頭にチタンを埋め込まれた女性が車とセックスして妊娠しちゃう斜め上すぎる設定に鳥肌が立った『TITANE/チタン』
【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:6/51
ストーリー:★★★★★★★★★★
キャラクター:★★★★★
映像:★★★★☆
音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★★★
【ジャンル】
ホラー
サイコスリラー
スプラッター
【原作・過去作、元になった出来事】
なし
【あらすじ】
幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア(アガトルセル)。彼女はそれ以来<車>に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。
自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴァンサン(ヴァンサン・ランドン)と出会う。10年前に息子が行方不明となり、今は孤独に生きる彼に引き取られ、ふたりは奇妙な共同生活を始める。
だが、彼女は自らの体にある重大な秘密を抱えていた──。
【感想】
カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した作品。もうね、すごいの一言でした。。。
<強すぎる設定>
頭にチタンを埋め込まれた女性が、車に欲情してセックスして妊娠しちゃうって話なんですけど、「どういうこと?」って、頭の中がはてなマークでいっぱいですよ!その上さらに、人を殺しまくるっていう狂気と暴力に富んだ異常性。あまりにもぶっ飛びすぎてて、メチャクチャ面白いじゃんって思いました。
正直、細かいツッコミどころはいろいろあります。「そもそも車とヤるって何?」とか、「どういう理屈で妊娠してるの?」とか。でも、そんなんどーだってよくなるぐらい、世界観が常軌を逸してて、そこに浸れるだけで楽しいんですよね。これ、単なるホラーと言っていいのか、サイコスリラーと言えるのか、それともある意味ヒューマンドラマなんじゃないかとか、従来のジャンルに捉われない新しい世界観を提示してくれて感謝したいぐらいです。
<前後半で大きく異なる構成>
あえて既存のジャンルで括るなら、ホラーやサイコスリラーに分類されると思いますが、ストーリー的には前半と後半で大きく雰囲気が異なります。前半はとにかくスプラッター色が強いです。とはいえ、よくその手の映画であるような、やたらと手が取れたり、内臓が出たりといった、そんなオーバーなものではありません。ああいうのって、現実離れしすぎていて逆に笑っちゃうときもあるんですけど、この映画においては、もっと現実的な範囲内でのグチャミソした表現なので、痛みを想像しやすいんですよね。例えば、耳かきしてたら奥に入りすぎたとか、ピンヒールで踏まれたとか、その延長を考えてもらったらわかるかもしれません(笑)そうやって想像しやすい分、余計に痛ましく、観るに耐えないシーンが多いです。グロが苦手な人は要注意ですね。
後半はおじさんとの奇妙な共同生活になり、前半のド派手な流れから一転、静かで淡々とした進行になります。個人的には、ここがちょっと間延びした印象があったので、前半のような激しさも欲しかったところですが、後半は後半でメンタル面でのダメージが強いんですよ。おじさんの精神がイッちゃってて。結局のところ、この映画を観終わる頃には観も心も満身創痍になっていると思います(笑)
<才能あふれる監督のセンス>
本作で監督を務めたのは、ジュリア・デュクルノー。彼女が2016年に発表した『RAW~少女のめざめ~』もまたすごい映画なんですよ。ベジタリアンの少女がウサギの腎臓を食べさせられたことで、カニバリズムに目覚めるっていうぶっ飛んだ内容で(ちなみに、そこで主人公を演じていた方が本作にも出演されています)。
その映画でも感じたんですが、この監督の映画って、とにかく身体の描き方が美しく、生々しく、痛々しいんですよ。出ている女優さん、上から下まで全部見せちゃってて。巧妙に隠すとか一切しません。ものすんごい体当たり演技です。でも、そこにセクシャルな要素やエロさをまったく感じさせないところがすごいなって。それは、描かれているのが性の対象としての身体じゃないからなのではって僕は思いました。そういうセクシャルな意味合いを排除して、徐々に変貌していく見た目の象徴としての身体を追求しているので、いい意味で気味悪さしかなく、それこそがこの監督のセンスが存分に出ているところなんじゃないかなーと。あと、起用しているのも無名の役者ばかりってのも、変にイメージがつかなくてよかったと思います。無名だからこそ、観ている方も映画の中のキャラクターそのものにより集中できます。
<そんなわけで>
前代未聞の斜め上すぎる設定のぶっ飛びグロ映画ということで、新しい鑑賞体験をもたらしてくれること間違いないので、ぜひオススメしたいです!その独特な世界観にどハマリすることを期待してます(笑)