思春期の子供と観たい「すべてひっくるめてあなた」という自己肯定感が上がりそうな感動作『インサイド・ヘッド2』
【個人的な満足度】
2024年日本公開映画で面白かった順位:32/91
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
映像:★★★★★
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:Inside Out 2
製作年:2024年
製作国:アメリカ
配給:ディズニー
上映時間:96分
ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:映画『インサイド・ヘッド』(2015)
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/insidehead2
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
少女ライリーを子どもの頃から見守ってきた頭の中の感情・ヨロコビたち。
ある日、高校入学という人生の転機を控えたライリーの中に、シンパイ率いる<大人の感情>たちが現れる。「ライリーの将来のために、あなたたちはもう必要ない」―シンパイたちの暴走により、追放されるヨロコビたち。
巻き起こる“感情の嵐”の中で自分らしさを失っていくライリーを救うカギは、広大な世界の奥底に眠る“ある記憶”に隠されていた…。
【感想】
「ピクサー長編アニメーション作品」第28作目。『インサイド・ヘッド』シリーズ第2作目。大人へと成長していく上で新たな感情が芽生えたライリーの"思春期の闇堕ち"を描いた秀逸な映画でした。自分自分のことを振り返ると同時に、自分の子供を見守りながら観たい作品でしたね~。
<前作よりもライリーに注目>
感情を擬人化した設定で前作に引き続きとても楽しめました。でも、でも、描き方としては前作とはだいぶ変わりましたね。前作は、正反対だと思われた"喜び"と"悲しみ"が実は表裏一体であるという「感情の存在意義」にフォーカスを当てていたと思うんですけど、今作ではもっとライリー自身に焦点を当てて、彼女の立ち振る舞いをダイレクトに描いた作品になっていました。なので、感情たちの判断によって引き起こされるライリーの行動が、どのようにまわりに影響を与えていくかという点において、実生活に紐づくリアルさを感じられます。
今作でのライリーはティーンエイジャーに成長し、親友2人とアイスホッケーの強豪校の合宿に参加します。「ゆくゆくはみんなで同じチームに」なんて期待していたライリーですが、実はその2人はライリーとは別の高校に進学するというのが行きの車の中で発覚します。ずっといっしょだと思っていたライリーにとってはそれが内心ものすごくショックで。ティーンエイジャーにとっていきなり仲のいい友達と別れるってのはけっこうなストレスですよね。なので、この合宿も3人でアイスホッケーができる最後の機会だったんですが、ライリーとしてはその高校に入りたい気持ちや、憧れの先輩に気に入られたい気持ちもあって、不本意ながらも親友2人をおざなりにしてしまいます。
<大人になるための新しい感情たちの登場>
多感な時期に身のまわりの環境が劇的に変わるとなると、表には出さないまでも感情はしっちゃかめっちゃかになります。これから大人になっていく上での変化として、これまでのヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリに加えて、新たな感情も芽生えてきました。いつも最悪の未来を想像してしまう「シンパイ」。他人を羨んでばかりの「イイナー」。常に無気力な「ダリィ」。恥ずかしがりやで人と話せない「ハズカシ」。その中でもリーダー格のシンパイが、ライリーが成長していく上で大事なのは自分たちだとして、ヨコロビたちを幽閉してしまいます。
で、このシンパイってのがクセモノなんですよ。彼女はムカムカとビビリに近い属性だと感じたんですが、とにかく先のことをあれやこれや心配して(時に心配しすぎて)それを回避する行動をさせます。もちろん、生きていく上で事前のリスクヘッジは大事ではあるんですけど、あまりにもいきすぎると逆にライリーの気持ちが落ち込んだり、誰かを傷つけたりと、これまでの彼女とは思えない行動へと駆り立ててしまいます。シンパイもライリーを守るためによかれと思ってやってはいるんですが、心配しすぎて疲弊しちゃうっていうのは現実世界でもよくあることなので共感できる部分ではありました。
<すべてひっくるめてあなた>
心配性のシンパイがコントロールしていくわけですから、ライリーも新しい環境になじみたい気持ちと古い友人たちを大切にしたい気持ちがせめぎ合う中で、ああしたいこうしたい、ああしなきゃこうしなきゃってのがわーって出てきて、これまでに感じたことのない不安や焦り、寂しさ、苛立ちなど負の感情に苛まれます。そうやってライリーがどんどんネガティブで悪い方向へ進んでいくのを正すために、追い出されたヨロコビたちが奮闘していくわけですが、物語の終盤で大切なことに気づかされます。
実は、物語の冒頭でヨロコビたちは「最高の思い出以外はいらない」と、日々の些末な思い出や黒歴史なんかは司令部から遠く離れたところへ捨てていたんですね。ところが、結局そういう思い出や感情すべてひっくるめてライリーを構成する要素だったんですよ。自分のなりたい姿やあるべき姿に囚われて、感情を押し殺したり、思い出を封じたりすることってあると思うんですけど、「その人らしさ」ってのは別にひとつの決まった形である必要なんてまったくなくて。同じ人間でも、いいときもあれば悪いときもありますし、優しいときもあればずる賢いときもあるんです。ライリーは前半では「私はいい子」と言っていたのに、シンパイが台頭してきてまわりとうまく付き合えなくなってきた後半からは「私はダメ」と自己肯定感が著しく下がっていました。でも、人間なんて波があるもので、「私はいい子」だろうが「私はダメ」だろうが、全部まるっとその人なんですよ。どちらががいいとか悪いとかではなく、そういういろんな感情や思い出があってこそのその人なんです。それがわかったとき、ライリーはやっと素直になれましたし、憑き物が取れてスッキリした表情になって、ひとつ成長したんじゃないかなーと感じました。
<自己肯定感の醸成>
先にも書きましたが、人ってきっといろんな自分を持っていて、自分が好きな自分と自分が嫌いな自分がいると思うんです。でも、嫌な自分が出てきたからといって無理にそれを排除したり、自己嫌悪に陥ることはなくて、そういうのひっくるめて世界に一人しかいない大切なあなたなんですよっていうのがこの映画のメッセージなのかなーって思いました。そういう意味では、何気ない日常こそが素晴らしいということに気づかせてくれる『ソウルフル・ワールド』(2020)に似た印象も受けましたね。
<そんなわけで>
本作のライリーを見ていると、若い頃の自分を思い出すようでもあり、また自分の子供を見ているようでもありました。そういう意味では、親目線でも子供目線でも楽しめる映画なのでオススメです。それにしても、感情を擬人化して頭の中をあそこまでファンタジックに描けるディズニーはさすがですね!
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