ウクライナの希望の光となってほしい。ウクライナ発の子供といっしょに楽しめるファンタジーアニメーション『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』
【個人的な満足度】
2023年日本公開映画で面白かった順位:82/148
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★★★
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:The Stolen Princess
製作年:2018年
製作国:ウクライナ
配給:KADOKAWA、Elles Films
上映時間:94分
ジャンル:3DCGアニメーション、ファンタジー、アドベンチャー
元ネタなど:童話『ルスラーンとリュドミーラ』(1820)
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
騎士に憧れている役者ルスランと王女であるミラ。二人はお互いの素性を知らぬまま出会い、やがて恋に落ちる。
しかし、悪の魔法使いであるチェルノモールがルスランの目の前でミラを連れ去り、ミラの愛の力を自分の魔力に変えてしまう。
ルスランは、愛するミラを助けるためにあらゆる障害を乗り越え、本当の愛は魔法よりも強いということを証明するべく旅へと出るが、そこには様々な困難が待ち受けていて…。
【感想】
ウクライナの作ったアニメ映画がついに日本初上陸!人生で初めてのウクライナ映画ということで興味がありましたし、何よりも今の過酷な状況を応援する意味も込めての鑑賞だったんですが、これが思った以上に面白くて!なお、この映画の日本公開に向けての経緯がとても興味深いんです。務めていた映画会社を辞めて独立し、ほぼ全財産をはたいて配給権を獲得した粉川なつみさんという方のインタビューもぜひご覧ください。
<王道ゆえにわかりやすく安心して観られる>
世界観としては、ディズニーと『シュレック』シリーズを掛け合わせたような感じですね。剣と魔法のファンタジーをベースに、悪い魔法使いにさらわれたミラを助けるため、騎士に憧れる売れない役者のルスランの冒険を描いた作品となっています。
既視感が強いと言えばそうなのですが、その分ストーリーは王道ゆえにわかりやすく、尺も短めなので非常に観やすいです。悪党は出てくるし、ルスランの前に立ちはだかる困難もあれど、誰かが不当に傷つくこともなく、まるで絵本のように子供でも安心して観られる映画なので、お子さんをお持ちの方にはオススメしやすいです。
<王女ミラのスタンスはこれからを生きる女の子にこそ響くかも>
売れない役者とはいえ、ルスランの勇敢な姿に元気づけられる人もいるでしょうが、僕は彼よりもミラの方が魅力的な人物に感じました。彼女は自分が王女であるがゆえに決められた道を進むことを嫌がり、自ら運命を切り開き、危機を脱していく力強い人物として描かれているからです。女性だから守られるべきだという前時代的な価値観はそこにはなく、王女だからといって人生が決まりきっているわけでもない。ひとりの人間として自分の進みたい方向に飛び出していく姿は子供にも知ってもらいたいなって思います。まあ、お城を飛び出して庶民のルスランと出会うところなんかは、『アラジン』(1992)のジャスミンを彷彿とさせますね。
<注目したい脇役たち>
また、メインの2人だけでなく、脇役もいい味を出していたと思います。まずはルスランを導くしゃべる猫。呪いで猫の姿にされているかと思ったんですが、デフォルトでああいうキャラクターっぽいですね。RPGなんかではよく見かける主人公を導くメンターのような存在ですが、崇高な身分に見えて猫らしさを残した仕草はかわいかったです。そして、自分が騎士であることを鼻にかける嫌味なファラフ。すべてにマウンティングしてくる嫌な金持ち貴族のような役どころですが、しっかり懲らしめられるようなオチになっていて、子供にはいい教訓になるかもしれません(笑)
<そんなわけで>
映画として見たときに、作品自体がものすごく斬新だったり、登場人物にカリスマ性があるっていうわけではないんですけど、観る人を選ばず楽しい気持ちにさせてくれる点でとてもオススメできます。変にウクライナらしさ(悪い意味ではなく、その国の独自性という意味で)がないのも広く受け入れられやすい形になっているかと思いますね。まあ、ディズニーというかハリウッド映画っぽい感じで、見方によっては個性がないと言う人はいそうですけど。どうせなら字幕で観たかったなあ。
僕はウクライナが映画を作っているってこと自体知りませんでしたが、まさかこんなアニメ映画もあるなんて意外でした。まだ辛く厳しい状況が続いておりますけど、この映画がひとりでも多くの人に届き、ウクライナの人々の希望になればいいなと思います。