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親から愛されず、男たちに性的搾取され、それでもセックスシンボルであり続けたマリリン・モンローの生き様が衝撃的だった『ブロンド』

【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位:33/145
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:-(配信のみ)

【作品情報】

   原題:Blonde
  製作年:2022年
  製作国:アメリカ
   配信:Netflix
 上映時間:167分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説"Blonde"(2000)

【あらすじ】

1950年代から1960年代初頭にかけて、最も人気のあるセックスシンボルの1人だったマリリン・モンロー(アナ・デ・アルマス)。本名はノーマ・ジーン。物心ついたときにはすでに父親はおらず、母親は精神を病み、ノーマは児童養護施設に預けられる。

やがて、ショービズの世界へと入ったノーマは、次々と映画に出演。マリリン・モンローという芸名も手に入れ、その名はどんどん世間に広まっていった。

しかし、華やかな表舞台とは裏腹に、プライベートでは常に問題を抱えていた。中絶や離婚など、愛する人との安定した関係を築けずにいたのだ。

かつて一世を風靡した"大衆文化のアイコン"の知られざる人生が今明かされる―。

【感想】

あのマリリン・モンローを題材にした作品なんですけど、いわゆる伝記映画ではないみたいなんですよね。この映画の元ネタは小説の"Blonde"であって、それは実際にあった出来事をモチーフにはしているものの、あくまでもマリリン・モンローという人物だけを抜き出したフィクションらしいんです。僕は読んでいないので自分の言葉で語れずに申し訳ないんですが。なので、この映画だけでマリリン・モンローの人生を鵜呑みにするのは要注意かなと。

<恵まれなさすぎな人生>

一言で言うなら、「なんかもうすごい人生だったな」と。それに尽きます。「そりゃ女優だし、いろいろあるでしょう」って思う方もいると思います。僕もそうでした。とはいえ、あの下から風が吹いてきてスカートがめくれるポーズしか知らないんですけど。

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(引用:ウィキペディアより)

上記の写真は、現代でも有名ですよね。セックスシンボルとしてスターダムを登っていく姿は、もちろんマリリン・モンロー本人の努力の賜物ですよ。でも、その裏側がかなりショッキングというか、同じ女性が観たら引くんじゃないかなっていうエピソードの連続でした。

まず、親に恵まれませんでした。気づいたときには父親はおらず、母親が女手一つで育てていて。その母親もかなり父親に依存していたんですよ。そんな父親は子供ができたと知るや否や家を出て行ってしまったそうで。なので、母親は「彼が出て行ったのはあんたが生まれたせいよ!」と子供に当たります。で、結局母親は精神病んじゃったんで、他に行くところがなかったマリリンは児童養護施設に預けられることになります。なお、実際はそこに行きつつも知り合いの家を転々としていたそうなので、映画ではかなり省かれていた形ですね。

次に、男に恵まれませんでした。もちろん全員が全員悪い人ではなかったんですが、、、マリリンを性欲の対象として見ている人が目立ちましたね。映画に出るためにプロデューサーに強姦されたり、某K大統領からは性欲のはけ口として扱われたり(それらの映像もけっこうストレートでエグいんですが)。今同じことをしたら、この男たちは大炎上どころか、捕まって社会的に殺されると思いますよ。。。でも、マリリン・モンローが生きていた時代は、今よりも男尊女卑や女性差別が色濃いとき。疑問に思っても誰も声を上げませんし、処世術として泣き寝入りするしかなかったのかもしれません。特にこういう業界では。そのおかげかはわかりませんが、彼女は多忙を極め、女優としての地位も確立していきました。ちなみに、こういったセクハラの事実はきっとあったんでしょうが、記録に残されていないものも多いので、もはや証明するのが難しいですよね。

あと、子供に恵まれませんでした。劇中におけるマリリン・モンローの男性遍歴はかなり奔放というか、お騒がせな感じに描かれていましたね。あのチャップリンの息子キャス(ゼイヴィア・サミュエル)とエドワード・G・ロビンソンの息子エディ(エヴァン・ウァリアムズ)と3P生活を楽しんだり、野球選手と劇作家、2回の結婚があったり。ここらへんは完全にプライベートなので、もちろんハラスメントとは違います。ただ、3P生活はフィクションっぽいです。2回の結婚は事実ではあるんですけど、実際はマリリン・モンローはもっと若いときに、もうひとり別の男性と結婚していたそうなので、そこのエピソードはこの映画ではなかったことになっています。

話が逸れましたが、劇中ではマリリンは2回の妊娠を経験します。ところが、うち1回は訳あって中絶し、もう1回は不慮の事故で流産してしまいます。彼女は赤ちゃんが好きだというセリフがあったので、子供をなくすたびに精神的にかなり傷ついていました。特に中絶のシーンは、そこまで描く必要ある?っていうぐらい観るに堪えないショッキングな映像なので、これから観る人は注意が必要です。

<ただ愛を求めていた>

このように、フィクションとはいえ、ここでのマリリン・モンローの描かれ方は相当に酷だと感じました。確かに女優としての知名度は上がったし、現代においてもアイコンとしての影響力もあります。でも、ひとりの人間として見たときに、あまりにも愛が行き届いていない存在にされすぎじゃないかと。実際にあったことをモチーフにしているとはいえ、事実は異なる部分も多いそう。なので、最初にも書きましたが、この映画を観て「マリリン・モンローはこういう人だったんだ」ってなると、それはそれで問題な気もします。

だから、あくまでもこの映画の中でのマリリン・モンローについてしか言及できませんけど、彼女は単純に愛に飢えていただけなんじゃないかと思います。両親からの愛を充分に受けられなかったことに起因し、愛を強く求めるんだけど、全部うまくいかないんです。それを教えてくれる人もいません。いるのは、彼女を金か性の対象として見る男ばかりで、彼女の置かれた環境もよくなかったんじゃないかって気さえします。

思えば、ジュディ・ガーランドもオードリー・ヘプバーンも、マリリン・モンローと同じ1920年代に生まれだけど、似たような境遇だと感じます。親の愛が受けられず、自分もまた愛とうまく付き合えない。その中では、オードリー・ヘプバーンは自分が享受できなかった愛を、他の人に与えるという方向にうまく昇華できましたけど。

<そんなわけで>

マリリン・モンローの知られざる人生に興味があるなら観てもいいと思います。アナ・デ・アルマスの演技はすごくよかったですし、見た目の寄せ具合も完成度高いですから。ただ、尺が長い上に、児童虐待やセクハラ、DV、中絶など、かなり重いエピソードが連続するので、それなりに覚悟をした方がいいかもしれません。


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