。おかげで、マイケル・ジョーダンは年間?4億ドルも受け取ることになったらしいです。

<成功するための条件>

この映画を観て思ったことがいくつかあります。まずは、圧倒的な情熱が成果に繋がるということです。そもそもソニーがマイケル・ジョーダンにあそこまで惚れ込まなければ、ここまで行動することはなかったでしょう。あるいは、社内で猛反対に遭って、途中で心折れていたかもしれません。でも、彼の情熱がここまでまわりを動かしたんです。まあ、こういう映画の場合、ほとんどが熱いスピーチのみで事が進んでいくところがいいなとは思いますけどね。実際は、試算なり関係各所への根まわしなり、面倒なことが盛りだくさんだと思いますから(笑)

次に、ルールを飛び越えることが革命に繋がるということです。ソニーが代理人をすっ飛ばしてマイケル・ジョーダンの家族に会ったのも、シューズのデザインのためにNBAへの罰金をナイキで持つことになったのも、エア・ジョーダンの売上の一部をマイケル・ジョーダンに分配することになったのも、今までのビジネスではどれも考えられないことです。それをやってのけてしまったらこそ、エア・ジョーダンは生まれ、大きなムーヴメントと利益をもたらしました。

最後はやっぱり人ですよね。ソニー自身もそうですが、結局彼のやっていることを受け入れた社長もそうですし、社内に革新的なバッシュをデザインできる人間がいたことも大きいんじゃないかと思いました。こういう人たちがいるところで働けたら刺激的でしょうね。

<そんなわけで>

リスクを物ともせず突き進んだ男たちがとてつもなくかっこいい映画でした。ひとりの男の情熱がまわりを巻き込み、ルールを飛び越えることで改革を巻き起こした、まさに歴史に残るビジネスじゃないかと。観ると元気がもらえる、明日からまた仕事がんばるかーと思える素晴らしい作品なので、ぜひ映画館で観ていただきたいです!

ちなみに、個人的には、『ラッシュ・アワー』シリーズ以来久しぶりに見たクリス・タッカーもオススメでした!あの高い声と早口なセリフ、ギョロッとした目が健在で懐かしかったので(笑)


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