【ネタバレあり】元祖パンデミック映画だけど、誰も幸せにならない終わり方に呆然と立ち尽くすしかなかった『カサンドラ・クロス』
【個人的な満足度】
「午前十時の映画祭13」で面白かった順位:13/21
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆
【作品情報】
原題:The Cassandra Crossing
製作年:1976年
製作国:イタリア・イギリス合作
配給:日本ヘラルド映画
上映時間:129分
ジャンル:サスペンス、パニック、アクション
元ネタなど:なし
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
スイス・ジュネーブの国際保健機構に侵入したテロリストが、そこで米軍が極秘裏に開発していた病原菌に感染、そのまま大陸縦断特急に乗り込んだ。
米軍のマッケンジー大佐(バート・ランカスター)は、事件を闇に葬るため、列車を崩落寸前のカサンドラ大鉄橋に追い込み、乗客全員を抹殺しようと企む。
医師のチェンバレン博士(リチャード・ハリス)と元妻のジェニファー(ソフィア・ローレン)は、乗客たちを率いてその陰謀に立ち向かうが――。
【感想】
2023年最後の「午前十時の映画祭13」にて。1976年のイタリア・イギリス合作映画です。列車内という限られた空間の中でウイルスが蔓延していく元祖パンデミック映画でしたが、個人的にはウイルスの怖さよりも、米軍の怖さの方がよっぽど胸糞悪い内容でした。
<コロナ禍を経てわかるウイルス蔓延の怖さ>
この映画、前半と後半でガラッとジャンルが変わるんですが、前半はウイルスに感染したテロリストが列車に乗り込んだせいで、次々とそれが蔓延していく恐怖を描いています。次第に体調が悪化していくテロリストが、他の乗客に触れたり、キッチン内で料理に触れたりして、観ているこっちが「あー、やっちまった」と絶望に打ちひしがれる気持ちに。コロナ禍を経て余計にウイルスがどんどん広がっていく恐怖が伝わってきます。まあ、テロリスト本人も自分が感染力の強いウイルスに侵されているなんて知りませんから、自ら予防対策をしようなんて概念もないでしょうけど。
<本当に怖いのはウイルスではなく米軍>
でも、この映画で一番怖いのはウイルスではなく、その対処に当たった米軍なんですよ。彼らは自分たちがウイルスを開発していたという事実を闇に葬り去りたいんですよね。だから、感染した人たちを列車ごと抹殺しようと企みます。乗客には「テロリストが沿線に爆弾を仕掛けたため、安全を優先して行き先を変更します」と告げ、目的地をヤノフ収容所へと変えます。しかし、そこへ向かう途中で「カサンドラ・クロス」と呼ばれる鉄橋を通過しなければなりません。これ、映画のタイトルにもなっていますよね。なぜ、鉄橋の名前がタイトルになっているのかというと、実はこの鉄橋、1948年に廃線となっていて崩落の危険性が指摘されていたからなんです。そこに列車を侵入させ、事故に見せかけてすべてをなかったことにしようとするのが米軍の狙いです。まあ、そもそも崩落する確証はないですし、仮に崩落したとしても乗客が全員死亡する保証もないですから、ツメが甘い計画だなとは思うんですけど(笑)
ところが、そのタイミングでウイルスに感染した人々の症状がよくなってきていることが判明します。どうやら列車内に取り付けた液体酸素によって、室内の酸素濃度が上がったことが要因だそうです。これなら乗客を死なせなくて済むと誰もが思ったんですが、米軍が葬り去りたいのはあくまでも「ウイルスを作っていた」という事実です。なので、人々が回復しようがしまいが生きているだけで邪魔な存在なんですよ。なので、列車は止まることなく、カサンドラ・クロスに向けて走り続けます。
<後半の怒涛の展開がスリリング!>
そこで乗客たちは力を合わせて、列車の主導権を握り、列車を止めようと奮闘します。幸い、ウイルスが蔓延しているのは1等車両のみだったので、1等車両(こちらにエンジンのついた先頭車両も付属)と2等車両を切り離そうとしたわけです。その過程で乗客を管理しようと途中から乗り込んできた兵士たちと銃撃戦を繰り広げ、床下の制御装置を操作するためにキッチン車両を爆破。もうどっちがテロリストかわからないぐらいのアクションシーンの連続でスリリングでした。ここはもうパニック映画というよりもクライムアクションのノリでしたね(笑)
<後味の悪すぎるラスト>
その奮闘の末、どうなったかというと、、、ここからはネタバレになるので、まだ知りたくない方はここでページをそっ閉じしてください。。。
カサンドラ・クロスを通過する直前で車両の切り離しは成功したんですが、先頭車両を含む1等車両はエンジンがまわっているのでそのままカサンドラ・クロスへ突入し、結果的に鉄橋は崩落してしまいます。。。落下の過程で乗客は宙に浮かび、着地の衝撃で車体といっしょに潰れたり、鉄橋がぶっ刺さったり。外に放り出された人もいたし、車体の爆発・炎上に巻き込まれた人も。まさに地獄絵図ですよ。2等車両にいた人たちは兵士を含め、なんとか命は助かったものの、、、実に後味の悪い終わり方でした。それもこれも、保身を考えた米軍および指示を出したマッケンジー大佐のせいです。彼は自らの職務を全うしたわけではありますが、罪もない人々を見殺しにしてしまった罪は重いですよね。。。
<そんなわけで>
パンデミック映画とは言いつつも、パニックメインというより、身勝手な米軍の愚かさに怒りを覚える内容でした。いつだってしわ寄せが来るのは国民という何とも物悲しい終わり方で、とても読後感が悪いです(笑)