タイトルのインパクトの割に中身は地味だった『フェラーリ』
【個人的な満足度】
2024年日本公開映画で面白かった順位:70/81
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆
【作品情報】
原題:Ferrari
製作年:2023年
製作国:アメリカ・イギリス・イタリア・サウジアラビア合作
配給:キノフィルムズ
上映時間:130分
ジャンル:伝記、ヒューマンドラマ、レース
元ネタなど:伝記『Enzo Ferrari: The Man, the Cars, the Races, the Machine』(1991)
公式サイト:https://www.ferrari-movie.jp/
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
1957年、夏。イタリアの自動車メーカー、フェラーリの創設者エンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)は激動の渦中にいた。業績不振で会社経営は危機に瀕し、1年前の息子ディーノの死により妻ラウラ(ペネロペ・クルス)との夫婦関係は破綻。
その一方で、愛するパートナー、リナ・ラルディ(シャイリーン・ウッドリー)との間に生まれた息子ピエロを認知することは叶わない。
再起を誓ったエンツォは、イタリア全土1000マイルを走るロードレース"ミッレミリア"にすべてを賭けて挑む――。
【感想】
フェラーリの創設者であるエンツォ・フェラーリの伝記映画です。が、ものすごく一部だけを切り取った話だったので、あんまりエンツォの人となりが伝わってきませんでしたね。伝記映画で主人公のキャラがあんまり伝わってこないってのは、、、ねぇ。。。(笑)
<タイトルに全部持っていかれる>
この映画、とにかくタイトルのインパクトが強すぎますよね。だって、『フェラーリ』ですよ?車に興味のない人でもその名を聞けば、あの真っ赤なスポーツカーが目に浮かぶぐらいには知名度もブランド力もある車だと思います。だからこそ、ものすごく期待値が高まるいうか、イメージが先行してしまった感は否めません。この映画はスポーツカーとしてのフェラーリではなく、あくまでもその創始者であるエンツォ・フェラーリに焦点を当てた話です。けれど、かにして彼がフェラーリを作り上げたかっていう話ではなく、ロードレスのミッレミリアで優勝して会社の経営を立て直そうとするごく限定的なエピソードに限られていました。それがまあ伝記映画らしく淡々と進んでいくので、エンツォについての予備知識がないとなかなか話に入り込めないんじゃないかと思いますね。
<癒しの場にならない家庭>
とはいえ、エンツォの私生活はなかなか複雑だったりします。最愛の一人息子であるディーノを亡くし、妻ラウラとの夫婦関係は破綻。戦時中に知り合ったリナとの間に子供をもうけるも認知できずにいました。つまり、エンツォにとって血を分けた子供というのは、不倫相手との間にできたピエロのみだったってことですね。印象に残ったのはリナのセリフで「あたしたちの関係はあのとき(戦時中)はめずらしくなかった」と言うんです。戦時中って不倫が当たり前になるのでしょうか、、、?
また、エンツォの母親もけっこうエグい人で、エンツォには戦死した兄がいたんですが、「兄の方が生き残ればよかったのに」とラウラにぼそっと言ってしまうんですよ。実の母親なのに。それだけでなく、母親はエンツォの不倫を黙認しているんですが、その理由が「跡取りがいるから」なんですね。ラウラは「あたしだって一人産んだじゃない!」と怒りをあらわにするんですが、それに対しても「一人じゃ足りなかったね」と。母親にとってはフェラーリ家の跡取りが大事で、ディーノが亡くなった今となっては不倫相手だろうが何だろうが子供がいる方が価値があるってことでしょう。この嫁と姑の関係性、マジでエグいわ。。。
<そもそもエンツォを演じたのがアダム・ドライバーってことに驚き>
そんな人たちに囲まれて生きるエンツォも肩身狭いなと思うんですが、演じているのがアダム・ドライバーってことに驚きませんか?彼は髪が黒くて長い印象が強かったので、予告の時点では白髪のオールバックのエンツォが彼だとまったく気づきませんでした。しかも1957年当時のエンツォは59歳になる年だから、アダム・ドライバーより19歳も上なんですよね。妻役のペネロペ・クルスとも10個近く離れているのに、役の上ではアダム・ドライバーの方が彼女よりさらに10個近く上の設定ってんだからすごいなと。普通、当時のエンツォの年齢に近い方を起用しそうなものですが。でも、エンツォを見事に演じきったアダム・ドライバーの役者魂には恐れ入ります。
<事故シーンがえげつない>
あと、終盤で起こったミッレミリアの事故シーンがかなり凄まじい映像になっているので、グロテスクな光景が苦手な人はご注意ください。これは史実でもあるのですが、マシンのタイヤが破裂して信じられないぐらい車体が吹っ飛び、近くで観戦していた人を巻き込んで4名の子供を含む9名の死者を出す大惨事になったんですよ。映画の中ではCG感あるっちゃあるんですが、スプラッター映画かってぐらいの惨状で、淡々とエンツォの人生を観せられていた中で急にきたものですから、ある意味ジャンプスケアかと思ったほどです。
<そんなわけで>
"フェラーリ"っていうイメージにだいぶ引っ張られてしまったのと、題材となるエピソードがかなり限定的なので、個人的にはイマイチ入り込めませんでした。エンツォ自身もこだわりが強いようには見えますが、そうは言っても世界的に有名な自動車会社の経営者ならあんなものじゃないかって気もしますし、イマイチどんな人だったのかが伝わってきませんでした。勝手にエンツォはもっとやべぇやつかと思ってしまいましたが、別に世界に名を残す人の全員が波乱万丈な人生を歩んでいたわけではないですしね。。。それもやっぱり、"フェラーリ"っていうイメージに引っ張られた結果かもしれません。