強い愛情や性欲って人を暴走させるよねって思った『悪なき殺人』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:89/256
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆
【要素】
サスペンス
スリラー
不倫
ネット恋愛
ネクロフィリア
【元になった出来事や原作・過去作など】
・小説
コラン・ニエル"Seules les bêtes"(2017)
【あらすじ】
フランスの山中にある寒村で、1人の女性が失踪し殺された。
疑われたのは農夫・ジョゼフ(ダミアン・ボナール)。
ジョゼフと不倫する女・アリス(ロール・カラミー)。
妻のアリスに隠れてネット恋愛する夫・ミシェル(ドゥニ・メノーシェ)。
そして、遠く離れたアフリカで詐欺を行うアルマン(ギィ・ロジェ・ンドラン)。
秘密を抱えた5人の男女がひとつの殺人事件を介して絡まり合っていく。
だが、我々はまだ知らない…。この事件がフランスから5000kmも離れた場所から始まり、たったひとつの「偶然」が連鎖し、悪意なき人間が殺人者になることを。
【感想】
これは秀逸な作品でした。「そう来るのか!」という驚きの連続だったサスペンス映画です。
<恐るべき偶然連鎖>
物語の序盤で、発端となる殺人事件が発覚します。その後、3人の人物に焦点を当てたエピソードが展開されていきます。そこに登場する5人の男女の偶然の連鎖がとても面白かったんですよ。
ネタバレするとダメな映画っぽいので、だいぶざっくり書きますけど、「あのときあの人がやっていたことは、実はこういう理由があったから」、「ここでこの人が言っていたことは、実は巡り巡ってこういうことだった」というような人々の偶然の繋がりが、後々大きな意味を持ってくる構成が、この映画の最大の魅力です。時系列にはバラつきがあるので、下手したら訳わからなくなりそうなんですが、そこをうまい具合に展開させていくのが、監督のセンスが光るところかなと思いました。
<偶然の裏に隠された人間の本質>
「人間は"偶然"には勝てない」。これは、この映画のメッセージなんですが、まさにその偶然の連鎖によって生まれる悲劇だからこそ、誰にも悪意がないんですよね。ゆえに、『悪なき殺人』というタイトルなんです。
そして、その偶然が繋がっていく中でポイントとなるのが、人間の色恋沙汰。不倫やネット恋愛など、現代らしいシチュエーションの中で渦巻く嫉妬や性欲が、暴走の火種になります。オーソドックスといえばそれまでですが、逆に捉えれば、それだけありふれた動機ともいえるので、各登場人物の行動背景は共感しやすいというか、腹落ちしやすいです。そこがまた、ストーリーが理解しやすくなる要因かもしれません。
<その他>
原作は同名タイトルの小説らしいですが、もちろんフィクションです。なので、結局すべては作られた偶然ではあるんですけど、うまく連鎖して物語として機能させることができていることが、とてもすごいなと思える映画でした。これはぜひいろんな方に観ていただきたいです。
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