故チャドウィック・ボーズマンに心から捧げたい、未来を紡ぐ丁寧な物語だった『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』
【個人的な満足度】
2022年日本公開映画で面白かった順位:9/165
ストーリー:★★★★★★★★★★
キャラクター:★★★★★★★★★★
映像:★★★★★★★★★★
音楽:★★★★★
映画館で観たい:★★★★★★★★★★
【作品情報】
原題:Black Panther: Wakanda Forever
製作年:2022年
製作国:アメリカ
配給:ディズニー
上映時間:161分
ジャンル:アクション、スーパーヒーロー
元ネタなど:マーベル・シネマティック・ユニバース
【あらすじ】
国王ティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)を失い、悲しみに包まれるワカンダ。先代の王ティ・チャカ(ジョン・カニ)の妻であり、ティ・チャラの母でもあるラモンダ(アンジェラ・バセット)が玉座に座り、悲しみを乗り越えて新たな一歩を踏み出そうとしていた。
そんな大きな岐路に立たされたワカンダに、新たな脅威が迫る。ネイモア(テノッチ・ウエルタ)率いる海の王国タロカンが侵略してきたのだ。
果たして、ワカンダの運命は……。
【感想】
マーベル・シネマティック・ユニバース第30作目。『ブラックパンサー』シリーズ第2作目。そして、フェーズ4の最終作でもありました。
<とにかく作りが丁寧だった>
よかった。よかったです。。。。・゜・(ノД`)・゜・。もうね、オープニングから泣きそうになりましたよ。チャドウィック・ボーズマンへの愛と敬意にあふれていて。その姿勢はラストまで貫かれていて、すごく丁寧に作られているなっていうのが伝わってくるほどです。映画を観ていると、たまにあるじゃないですか。「あれ、これなんでだっけ?」っていうの。そういうのがまったくなかったんですよ。すべてのシーンや設定が腹落ちするというか、何も疑問を持たずに帰れるのがスッキリしてよかったです。
<主役不在の物語>
今回の映画って、ある意味主役が不在だと思うんですよ。もちろん、物語上の主役はシュリなんですけど。本来ブラックパンサーといえば、やっぱりチャドウィック・ボーズマンじゃないですか。彼あってこそのキャラクターだと思っていたんですよ。でも、彼は大腸がんで2020年8月28日に43歳の若さでこの世を去っています。アイアンマンみたいにストーリー上死んでしまうとか、キャプテン・アメリカのように自ら引退するなどして姿を消すのとは訳が違います。メインを張れるスーパーヒーローの役者本人が亡くなってしまったという悲しい現実。それでも続きをこうして作り上げたんですよ。それも、CGを使ったり代役を立てたりせず、です。物語上でもティ・チャラが亡くなった設定にして、現実世界での出来事を映画にも反映させた形で。ただ、「チャドウィック・ボーズマンなくして、ブラックパンサーが成立するのか?」って思いますよね。これが見事すぎるぐらいに成立しているのが、この映画のよかったところです。
<戦う運命にあるワカンダ>
そもそもワカンダって不運続きなんですよね。ティ・チャラを亡くす前に、その父親のティ・チャカも亡くなっています。国王を立て続けに失ってるわけですよ。そんな状態の中、ワカンダが保有するヴィヴラニウムを狙って、各国からはちょっかいを出される日々。そのヴィヴラニウムに関連して今回初めて出てきたのが、海の王国タロカンとその指導者ネイモアです。
ワカンダとタロカンって実はちょっと似てるんですよ。お互い人知れず存在し、高度な知識や技術を持った国同士ってところが。手を取り合える可能性もあった両国なんですけど、方向性の違いから戦うハメに。前作ではワカンダ国内の内紛がメインでしたが、今作ではタロカンという他国との争いがメインとなっています。自ら戦いを仕掛けるわけではないのに、結局大規模な戦闘に発展してしまうのがワカンダの悲運ですよね。そして、その両国が戦わざるを得ない状況というのが腹落ちしやすいのも、丁寧に作られている証拠じゃないかなって思います。
<シュリの成長譚>
で、今回一番推したいのはやっぱりシュリです。演じたレティーシャ・ライトは現実世界でも辛かったと思います。頼れる存在だったチャドウィック・ボーズマンがもういないわけですから。そういう状況にある中で、シュリがどう変化・成長していくのかっていうのも今作の見どころのひとつですね。ネタバレをしたくないので詳しく書きませんが、ブラックパンサーがいない中での彼女の葛藤と決断は、「そう来たか」と思わせる内容で、彼女の内面をよく描いていたと思います。最終的には、自分は何をしたいのか、自分は何者なのか、ということをきちんと示すことで、後味スッキリできたのもよかったです。話はちょっと飛びますが、ラストも驚きの内容で、マーベル・シネマティック・ユニバースの未来へうまく橋渡しできたんじゃないでしょうか。「死は終わりではなく始まり」というワカンダのその言葉が身に染みます。
<今後の活躍が楽しみな新キャラクター>
今作のヴィランとして出てきたネイモアは、マーベル・シネマティック・ユニバースでは初登場でしたが、もうひとり忘れてはならないのが、そのネイモアが姿を現すきっかけを作ったリリ(ドミニク・ソーン)ですね。彼女は天才的なエンジニアという設定で、アイアンマンを彷彿とさせるスーツも自作してしまうほどです。リリに関してはまだ全然深掘りされていませんでしたが、そこは今後のドラマを楽しみにしていましょう。
<そんなわけで>
フェーズ4ラストの作品として有終の美を飾るにふさわしい映画でした。チャドウィック・ボーズマンの意志を継ぐだけでなく、新しい未来と可能性を示してくれたのがうれしかったです。マーベルも世代交代が始まっていますね~。なお、可能であれば、本作を観る前に前作は観ておくとより楽しめると思います。じゃないとわからないキャラクターもいたりするので。