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日本の未来のために戦ったプログラマーと弁護団に感謝の念しかない『Winny』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:21/45
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

  製作年:2023年
  製作国:日本
   配給:KDDI、ナカチカ
 上映時間:127分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:事件「Winny事件」(2004)

【あらすじ】

2002年、開発者・金子勇(東出昌大)は、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発、試用版を「2ちゃんねる」に公開をする。彗星のごとく現れた「Winny」は、本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。

ところが、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出し、次第に社会問題へ発展していく。

次々に違法コピーした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大)は、「開発者が逮捕されたら弁護します」と話していた矢先、開発者である金子氏逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることになり、弁護団を結成。金子と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまう…。

しかし、運命の糸が交差し、世界をも揺るがす事件へと発展する――。

【感想】

「こういう邦画待ってました!」という感じです。朝ドラや大河ドラマがあるせいか、実際の事件や人物を題材にした映画って、邦画だとあんまりないイメージじゃないですか?洋画はけっこうありますけど。日本だって日々いろんな事件なり、人知れず社会に貢献しまくってる人だっているんですから、そういうのを扱った作品は常々観たいと思っていたんですよ。それを叶えてくれたのが本作です。

<Winnyと個人的な関わり>

ありません(笑)いや、早速自分の話で申し訳ないんですけど、一応、世代ではあるので書いておこうかなと。僕が高校生のときなんですよ、Winnyが出たのって。当時も名前だけは知っていましたし、インストールもしました。ただ、使い方がよくわからなくて、結局一度起動したっきりなんですよね。むしろ、当時はWinMXの方がまわりで使っている人も多かったです。だから、今回の事件についてもこの映画で初めて知ったぐらいなんです。

<新鮮な法廷モノ>

そんなWinnyの特性や影響力はひとまず置いておいて、ここからは映画そのものの感想を書いていきますね。結論、とても面白かったです。今回はこの画期的なソフトウェアを巡っての裁判がメインになるんですけど、これまでの邦画で法廷が舞台になるときって、大体が殺人事件などでサスペンスやミステリーだったじゃないですか。でも、この映画については、日本の未来を懸けたヒューマンドラマなんですよね。まずそこが新鮮だなって感じました。むしろ、鑑賞している側もずっと裁判の行方を追っているので、ある意味ドキュメンタリーに近い印象さえありました。

<日本が誇る天才プログラマー>

この映画を観て、自分の中では特に心に残ったところが2つあります。まずは、日本でこんな画期的なソフトウェアを作れる人がいたのかという驚きです。金子勇さんご本人が実際にどういう方だったかまでは存じ上げませんけれども、演じた東出昌大さんのキャラクターを観る限り、純粋なプログラミングオタクみたいな印象でした。「山があるから登る」っていうぐらい単純な動機でWinny開発を続けたというエピソードが微笑ましいです。変に悪意があったりとか、世界を変えてやろうとか、そういうのはなく、人々に役に立つならってことで、好きでプログラミングしていた姿がよかったですね。警察や検察は完全に金子さんを悪者としてしか捉えていなかったから(それが仕事でもあるんですけど)、彼らのその他人の人格を決めつけるような見方を真っ向からひっくり返す金子さんのキャラクター像に好感が持てました。

<日本の未来を見据えた弁護団の雄姿>

もうひとつは、Winnyおよびその開発者である金子さんに罪はないことを主張する弁護団の姿です。「包丁で人を刺したとき、その包丁を作った人まで罪に問えるか」という例えがわかりやすかったんですが、ここで金子さんを有罪にしてしまっては、今後ソフトウェアを開発しようという人がいなくなってしまうかもしれませんよね。「どうせ作っても逮捕されるんだろ」ってなったら、誰も新しい技術なんて作ろうって思いませんもん。そうなっては、日本の国力を損なう恐れだってあります。だから、これは日本の未来を方向づける戦いでもあったんじゃないかと思いました。特に、秋田弁護士(吹越満)の尋問シーンが最高にかっこいいんですよ!証人に対して細かな事実を突きつけ、煽り、見事に真実を吐かせる手腕、さすがすぎます。その直前に、「恋愛の目的は、好きな相手に好きと言わせること」と言ってるんですが、まさにそれを裁判の尋問で実現してみせたんですよ。いやー、しびれました。

<問題は日本の社会構造?>

史実なので言ってしまいますが、ここまでやったのに、第一審では結局有罪になって罰金150万円を課せられてしまいます。ペナルティとしては、世間への影響範囲と照らし合わせてそこまで重くはない気もしますが、そもそも有罪となってしまったこと自体が何よりも悔しいです。結局、国としてひとつの技術を悪いものと判断してしまったんですから。もちろん、悪用される危険性は大いにありますが、まずは運用の面でその問題を解決していくよう模索する機会を与えてもいいと思ったんですよね。

ただ、その後7年かけて逆転無罪を勝ち取ってはいます。とはいえ、画期的な技術に対して、それがいいか悪いかの判断に7年って。。。しかも、その半年後に金子さんは心筋梗塞で42歳の若さで亡くなってしまうんですよ。。。もし、その裁判に使われた時間を新たな技術開発に充てられていたら、どんな未来があったでしょうか。"出る杭は打たれる"とよく言いますが、その悪い部分が露呈した形ですね。。。技術力自体は問題ないのに、それを受け入れる社会構造がよくないんでしょうか。

<そんなわけで>

日本の未来を懸けた裁判を題材とした映画なので、日本人なら観ておいて損はないと思います。淡々と進んでいく内容ではありますが、比較的新しい事件というのと、昨今何かと話題になるIT技術を題材にしているので、とっつきやすくはあるかなと!


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