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死を目前に人生最後のクリスマスを過ごすブラックユーモアを交えた作風にクスッとする『サイレント・ナイト』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:151/174
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★☆☆☆

【作品情報】

   原題:Silent Night
  製作年:2021年
  製作国:イギリス
   配給:イオンエンターテイメント、プレシディオ
 上映時間:90分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

イギリス人夫婦のネル(キーラ・ナイトレイ)とサイモン(マシュー・グード)は、田舎の大きな屋敷でクリスマスのディナー・パーティーを催す。招待客は夫妻の学生時代からの親友たちとその伴侶。ネルとサイモンの子供3人を含めた計12人は、悪態混じりのジョークを交わしながら旧交を温め合う。

それは、クリスマスのありきたりな風景だったが、今年はいつもと違っていた。地球上のあらゆる生き物を死滅させる謎の猛毒ガスが、明日にもイギリスに到達するのだ。もはや、毒ガスから逃れる術はなく、政府は苦痛を無くすEXITピルという自殺用の薬を国民に配布し、それを飲んで“尊厳ある死”を選択するよう推奨している。そんな残酷な聖夜に集まったネル、サイモン夫妻と友人たちは、パーティーの終了後に子供たちにもピルを飲ませ、共に最期の時を迎えるという協定を結んでいた。

果たして、彼らは“最後の聖夜”をどう過ごすのだろうか…。

【感想】

予告を観て気になっていた映画です。が、先の『ザ・メニュー』同様、ひとつひとつの要素はいいのに、全体を通して観ると、個人的にはイマイチな印象の映画でした。。。

<何を楽しむ映画なのかがわかりづらい>

明日にも猛毒ガスがイギリスに到達する!これが最後のクリスマス!気の合う仲間で集まってパーティーしよう!これだけ聞くとすごく楽しそうな設定じゃないですか。僕もてっきりコメディがメインなのかなって思ってたんですよ。でも、実際に蓋を開けてみたら、コメディでもなければ、感動物語でもなく、ディザスター系でもない。一体何を楽しめばいいのか、ちょっとわかりづらい内容でしたね。

一応、ちょいちょい笑えるシーンはあるんですよ。学生時代からの仲間で集まって。「あなた、昔わたしとヤりたくなかった?」みたいな下ネタまで飛び出して。ある程度歳を重ねた人なら、こういう同窓会みたいな中で若気の至りについて話すことに共感はできそうだなーって思うんですけど、そこから特に広がらないんですよ(笑)いやね、人生最後の夜にドタバタ劇を繰り広げたり、秘密を打ち明けたことで新しい人間ドラマが生まれたりって、そういうのだったらもう少しわかりやすくて楽しめそうなんですけど、そういうのはなく。

かといって、例えば、あのとき言えなかった愛の言葉や感謝の念を表したり、家族の絆を強く感じる感動寄りの話かというと、そうでもないんですよ。そりゃ、みんなでピルを飲んで、いざ死のうってときはちょっとしんみりしましたけど。

で、迫りくる毒ガスからどうやって逃げるかを考えたり、死の回避策を模索したりっていう、大災害からのサバイバルでもありません。みんなもう死を受け入れてますからね。ピルを飲んでいっしょに最期のときを迎えようって。

本当に最後の晩餐的な感じで、その日常を切り取っただけなんですよ。まあ
強いて言えば、上記の要素をちょっとずつ持ってはいるんですけど、そのどれもあまり感じられないっていう中途半端さがありましたね。

<設定が説明足らず>

あと、そもそもの設定である猛毒ガスってなんだよって(笑)ここ説明がないんですよ。子供たちは「ロシアの陰謀説」とか「環境が悪化した地球の復讐説」とかいろいろ話しているんですけど、正解はわかりません。とにかくそういう設定だと割り切るしかなかったです。てか、ここでハッキリとロシアって言っちゃってるのが、今となっては笑えないですよね。製作段階では世の中が今のような状況になるとは思ってもみなかったんでしょうけど。

また、学生時代にもみんないろいろあったようですが、そこもセリフから推測するしかなく、ただでさえ登場人物が多いので、ちょっと情報の整理が追いつかない部分はありました。ここもこの映画をわかりづらくしている要因かなと思いますね。

<一番重要だったのが子供>

ひとつ印象的だったのは、家族や友人関係に焦点を当てながらも、子供、特にアート(ローマン・グリフィン・デイヴィス)目線のシーンがちょいちょい挟み込まれているんですよ。彼は大人が当然だと思ってあえて考えもしなかったことに、次々と疑問をぶつけてきます。「全員助けられないの?」、「本当に毒ガスで死ぬの?」などなど。大人はあまり真剣に向き合いませんが、子供の言うことだと侮ってはいけなかったんですよね。彼の発言が、まさかのラストのオチに繋がりますから。もし、誰かひとりでもアートの言うことにしっかり耳を傾けていたら、また違った結末になっただろうなって思いました。

<そんなわけで>

クリスマスを題材にはしていますが、季節がクリスマスっていうだけで、中身はクリスマスとほとんど関係ありません(笑)人生最期のときをどう過ごすかっていうちょっと考えさせられる話ではありましたが、洋画独特のジョークも多いので、日本で生まれ日本で育っている人には反応しづらい笑いも多いかもしれません。

ちなみに、この映画の監督は、ここに出ている3人の子役の母親だったりもするんです。だからこそ、子供ならではの視点というのを大事にしたんだろうなって思いました。

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