妻の介護と子育てに追われるひとつの家族と、彼らを支えるひとりの親友の絆が感動的な『Our Friend/アワー・フレンド』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:84/225
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆
【要素】
ヒューマンドラマ
ラブストーリー
がん
闘病
【元になった出来事や原作・過去作など】
・エッセー(実話)
マシュー・ティーグ"The Friend: Love Is Not a Big Enough Word"(2015)
【あらすじ】
仕事に打ち込むジャーナリストのマット(ケイシー・アフレック)と妻で舞台女優のニコル(ダコタ・ジョンソン)は、2人の幼い娘を育てながら毎日を懸命に生きていた。だが、ニコルが末期がんの宣告を受けた日から、一家の生活は一変してしまう。
妻の介護と子育てによる負担にマットが押しつぶされそうになる中、かつて人生に絶望したときに2人から心を救われた親友デインがやって来る。
2年にも及ぶ闘病生活。3人の想いと苦悩が交錯していく中、彼らが見つけた希望とは──。
【感想】
泣きました。いや、もうタイトルと予告で感動系だとわかってはいたんですが、、、やっぱりこういうのは泣いちゃいますね(笑)
<実話ベースの感動ストーリー>
この映画は、雑誌「Esquire」に掲載され、全米雑誌賞を受賞したエッセーを映画化したものです。幸せだった家族生活が、妻のがん宣告から一変する様子を描いた実話ベースの話です。映画では、現在と過去が行ったり来たりして、時系列が入り混じりながら進みます。現在の辛い状況を映したかと思えば、まだ元気だった過去のエピソードに戻るので、そう聞くとわかりづらい印象を持たれるかもしれませんが、まったくそんなことはありません。いつの出来事なのか、丁寧にテロップで表示してくれるので、スッと頭の中に入ってきます。
<親友デインの絶妙なポジション>
妻や恋人が病気になってしまう話は映画ではよくある、、、実によくありすぎる話ですよね。なので、そこだけ切り取れば、単なる感動映画で終わり。
しかしながら、この映画が他と違うのは、マットとニコル共通の親友であるデインの存在なんですよ。彼、もともとはニコルの舞台仲間で。そこからマットとも知り合って、夫婦共通の親友となりました。もちろん、ニコルの娘たちとも気心の知れた仲。
このデインをどう見るかっていうのが、この映画の面白いところだと思うんですよね。ニコルががんを宣告された後、大変だったのはマットです。ジャーナリストの仕事をしながら、妻の介護と子育てを担うことになったからもういっぱいいっぱいです。
そこで、デインが一家のサポートに入ります。ニコルたちの家に居候しながらね。ニコルの介護もしながら、子供たちの面倒も見ると。彼が住んでるのニューオリンズなのに、わざわざフェアホープまで来るんですよ。700kmは離れてるんじゃないでしょうか。東京から広島に行くようなもんかと(もっとかも?)。
それも、2~3週間のつもりだったのが、最終的には2年ぐらいいたのかな。デインにも恋人はいたけれど、彼のしていることに理解ができずに別れてしまいました。そりゃそうですよね。家族でも親族でもないのに。もちろん、親友であればできる限りのことはしてあげたいというのはあるでしょう。ただ、2年も相手の家に居候してでもすることなのでしょうか。お互いの両親にも頼ることはできるんじゃないかと思いますけどね。傍から見れば、ひとつの家族に、赤の他人であるひとりのおじさんが入り込んでいる、ちょっと不思議な関係ですよね。
<デインの本心とは>
でも、デインはマットとニコルに恩があったんですよ。彼はかつて舞台の仕事をしながらも、スタンダップコメディをやりたいという夢がありました。しばらくは具体的な行動に移さなかったものの、ようやく足を踏み入れたところで壁にぶつかります。なかなか活躍の場も得られず、居場所もない。ついには死に場所を探すほどです。そんなとき、「なんかあったら連絡しろよ」と言ってくれたのがマットたちだったんですよ。孤独から救ってくれた親友の言葉。その恩が、デインの中にはいつまでも残っていたんだろうなって思います。だから、例えまわりから白い目で見られようとも、彼らの力になりたかった。
ただ、僕はそれに加えて、ニコルとワンチャン期待していたんじゃないかって思うんですよね。昔、ニコルが既婚者だと知らずにデートに誘ったっていう経緯もありますし。まあ、実際にワンチャンなくとも、好意があった人の側にはいたかったんだと思いますよ。そういう意味では、デインはマットよりもニコルの方に深く情を入れていたかもしれませんね。なので、ちょっとした三角関係なんじゃないのかなっていう目でずっと追っていましたけど(笑)
<その他>
この映画は、夫婦の絆はもちろんのこと、それ以上にデインの立ち位置がとても興味深いんですよ。人によっていろいろ感じ方がありそうだなあ。ぜひ友情と愛情の狭間をその目で観て欲しいです(笑)