【ネタバレあり】原作はあの『スカイハイ』のスピンオフだけど、亡くなった方との思い出を抱きしめたくなる感動映画『天間荘の三姉妹』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:86/178
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆
【作品情報】
製作年:2022年
製作国:日本
配給:東宝
上映時間:150分
ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:漫画『スカイハイ』(2001-)
漫画『天間荘の三姉妹 ―スカイハイ―』(2013-2014)
【あらすじ】
天界と地上の間にある街、三ツ瀬。美しい海を見下ろす山の上に、老舗旅館「天間荘」がある。切り盛りするのは若女将の天間のぞみ(大島優子)だ。のぞみの妹・かなえ(門脇麦)はイルカのトレーナー。2人の母親にして大女将の恵子(寺島しのぶ)は逃げた父親をいまだに恨んでいる。
ある日、小川たまえ(のん)という少女が謎の女性・イズコ(柴咲コウ)に連れられて天間荘にやってきた。たまえはのぞみとかなえの腹違いの妹で、現世では天涯孤独の身。交通事故に遭い、臨死状態に陥ったのだった。
イズコはたまえに言う。「天間荘で魂の疲れを癒して、肉体に戻るか、そのまま天界へ旅立つのか決めたらいいわ」。しかし、たまえは天間荘に客として泊まるのではなく、働かせてほしいと申し出る。
そもそも三ツ瀬とは何なのか?天間荘の真の役割とは?
【感想】
何の事前情報も入れずに観に行ったんですが、イズコの「おいきなさい」というセリフにピンときまして。「もしや?!」と思って後で調べたら、この作品って『スカイハイ』(2001-)のスピンオフなんですねー!といっても、原作漫画および、かつて釈由美子がやってたドラマは観ておりませんが(笑)どうせなら釈由美子が出てきてもエモさあったんじゃないかなと思いつつ、前髪パッツンの柴咲コウの方が原作のデザインには近い印象も受けました。
<原作の持つイメージとは正反対の感動物語>
先ほど、『スカイハイ』の原作漫画は読んだことがないと書きましたが、それでもなんとなーくのお話は見聞きしたことがあります。ホラーチックなミステリーなのかなと思っていまして(違ったらごめんなさい)、じゃあこの映画もそうなのかと言ったら、これがまた正反対の感動的なヒューマンドラマです。舞台となる天間荘は、この世とあの世の間にある旅館で、臨死状態の魂が現世に戻るか天へと旅立つかを決めるまで居座ることができる場所です。今後の進路を決める上での休憩所みたいな意味合いですかね。そんな摩訶不思議な世界観の中で、人の生と死や家族との絆などを堪能していくのがこの映画の醍醐味ですね。
<生きるか死ぬかの選択>
この映画で面白かったのは、人の死生観について考えさせられるところです。天間荘ってロケーションも最高だし、ごはんもおいしいし、ものすごく快適な旅館なんですよ。そこで、現世での自分の生き様を振り返って、もう一度生きる道を選ぶか、天に召される道を選ぶんですが、あまりの居心地のよさにグダグダ居座る人も(笑)
たまえだって腹違いの姉妹と出会うことで、現世でひとりぼっちだった寂しさを拭うことができました。快適さだけで判断するなら、ここで家族といっしょにのんびり過ごすのも悪くないでしょう。僕だったら、目の前の快適さに心奪われて、向き合うべき現実を先送りにしてしまいそうです(笑)
ただ、結局みんな何かしらのきっかけで、進路を決めるんですよね。臨死状態を見舞ってくれる家族の姿を見て、もう一度会いたいなと思ったり。自分がやりたいことを実現するためにもう一回生きてみようと思ったり。たまえもまた、天間荘でようやく出会えた家族と、いなくなった父親の真相を知って、自分の進む道を選びます。そこがとてもいい流れで、もし大切な人を失くされた方がいたら、より一層その人との思い出を抱きしめたくなるはずです。せっかくなので、もう少し内容に触れた記載をしたいのですが、以降はネタバレになるので、まだ知りたくない方はここでページをそっ閉じしてください。。。
<いなくなった人たちのことを想い続けることの大切さ>
実は、この天間荘のある三ツ瀬という町は、東日本大震災で亡くなった多くの魂の拠り所として作られた場所なんです。臨死状態になってこの街に来た人は、生きるか死ぬかを選ぶことができますが、この街に元からいる人々はすでに亡くなっているため、たまえと違ってもう現世に戻ることができないんですよ。それは、たまえの姉妹も同様です。
だから、たまえにしかできないことをしようと、彼女は再び生きる道を選びました。それは、この天間荘での記憶を持って生き続けること。イズコ曰く、亡くなった人たちの記憶を持って生きることで、彼らの魂が救われるのだそうです。よく「亡くなった人は今もこの胸に生きている」みたいなセリフを聞きますが、それこそが亡くなった人たちにとっても生きた証になるのではないかと僕は思います。確かに亡くなってしまったらその人の人生はそこで終わってしまいますが、その人と関りのある人たちのことを考えれば、亡くなってそこで終わりではなく、その後もずっと続くんですよね。自分も亡くなった祖父母のことを想って、思わず涙がこぼれました。
<そんなわけで>
邦画にしては尺が長いですが、感動のヒューマンドラマとして面白かったです。ちょっと『ファイナルファンタジーⅩ』(2001)っぽい雰囲気もあって僕は好きでした。三ツ瀬という街が、"夢のザナルカンド"のような感じがしましたし、みんなの魂が浄化していくシーンも幻光虫のようでしたから。
「いなくなってしまった人たちのこと、時々でいいから、思い出してください」