音声だけで事故の真相を追い、まさかの真実にたどり着く極上のサスペンス体験『ブラックボックス:音声分析捜査』
【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:4/15
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
映像:★★★☆☆
音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★★★
【ジャンル】
サスペンス
スリラー
【原作・過去作、元になった出来事】
なし
【あらすじ】
ヨーロピアン航空の最新型機がアルプスで墜落。乗客・乗務員316人全員の死亡が確認された。
司法警察の立会いの下、航空事故調査局の音声分析官が、ボイスレコーダー、通称“ブラックボックス”を聴く。いつもなら責任者のポロック(オリヴィエ・ラブルダン)に同行するのは、最も優秀なマチュー(ピエール・ニネ)だったが、天才的なあまり孤立していた彼は外されてしまう。だが、まもなくポロックが謎の失踪を遂げ、引き継いだマチューは「コックピットに男が侵入した」と記者会見で発表する。
やがて、乗客にイスラム過激派と思われる男がいたことが判明。マチューの分析は高く評価され、責任者として調査をまとめるよう任命される。本格的な捜査に乗り出したマチューは、被害者の一人が夫に残した事故直前の留守電を聞いて、ブラックボックスの音と違うことに愕然とする。
今、マチューのキャリアと命をかけた危険な探求が始まる──。
【感想】
これは秀逸な映画でした!ブラックボックス内に残された"音声のみ"で飛行機墜落事故の真相を追う話なんですけど、設定としては、2018年に公開されたデンマークのスリラー映画『THE GUILTY/ギルティ』に近しいものがありますね。あれも、緊急通報指令室のオペレーターにかかってきた電話だけで、事件解決を図る話だったから。ただ、今回の映画は、よりスケールが大きく、より驚くような展開で、メチャクチャ面白い作品に仕上がってるんですよ!!
<音声しか使わない限定された設定が秀逸>
ちょっと話は逸れちゃうんですけど、昔、脚本の学校に通っていたときに習ったことがあるんですよ。面白い物語の条件のひとつは、"枷(かせ)"だって。つまり、キャラクターや状況に制約を設けることで、視聴者の興味を引くんですよね。例えば、『ドント・ブリーズ』(2016)では、盲目の老人宅に入った若者が返り討ちに遭う話です。他にも、『見えない目撃者』(2019)では目が見えない主人公が、『殺人鬼から逃げる夜』(2021)では耳が聞こえない主人公が、それぞれ殺人鬼に狙われる話です。いずれも、普通の人ならある視覚や聴覚がないという制限された状況下で、どういう展開になっていくのかって好奇心が刺激されますよね。
それが今回は、"音声しか使えない"ということになるんです。飛行機は大破、乗客・乗務員は全員死亡。事故当時の状況を知るには、ブラックボックスに残された音声データしかありません。この音声からどうやって手掛かりをつかんでいくのかが、この映画の一番面白いところです。
<孤立しても職務を全うする主人公がかっこいい>
マチューは天才的な分析官として描かれていますが、異常聴覚を持っているとかっていうようなファンタジーな設定ではありません。人よりも観察力が鋭く、細かいことまで気にかけ、徹底的に調べ上げる性格というのが、彼が優秀とされている所以じゃないかと。
ただ、あまりにもマイペースというか、こだわりがすぎるあまり、周囲の理解が乏しいんですよ。優秀なのはみんな認めてはいるんですが、「めんどくさいやつ」と思われちゃってるんですよね。だから、思うように事が進まず、観ている方としてもやるせない気持ちになりました。
でも、マチューはあきらめません。何度も音声データを聴き、怪しい箇所を特定。ノイズを除去し、ピッチを変え、隠された音を浮き彫りにしていきます。そして、バレたらクビになるかもしれないことを承知の上で、独自に捜査を開始します。物静かで、淡々としている性格でしたが、実は熱い魂を持っているというのがわかって、彼の評価が爆上がりです。あの勇気ある行動は姿はかっこよかったですね。
<二転三転するストーリー展開に驚きの連続>
原因はこれか!いや違う!じゃあこれか?いや違う!まさかの、、、これ、、、?!何度も原因を特定しようとして失敗を繰り返し、マチューは窮地に立たされますが、注意深く音声データに聴き入り、時には愛する妻をも利用し、とある偶然によってたどり着く驚愕の真実。その驚きの連続ゆえに、ずっとスクリーンに見入っちゃいます。でも、一番びっくりするのは、「音声データってそんなにいろいろわかるの?!」っていうぐらい、様々な情報が詰まっていることでしたね。それを聴き分けるマチューもすごいけど、音声データの内包する情報量が意外でした。
それにしても、コックピット内ってドライブレコーダーみたいなのないんですかね。音声データでもいろいろわかりますが、映像データがあった方が手っ取り早い気もしましたが。。。
<そんなわけで>
音声という限られたソースだけで真実を暴こうとする設定と、二転三転しながら真実を解き明かすストーリー展開が、もう最高のエンターテインメントなんですよ!音声に重点を置いているだけに、これはぜひ映画館で観たい作品です!
あと、これは個人的な主観かもしれないんですけど、主人公を演じたピエール・ニネって、ちょっとトビー・マグワイヤに見えるんですよね。唇あたりが特に(笑)
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