【ネタバレあり】本編よりも劇中劇の方が怖かった『NOPE/ノープ』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:36/124
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★★★
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★★
【作品情報】
原題:Nope
製作年:2022年
製作国:アメリカ
配給:東宝東和
上映時間:131分
ジャンル:ホラー、スリラー
元ネタなど:なし
【あらすじ】
舞台は南カリフォルニア、ロサンゼルス近郊にある牧場。亡き父から、この牧場を受け継いだOJ(ダニエル・カルーヤ)は、半年前の父の事故死をいまだに信じられずにいた。形式上は、飛行機の部品落下による衝突死とされている。
しかし、そんな"最悪の奇跡"が起こり得るのだろうか?何より、OJは事故の際に一瞬目にした飛行物体を忘れられずにいた。
牧場の共同経営者である妹エメラルド(キキ・パーマー)は、この飛行物体を撮影して、"バズり動画"を世に放つことを思いつく。
やがて起こる怪奇現象の連続。それらは真の"最悪の奇跡"の到来の序章に過ぎなかった……。
【感想】
さて、この映画、どう観ましょうか(笑)こんな出だしになるのには訳があります。ジョーダン・ピール監督にしては、随分意外な世界観だったからです。
<過去作と大きく違う方向性>
ジョーダン・ピール監督の作品と言えば、多くの人が、『ゲット・アウト』(2017)と『アス』(2019)を挙げるんじゃないでしょうか。前者は、白人のガールフレンドの家を訪れた黒人青年が体験する、まさかすぎる恐怖を描いた映画。後者は、突如現れたドッペルゲンガーによって恐怖のどん底に陥る一家の悲劇を描いた映画。どちらも共通しているのは、現実世界にありそうでなさそうな、世にも奇妙な設定というところですよね。もちろん、現実にそんなことはないんですけど、ちょっとした怪談話になりうるリアルさがあるかなって、個人的には思います。
<壮大な世界観>
で、本作。ネタバレしないと書けないので、映画をまだ観てない人はここでページをそっ閉じしてください(笑)
予告からもわかると思いますが、UFOですよ。でも、ただのUFOじゃなかったんです。UFOの形をした巨大エイリアンだったんですよね。つまり生物ってことです。もうSFとか怪獣映画の方向性ですよね。先の2作品と比べたら大きく違いますよね。この時点でコレジャナイ感を感じてしまう人はいるかもしれませんね。正直、僕も「え、ジョーダン・ピールが作る怪獣映画?」って思っちゃいましたもん。
<実は本編から逸れたところに怖さがある>
ただ、この監督が得意とする"妙な怖さ"っていうのは、なくもないんですよ。それが表れているのが、かつて放送されていたというチンパンジーのゴーディーを起用したコメディドラマのくだりです。つまり劇中劇ですね。本編からちょっと逸れたところにあるのでわかりづらいんですけど。。。
その撮影中に、自由を奪われてストレスが限界を迎えたのか、ゴーディーが突如興奮して共演者を襲うという悲劇が起こりました。今はOJと親交のあるリッキー(スティーヴン・ユァン)は、当時子役としてそこにいたんです。幸い彼は難を逃れるんですが、いっしょに共演していた女の子は顔面をグッチャグチャにされてしまいます。ちなみに、同じ事故が実際にもあったそうですよ。チンパンジーって力強いんですよね。不用意に近づいては絶対ダメです。
動物を人間社会で利用する恐怖はそこで味わったはずなんですけどね。リッキーは大人になって遊園地を経営し、そこでまた見世物をして生活してるんですよ。それがその巨大エイリアンなんですけど。「いや、どうやって意思疎通してるんだ?」ってツッコミどころはあるんですけど、そこは特に触れられず(笑)しかも、観客席にはかつてゴーディーに襲われた女の子もいてですね。。。顔は再建手術をしたのか、人の顔の形はしていますが、、、あまり直視できない雰囲気はありました。。。過去にそんなことがあったのにトラウマとかないんでしょうか。本編よりもそっちの方が精神的に怖かったです。人は過ちを繰り返す、、、的なメッセージですかね。
<本編はもはやアクション映画>
で、本編に話を戻しますが、こっちはもうもう巨大エイリアンとの戦いみたいなものです。その巨大エイリアンを記録に収めるべく奮闘するOJたちっていう構図ですから。もはや世にも奇妙な世界観からは大きく逸脱して、普通のアクション映画みたいになっていました。そこまでして記録に残したいのかって思いますけど、、、バズりを狙って危険を顧みない行動をする現代人への揶揄なのではって感想書いてる人もいましたが、どうなんですかね。人智を超えた存在に命賭けすぎなのはちょっと不自然な気もしますが。。。何にせよ、本編はそこまで怖くありません。
<日本人ならピンと来るシーン>
日本人にはなじみのあるポイントがあるところにも注目したいです。例えば、巨大エイリアンが最後に変形した姿は、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995-1996)に出てくる使徒のような形だったり。エメラルドがバイクに乗ったとき、『AKIRA』(1988)の金田を彷彿とさせるシーンがあったり。
<そんなわけで>
過去のジョーダン・ピール監督作品と比べると、随分と大掛かりな世界観になっているので、期待してたものと違うってのは確かにあります。まあいろいろ考察もあるとは思いますが、少なくとも巨大エイリアンを目の当たりにしたときの無理ゲー感は映画館で観てこそだと思うので、観るなら映画館、それもIMAXで鑑賞することをオススメしたいですね。IMAX用のカメラで撮影されてる最適化されてるので。ちなみに、池袋のグランドシネマサンシャインでのIMAXのオープニング、ちょっと変わりましたよ。