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同性愛への激しい抑圧と抵抗をコメディタッチで描いた爽快感ある映画『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:104/171
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆
【作品情報】
原題:La revanche des Crevettes Pailletees
製作年:2022年
製作国:フランス・日本合作
配給:フラッグ
上映時間:113分
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
元ネタなど:実在するゲイの水球チーム
【あらすじ】
歌とダンスが大好きなお騒がせ水球チーム《シャイニー・シュリンプス》は、ゲイゲームズ出場のため開催地【東京】を目指す…はずが、なんと乗り継ぎに失敗し、ゲイ差別が横行する異国の地で一晩を過ごすことに。
危険な街だと知っていながら、それでも楽しい時間を過ごそうと夜の街に繰り出すメンバーたちは、やがて大騒動に巻き込まれてしまうのだった!さらに、メンバーそれぞれが抱える悩みや秘密も明らかになり、仲間の絆が試されることに。
果たしてシャイニー・シュリンプスは、一致団結し、無事に東京にたどり着くことができるのか!?
【感想】
実在するゲイの水球チームを題材にした映画の第2作目です。前作の『シャイニー・シュリンプス 愉快で愛しい仲間たち』は2019年に作られたものの、日本で公開されたのは2021年。なので、つい昨年のことなんですよ!かなり短いスパンで公開したなと思いましたね。下ネタばかりですぐ脱いじゃう陽気なメンバーがおかしかったし、ゲイ嫌いのコーチが彼らと信頼関係を結んでいく過程も面白い作品でした。
<前作とまったく異なる雰囲気>
そんな面白おかしい作品の続編っていうことで期待したものの、、、個人的には「あれれ」という印象でした。メンバーは相変わらず陽気で笑えるんですが、話の内容が同性愛に対する抑圧と抵抗というもので、水球は一切関係ないんですよ。いや、これはこれで面白くはありました。でも、正直、シャイニー・シュリンプスでやる意味があったのかなあとは思っちゃいましたね。あくまでもみんなは水球チームなんですから。
<同性愛に対する強い差別>
舞台は、東京へ向かう途中、乗り継ぎで降り立った異国の地。世界情勢を反映してか、明言はされていませんでしたが、多分ロシアです。「ロシア人は……」みたいなセリフもありましたから(笑)そこでいざこざに巻き込まれて、リハビリ施設に入れられた一部のメンバーの救出劇っていうのが今回の主な流れです。ロシアって同性愛が禁止らしく、道端でキスをしたことが原因で逮捕されてしまったんですよ。
そのリハビリ施設ってのが、これもどこまで本当なのかわかりませんが、すごくアナログなところでして。戦うことで男の本能を呼び覚ますとかで、2人1組で取っ組み合いをさせたり。男女のセックスビデオと男性同士のセックスビデオを交互に見せて、後者のときに電流を流したり。そうやって、同性愛を矯正するプログラムが組まれているんです。つまり、そうまでして同性愛が異常なものとして捉えられているんですよね。薬物依存症やアルコール依存症のリハビリみたいなもんですよ。
LGBTQという言葉が広まり、認知と理解が世の中にも広まりつつあるのかなーなんて思っていましたが、それを認めていないところもまだまだあるんだなと感じましたね。相手を想う愛であることに変わりはないのに、ここまで差別の対象になるとは悲しいことです。
<メンバーのおバカさは健在>
同性愛を病気や汚らわしいものとして扱う人々と、それに抗うシャイニー・シュリンプスのメンバーたちのドタバタ劇を楽しむ内容ですが、陽気なメンバーのおバカなところは今作でも変わっていません。相変わらず下ネタは多いし、性欲は強いし(笑)みんなそれぞれ悩みは抱えているんですけど、それを感じさせない、いや、悩みがあるからこそそれを消し飛ばす勢いで、自分に正直に生きているのにはとても好感が持てました。
また、今回は新メンバーとしてセリーム(ビラル・エル・アトレビー)が加入しています。彼は性自認に悩む真面目で繊細な役どころですが、他のメンバーの個性の強さに押されていたので、もう少し焦点を当ててあげてもよかったのではって思いました。
<そんなわけで>
水球チームなのに水球が一切関係ない映画でしたね。昔、『幕張』(1996-1997)っていう漫画がジャンプでありましたけど、あれも野球部員なのに一切野球しないっていう、それに似た感じでした(笑)同性愛をコメディチックに描いているので気楽に観れる点ではよかったかなと思いますが、個人的には前作の方が好きでした。ゲイ嫌いのコーチがメンバーと信頼関係を結んでいくという変化がある分、前作の方が面白いかなと。