抑圧されすぎた環境にいたダイアナ元妃が離婚を決意するまでの過程を描いた『スペンサー ダイアナの決意』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:108/155
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆
【作品情報】
原題:Spencer
製作年:2021年
製作国:ドイツ・イギリス合作
配給:STAR CHANNEL MOVIES
上映時間:117分
ジャンル:伝記映画、ヒューマンドラマ
元ネタなど:プリンス・オブ・ウェールズ「ダイアナ・フランセス・スペンサー」(1961-1997)
【あらすじ】
1991年、クリスマス。英国ロイヤルファミリーの人々は、いつものようにエリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウスに集まったが、例年とは全く違う空気が流れていた。ダイアナ妃(クリスティン・スチュワート)とチャールズ皇太子(ジャック・ファーシング)の仲が冷え切り、不倫や離婚の噂が飛び交う中、世界中がプリンセスの動向に注目していたのだ。
ダイアナにとって、2人の息子たちと過ごすひと時だけが、本来の自分らしくいられる時間だった。息がつまるような王室のしきたりと、スキャンダルを避けるための厳しい監視体制の中、身も心も追い詰められてゆくダイアナは、幸せな子供時代を過ごした故郷でもあるこの地で、人生を劇的に変える一大決心をする。
【感想】
今年2本目ですね。ダイアナ元妃を扱った映画は。9月30日に公開された『プリンセス・ダイアナ』がドキュメンタリーだったのに対し、こちらは伝記映画(といっても実話を元にした寓話)です。現時点で配信で観られるダイアナ元妃に関する映画は全部観たのですが、大体が離婚してから死ぬまでを扱うものが多かったです。その一方、本作はその離婚に至る経緯を描いた新しい視点だなと感じました。
<クリスティン・スチュワート演じるダイアナ元妃>
今回、ダイアナ元妃を演じたのはクリスティン・スチュワート。『トワイライト』シリーズや『チャーリーズ・エンジェル』(2019)で有名な女優さんですね。2013年の『ダイアナ』ではナオミ・ワッツが演じていたけど、見た目的には今回のクリスティン・スチュワートの方が本人に近かったなと感じました。演技もよかったですね。ストレスが溜まり、今にも爆発してしまいそうな心境をうまく表現していたと思います。
<ダイアナ元妃に関する知識があった方が楽しめる>
ストーリー的には事実ベースになるので、淡々とした展開ではあります。ただ、ダイアナ元妃の人生をある程度知っているのであれば、それなりに楽しめるんじゃないかと思いました。幸い、僕はダイアナ元妃に関する映像作品を観ていたので、あまり細かく語られていなかった離婚の決意に至るところが知れてよかったですが、もしダイアナ元妃についての知識がほぼなく、この映画から入るとちょっとよくわからないかもしれません。
離婚の理由のひとつにチャールズ皇太子(現イギリス国王)のカミラ夫人との不倫が挙げられます。その情報を持っていると、今作でもチラッとカミラ夫人が映っていることや、ダイアナがチャールズから贈られた真珠のネックレスは、カミラ夫人と同じものだということに対する彼女のストレスなどにも共感することができるでしょう。
<今作のメインは不倫よりも王室での窮屈な生活>
ダイアナ元妃と言えば、色恋沙汰を思い浮かべる人も多いですが、この映画ではそこらへんの事情はほぼ語られていません。今までの映像作品でも散々扱われていたので、差別化の意味も込めてあえて別の視点を持ってきたのかもしれません。
今回は、閉じられた王室での生活に対する窮屈さがダイアナ元妃の心を蝕んでいったことに焦点を当てていましたね。もちろん、それも彼女が離婚に踏み切った理由のひとつではあるようです。伝統を重んじ、すべてにルールがあり、細かく決められ、自由が一切ない。王室に入るということはそれも覚悟はしていたのだろうけど、想像以上だったんでしょう。常に監視され、パパラッチにも追われ、尋常じゃない精神的ストレスに見舞われます。その結果、過食症にまでなっちゃいますからね。ダイアナ元妃自身も由緒正しい家系ではあるものの、「普通の生活」を求めていた彼女にとっては、カゴの中の鳥状態だったのかもしれません。
そんな自分を、アン・ブーリン(1501-1536)と重ねるのも印象的でした。アン・ブーリンとは、イングランド王ヘンリー8世の2番目の王妃で、エリザベス1世の生みの親です。自分の不倫を棚に上げた夫に処刑された悲劇の人としても知られています。
<そんなわけで>
ダイアナ元妃についてある程度知っていたり、クリスティン・スチュワートの演技に興味があれば観てもいいと思います。これまでのダイアナ元妃の映像作品を踏まえて、またひとつ歴史の勉強にはなると思いますので。