人生2/3過ぎてから偉業を成し遂げた伊能忠敬の学ぶ姿勢と行動力に感銘を受ける『大河への道』
【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:67/77
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆
【ジャンル】
ヒューマンドラマ
コメディ
歴史
【元になった出来事や原作・過去作など】
・落語
立川志の輔『伊能忠敬物語―大河への道―』
【あらすじ】
千葉県香取市。市役所の総務課に勤める池本保治(中井貴⼀)は、市の観光振興策を検討する会議で意見を求められ、苦し紛れに大河ドラマ制作を提案。思いがけずそれが通り、郷土の偉人、伊能忠敬を主人公とする大河ドラマの企画が立ち上がってしまう。
ところが、企画を進めるうちに、日本地図を完成させたのは伊能忠敬ではなかったことが発覚。彼は地図完成の3年前に亡くなっていたという驚きの事実が明らかに……。
江戸と令和、2つの時代を舞台に明かされていく日本初の全国地図誕生秘話。そこには地図を完成させるため、伊能忠敬の弟子たちが命を懸けて取り組んだとんでもない隠密作戦があった――。
【感想】
ちょっとトリッキーな印象を受ける映画でしたね。史実なので言ってしまいますけど、この映画は伊能忠敬本人の話ではなく、彼の死後、地図を完成させた関係者および弟子たちの話なんですよ。伊能忠敬自身は歴史上の人物として有名な方なので、そのくだりを知っている人は多いかもしれませんけど。なので、伊能忠敬が地図を作る上での苦労話や人間模様を期待していくと、的外れって感じになってしまうので注意が必要です。
<歴史のお勉強>
ストーリーは現代パートと江戸パートに分かれ、途中クロスしながら進んでいきます。まあ、『タイタニック』(1997)の現代パートと過去パートを行き来する構成をイメージしてもらえればいいですね。で、前者はコメディ寄り、後者はヒューマンドラマ寄りと毛色が異なるので、メリハリがあってよかったと思います。
そう、そこはよかったんですけどね。。。江戸パートが途中までちょっと退屈なんですよ。というのも、伊能忠敬はすでに亡くなっている上に、もう測量自体もほぼ終わっている状況です。残る仕事と言えば、あとは足りないところの測量が少しと、地図の清書のみ。これがけっこう淡々と進んでいくんですよ。だから、当時の雰囲気はわかるものの、映画として目を引く内容かというと、個人的に正直そうは思いませんでした。
<伊能忠敬の偉大さ>
ただ、改めて伊能忠敬という人物のすごさはわかります。彼はすでに亡くなっているので、他の登場人物のセリフの中でどういう人だったかが語られるのみなんですけど、この歳になってから観ると余計に彼の生きる姿勢に驚かされます。
もともと商人なんですよ。で、51歳のときに二回りも年下の人物に弟子入りして天文学を学んだんです。そして、56歳から観測を始めて、72歳まで続けました。当時の72歳って、今で言ったら80歳とか90歳ぐらいじゃないですかね。本土だけじゃなくて、周辺の島までひたすら歩きまくって。そんなに身体も丈夫な方ではないにも関わらず、です。そうして出来上がった日本地図が、最新のドローンで撮った日本の地図とほぼいっしょなんですよ。それを200年以上も前にアナログなやり方で作っちゃうんだから。伊能忠敬自身は
厳格な性格で、根気強く、几帳面だったそうですけど、そうじゃなきゃこんなことできませんよね。もちろん、彼の功績は学校で習って知ってはいましたが、教科書じゃなくて、こういう物語の中で観るとまたそのすごさが一層際立ちます。
<グッとくるポイント>
全体的に淡々とした印象の映画なんですけど、2点、僕がいいなと思ったところがあります。まずは、大河ドラマ制作に向けて脚本を打診していた加藤先生(橋爪功)のセリフです。「この地図は名もなき弟子たちの集大成。俺が(脚本を)書かなきゃこいつらの存在は知られないままだ」みたいなものなんですけど、歴史って誰かが語り継がなきゃ、後世に残りませんよね。それをやれるスキルを持ち合わせていて、ちゃんとやろうっていうんだから、とてもかっこよかったです。
もうひとつは池本です。ネタバレになるので詳細は書きませんけど、伊能忠敬に触発されたのか、人はいくつになってもやる気さえあればできるんだっていうことを示すような感じで好感が持てました。映画を観たらぜひチェックしてみてください。
<そんなわけで>
江戸パートがちょっと地味ではあるんですけど、内容は日本人として知っておいた方がいいことなので、歴史の勉強として有意義でした。小学生や中学生にも観てもらいたい作品です。