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モヤモヤしながら心のままに突っ走っちゃう予測不能なラブコメ『愛なのに』

【個人的な評価】

2022年日本公開映画で面白かった順位:12/33
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】

ラブストーリー

【原作・過去作、元になった出来事】

なし

【あらすじ】

古本屋の店主・多田(瀬戸康史)は、昔のバイト仲間、一花(さとうほなみ)のことが忘れられない。その古本屋には、女子高生・岬(河合優実)が通い、多田に一途に求婚してくる。

一方、亮介(中島歩)と婚約中の一花。結婚式の準備に追われる彼女は、亮介とウェディングプランナーの美樹(向里祐香)が男女の関係になっていることを知らずにいて…。

【感想】

まず、この映画はある企画から生まれました。それは、城定秀夫監督と今泉力哉監督によるコラボレーション企画「L/R15」。両者が脚本を提供し、R15+指定のラブストーリーとなる劇場映画を監督し合うというもの。本作は「L/R」のうちのLと位置づけられています。

この映画は、男女の関係性について、何かが解決したり完結したりする話じゃないと思いました。出てくる登場人物の関わり合いについて、「わかるぅ」と思ったり「わっかんねぇな」と思ったり、いっしょに観た人とあーだこーだ語り合う余白のある内容な気がしてます。ただ、カップルや夫婦で観るには向かないかも。異性の友達同士に留めておくのがベターかな(笑)

<身近で起こる男女のもつれ合いに興味津々>

本当にリスクありすぎじゃない?っていうぐらい、あまりにも近いところでいろいろ起こりすぎなこの映画。かつてのトレンディドラマを思い出しちゃいますね。古本屋の店主である多田に求婚しまくる女子高生・岬。やべぇやつですよ。交際をすっ飛ばして求婚ってところがぶっ飛びすぎてて。でも、多田はかつて好きだった一花のことを引きずっていて、岬の気持ちに応えられないんですよね。いや、いいですよ。そもそも、15個も歳が離れていますし。正常な大人なら一歩立ち止まるのが普通ですよ。とはいえ、完全に突き放さないところに、彼の優しさと同時に、若干の下心もあるんじゃないかって気もしますけど(笑)

一方、多田が想いを残す一花は、亮介との結婚を控えてはいるものの、彼の浮気をきっかけにまさかすぎる行動へ出ます。それは後述するとして、亮介の浮気相手である美樹が、まさかの2人の式を取り持つウェディングプランナーなんですよね。美樹はどんな気持ちで、普段2人の式の相談に乗っているんでしょう。すべてをビジネスライクに捉えていそうなので、ある意味一番信頼できるとも言えますけどね(笑)しかも、美樹はこういったケース、今回が初めてじゃさそうですし。いろいろ手慣れてます。まあ、よく若い頃にいろいろ奔放だった人の結婚式に行ったりすると、そのいろいろあった相手がその場にいたりして、何やら香ばしい光景が広がっているなんて声もたまに聞こえたりしますけどね。なんにせよ、こうやって普通ならモラルとしてありえない状況が平然と行われている様は、それだけで魅力的な物語になっているなと感じます。

<肉体的充足と精神的充足のせめぎ合い>

先に書いた一花の"まさかすぎる行動"ですが、彼女は亮介の浮気を知って、「自分も同じことをする」と宣言します。その相手に選んだのが、多田なんですよね。これまで、多田のエピソードと一花のエピソードは並行して進んでいたんですが、ここで初めてクロスします。まあ、当てつけセックスをしてやろうってことなんだけど、多田からしたら複雑な気持ちですよ。そりゃ男として、かつて想いを寄せていた女性と寝られるんなら、それはそれでうれしい気持ちもありつつ、後腐れないどうでもいい相手として選ばれたっていうことは、彼女が自分のことを大して重要視してなかったということじゃないですか。これは悲しいですよ。プライドもクソもあったもんじゃない。自分の存在を全否定された気持ちになりますよね。

ただ、この出来事がきっかけで、ものすごい変化が起こってしまうのが面白いところです。多田と一花だけでなく、岬との向き合い方も変わってきますから。肉体的な結びつきと、精神的な結びつき、両方について考えさせられるところです。ここはぜひ劇場で確かめて欲しいところ。

個人的には、結局一番おいしいのは多田じゃんって思いましたけど。肉体的な意味でも、精神的な意味でも、おいしくいただける立場にありますから。

<そんなわけで>

真面目で大人なラブストーリーを主軸に、ちょいちょいクスッと笑える要素を含んだ本作。男女で感想も異なりそうですし、誰の視点で捉えるかによっても正義が変わりそう。タイトル通り、「愛とは何なのか」ってことを考えるきっかけになるかもしれません。とりあえず、"身体的コミュニケーション"のうまさは、人生を変えうるってことだけはわかりました(笑)


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